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共働きは虐待?埼玉県条例取り下げに一安心
2023年10月、埼玉県議会で、自民党県議団が提出した「埼玉県虐待禁止条例」の改正案が波紋を呼びました。一時、本会議で採決が予定されたものの、相次ぐ批判の声により改正案は取り下げになりました。県議会の思惑はなんだったのか。働く親がいる家庭との、これほどまでの認識の乖離はなぜおこったのでしょうか。
【目次】
1.非難轟々、埼玉県議会条例案の中身
2.企業の人材確保に支障も
3.今回のまとめ
非難轟々 埼玉県議会条例案の中身
埼玉県議会自民党県議団が提出した「埼玉県虐待禁止条例の一部を改正する条例」では、「小学3年生までの児童を養護する者は当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない」として家などに残したまま保護者などが外出することを禁止する案を提出しました。また、「県民は、虐待を受けた児童等を発見した場合は、速やかに通告または通報しなければならない」としています。
【住民からの反対や批判の意見】
「放課後児童クラブに入れない待機児童も多数いる中で、預け先がない親をさらに追い詰めることになるのではないか」
「出勤が朝早くて見守りたくても留守番させて出勤せざるをえないケースなど日常でよくあるケースが条例違反となるのでは」
「ワンオペでやむをえず留守番させなくてはいけない親の負担が増す」
「誰もが住みやすい、子育てしやすい埼玉県のバランスを崩してしまうもので、ニュースで知った県民からは、さっそく不満や批判が出ている。結論を出すことは時期尚早」
【県議会側の意見】
「すぐに駆けつけられる状態が確保されないかぎり県としては放置と考える」
「待機児童が解消されるように、県が市町村と連携して努力するべき。置き去りや放置から悲惨な事故が起きている事実があり、見逃せない」
「細かい距離や時間の問題ではなく、子どもの視点にたって、子どもを危険な状態に置かない、放置しないという社会的機運を高めていくべき」
ちなみに「放置」の例としては次の通りです。
▼子どもを車の中に置き去りにすること
▼子どもたちだけの自宅での留守番
▼未成年の高校生、中学生に小学生などのきょうだいを預けて買い物に出かける行為
▼子どもだけ家に残してゴミ捨て等に行く行為
▼子どもたちだけで公園などで遊ぶこと
▼子どもたちだけで登下校させる
▼子どもにおつかいさせる行為
車への置き去りなど問題となる放置もありますが、小学生ともなれば、子ども同士公園で遊んだりすることなどは当たり前のように行われていますし、ゴミ捨てで家をあけること、買い物などで短時間留守番させることも充分に考えられます。住民からは、子どもの自由を奪ったうえで、子育てに関する責任を親だけに押し付けるような条例であり女性活躍推進、年収の壁・支援化パッケージなど国の施策と逆行するような条例だとし、国と地域の連携や足並みのそろわなさを批判する声も多くありました。
企業の人材確保に支障も
このような条例は家庭の働き方だけでなく、企業の人材確保にも大きな影響をもたらすことが予想できます。女性の年齢階級別の労働力率をグラフで示したM字カーブは近年解消に向かってきていました。しかし男性との労働力率との間にはまだまだ差があります。労働力調査によると、潜在労働力人口は40万人で、そのうち24万人を女性が占めるといわれています。働き方改革によって就労しやすい環境が整備されれば、この数字はさらに伸びるだろうと思われます。埼玉県議会条例案は、こういった流れにも水を差すことになりかねない案でした。この案で就労に支障が生じれば、就労を制限するか祖父母世帯の協力を求めることとなりますが、今は50代、60代、70代でも仕事をもっていることが珍しくありません。しかし頼られた祖父母世帯は孫育てやみまもりにリソースをさかねばならず、結果的に祖父母世代の労働力率にも悪影響を及ぼすことになるでしょう。これだけ多くの企業が人材不足に悩み、それゆえに倒産する企業も続出するなか、就労を妨げるだけで実態の伴わない条例は企業経営への配慮をも欠いていると言わざるを得ません。
今回のまとめ
今回の条例案が取り下げとなったことにほっとした人も多いのではないでしょうか。虐待や故なき放置は今後も注視し取り組んでいかなければいけない問題です。しかし、国の施策として一億総活躍時代、出生率の増加をあげていながら、子のいる家庭の就労を妨げることは国、家庭、企業すべてにとって不利益でしかありません。企業においても従業員に安心して長く働いてもらえる環境づくりを整えることで人手不足を解消するきっかけになることがあります。従業員のおケガや病気へのサポートに備えることも福利厚生制度の一環として効果的です。長く安心して働いてもらえる職場環境に備えたいという方はぜひお近くの保険代理店までご相談ください。
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