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傷病手当金支給件数が2倍に 精神疾患増加
令和4年度の全国健康保険協会の傷病手当金の支給件数は31・1万件で、前年度の15.4万件から倍増していることがわかりました。傷病別では、半数近くを新型コロナウイルスが占める他、精神疾患も前年度比で1割以上増えています。傷病手当金支給からみる懸念事項についてみていきましょう。
【目次】
1.令和4年度の傷病手当金支給状況
2.精神疾患の増加による懸念
3.今回のまとめ
令和4年度の傷病手当金支給状況
令和4年度に協会けんぽが支給した傷病手当金件数は、31万1099件で前年度の2倍以上に増えました。傷病別では、以下の通りです。
【傷病別割合一覧】
◇新型コロナ15万1263件(48.62%)
◇精神疾患 5万6341件(18.11%)
◇その他感染症、寄生中症 2万2096件(7.10%)
◇がん 2万1444件(6・89%)
さらに、支給総額については329億7392万812円で、前年度から25%ほど増加しました。
【支給金額別疾患割合一覧】
◆精神疾患 114億6209万3206円 (34.76%)
◆新型コロナ 56億6861万5394円(17.19%)
◆がん 43億7166万7411円(13.26%)
◆筋骨格系・結合組織の疾患 25億1043万4959円(7.61%)
◆循環器系の疾患 24億435万4666円(7.29%)
と続きます。 (労働新聞 第3416号参照)
精神疾患の増加による懸念
コロナ禍が始まってから、全世界が様々な不安と戦っていました。
【コロナ禍中の不安を感じる人の声】
「失業中で保険がありません。ワクチンの副反応が出ても病院に行けず不安です」
「コロナに感染した後遺症で、息切れや不安感が続いています。働けません」
「長い自粛生活の中で、ストレスと運動不足、不眠が続いています」
経済協力開発機構(OECD)は、「新型コロナの危機は、経済的不安や失業、恐怖などのメンタルヘルスの低下につながるリスク因子を高めた。その一方、社会とのつながり、雇用と教育への関与、運動へのアクセス、日常生活、医療サービスへのアクセスという、保護因子(=健康リスクの軽減・排除に役立つ要因)は劇的に低下した」と述べます。
◆「メンタルが特に悪化しやすい人」は世界共通
ある英国研究所の調べでは、失業者や経済的不安を経験している人々のメンタルヘルスは、一般の人々よりも悪化したとみています。特に、女性、若者、一人暮らしの人、社会経済的地位の低い人、失業中の人は、精神的苦痛の割合が高まったと述べます。
◆うつ病の男女格差広がる
また、これまで精神疾患の有病率は男女差があり、女性のほうがうつ症状や不安を訴える割合が高いことが知られています。新型コロナの危機により、うつ症状や不安の男女差はさらに拡大しました。米国の報告では、2020年3月から4月にかけてのパンデミックの初期段階で、メンタルヘルスの男女格差は、66%にまで拡大しました。日本では、コロナ禍の中、女性の自殺率が15%も増加したことをご存じでしょうか。もちろん個々に複雑な理由があると考えられますが、女性の方が非正規職が多くコロナ禍で雇用を切られやすかったこと、リモートワークなどでパートナーと家にいる時間が多くなったことによりDVやハラスメントを受ける機会が多くなったことも関係していると思われます。
◆「経済回復」はメンタル改善に直結しない
米複数大学の研究者らによる「COVID-19プロジェクト」は、うつと不安が経済的ストレスと密接に関連していることを示しました。それなら今のように経済が回復するにつれて、メンタルヘルスも改善するだろう…と予想されるかもしれませんが、およそ2年間の隔離生活、社会の混乱の影響などのため、容易にメンタルヘルスは改善しないようです
◆運動量の低下はうつ病の主要リスク
米国科学アカデミーの報告で、身体活動が減るとうつ病等メンタルヘルスの問題が高まることが指摘されています。コロナ禍で、人々の1日あたりの平均歩数は10,000歩から4,600歩に減少。睡眠は1日あたり25〜30分増加しましたが、社交に費やす時間は1日あたり30分未満に減少、スクリーン時間は2倍、1日5時間以上に増えました。そして2020年3月から7月の間に、臨床的うつ病リスクは46〜61%で、パンデミック前と比べて、リスクが90%も増加しました。つまり、身体活動の低下がうつ病を招く一因であったともいえます。逆に運動習慣を維持した人は、身体活動が減った人よりもリスクが大幅に低くなりました。
今回のまとめ
2023年も後半となり経済や雇用もようやく回復し、日常が戻ってきたかのようにみえます。しかし昨年の傷病手当金の支給状況からもわかるように、コロナ禍での疾病やメンタルは、景気が回復したからといって簡単に戻るものではありません。経済が戻った今だからこそ企業側としても従業員の心身の健康にいっそう気を配り、ケガはもちろん、精神を含む病気などにも備えておく必要があるのです。
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