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仕事中のケガなのに労災が不支給!?
業務中にケガをした場合は労災扱いとなりますが、私用(私的行為)や故意、個人的なうらみなどにより第三者から暴行をうけたなど労災とならないケースもあります。今回は、現場でハチに刺されてしまった事案により労災認定された作業員と労災認定されなかった作業員との違いを題材にしながら労災認定の「業務上災害」について触れていきたいと思います。
【目次】
1.現場でハチの駆除試み刺される
2.労災の上乗せ保険でカバー
3.今回のまとめ
現場でハチの駆除試み刺される
災害のあらまし
Aさん、Bさん、Cさんは工務店の大工で建築作業をしていました。AさんとBさんが木材の運搬中に脇に立っている木にアシナガバチの巣を見つけました。このままでは危ないと思ったAさんはBさんの制止を聞かずに駆除しようとして木を強く揺らしました。すると大量のアシナガバチが発生し数10メートル離れたところにいたCさんを含めて3人とも顔や手足などを刺されてしまいました。命にかかわるほどではありませんでしたが、業務上の災害として、Aさん、Bさん、Cさんはそれぞれ労災認定の手続きを行いました。
判断
BさんとCさんは業務上の災害として認定されましたが、木を強く揺らしたAさんについては、故意にハチの巣を刺激したものとして業務外とされました。同じ作業場で同じような作業を行っている状況にもかかわらず労災認定の判断が分かれてしまったのです。もし3人ともハチの巣を駆除しようとしていれば、労働者が故意に災害を発生させたとして三人とも不支給になった可能性が高いと思われます。
「業務災害」とは?定義の確認
業務災害とは業務の事由による労働者の負傷、疾病、傷害または死亡をいいます。「業務上」とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病との間に一定の因果関係が必要です。業務上と認められるためには、「業務起因性」が認められる必要があり、その前提条件として「業務遂行性」が認められなければなりません。事業主の支配・管理下で業務に従事している場合は業務遂行性が認められますが、以下のケースでは業務災害として認められない可能性があります。
・業務起因性が認められないケース
- 労働者が就業中に私用(私的行為)を行いまたは業務を逸脱する恣意的行為をしていてそれが原因となって災害を被った場合
- 労働者が故意に災害を発生させた場合
- 労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
- 地震、台風など天災事変によって被災した場合(ただし、事業所の立地条件や作業条件・作業環境などにより、天災事変に際して災害を被りやすい業務の事情があるときは業務災害)
使用者側も業務災害の判断に注意が必要
今回のケースでは、Aさんのハチを駆除しようとして木を強く揺らした行為によって「労働者が故意に災害を発生させた」と判断されたことから「業務災害」として認められませんでした。かなり厳しい判断と感じます。労災としては、たとえ「ハチのいる可能性の高い場所で作業し、危険な職場環境に起因して」傷病が発生したとしても故意に発生させたのかどうか、故意に発生させたのであれば誰がその行為をしたかなど個々の状況によって「業務災害」の判断が異なってきます。使用者側としては労災の判断基準などに対して注意が必要です。
労災の上乗せ保険でカバー
仕事中であっても上記の事例のように「業務起因性」が認められずに労働災害として認められない場合もあります。また、通勤途上の事故でも私用の為経路を逸脱した場合や合理的な経路で帰宅しなかった場合などは通勤災害として認められない事もあります。従業員の認識としては、労災の補償を受けられると思ってしまうような事故でも実際は不支給となるケースもあります。仮に労災の上乗せ保険に加入していても労災保険で不支給だった傷病に対しては保険金が支払われない可能性が高いです。
労災上乗せ保険のフルタイム補償でカバー
労災の上乗せ保険の中にはフルタイム補償を付帯できる保険商品があります。通常は業務中のみの補償ですが、フルタイム補償を付帯する事により業務外のケガも含めて、補償することが出来ます。業務なのかプライベートなのか判断が難しいケガはもちろん、趣味のゴルフや釣りなどの完全なプライベートでのおケガも補償することが出来ます。
労災上乗せ保険で役員のケガもカバー
労災上乗せ保険は、労災や健康保険などの公的保険の補償が薄い役員の補償もカバーすることが出来ます。役員の業務災害に対して労災の給付を受けることは出来ません。ただ中小事業主等は労災保険に特別加入することによって、労災保険の給付を受けられる場合があります(従業員と同じ業務を行っている時の災害など給付には条件があります)。また、労災保険から給付が受けられない場合は、健康保険から給付を受けられるのが原則ですが、法人の役員について「その法人の役員としての業務に起因する負傷等」は健康保険から給付を受けるのは適当ではないとしています。結果的に法人の役員等は健康保険および労災保険のどちらの公的保険からも給付を受けることができず、原則として医療費は全額(10割負担)となります。※ただし①被保険者数が5人未満の適用事業所の法人役員であり②一般従業員と同等の業務を遂行中に生じた傷病であること。以上①と②を満たす場合は健康保険で保険給付を行います。
今回のまとめ
仕事中のケガや傷病について、国の労災の補償があれば心配ないとお考えの方も多いとは思いますが、ケガの内容などによっては補償されないケースもあります。また、労災だけでは、労災訴訟など使用者責任が問われた時に十分に対応できないケースも出てきますので、上乗せ保険等に未加入の企業は企業防衛のためにも是非一度、ご検討ください。
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