お知らせ・コラム
安全運転管理者にも実刑判決
2016年、長野県軽井沢町で大学生など15人が死亡したスキーツアーのバス事故の裁判で、長野地方裁判所は、業務上過失致死傷の罪に問われたバス会社の社長に「元社員による、ずさんな安全管理に問題意識を持ちつつも黙認していた。大型バス事業者として事故を起こさぬよう義務を果たすべき立場なのに、目先の利益を優先して事故を発生させた」として禁錮3年、運行管理を担当していた元社員に「指導などを行わないまま運転に従事させた。安全管理者として刑法上の注意義務を怠ったことは明らかだ」とし禁錮4年の実刑判決を言い渡しました。
※2023年6月8日 日本経済新聞 参照
これまで、運転手本人に対する実刑判決はあったものの、法人や会社の安全管理者として運行管理責任者に対しても実刑判決が出たのは異例とのことです。そもそも、安全運転管理者とはなにか?届出義務や罰則規定、手続き方法等2022年4月改正の道路交通法規則から警察庁の情報をもとに詳しく見ていきたいと思います。
【目次】
1.安全運転管理者制度について
2.安全運転管理者の業務の拡充等
3.今回のまとめ
安全運転管理者制度について
【安全運転管理者制度】
安全運転管理者制度とは、自動車の使用者が道路交通法第74条の3の規定に基づき、自家用自動車(いわゆる「白ナンバー」)を一定台数以上使用している事業所において、安全運転管理者や副安全運転管理者を選任し、事業所における安全運転の確保を図るための制度です。
安全運転管理者は、事業所において
・運転者の適性の把握
・運行計画の作成
・危険防止のための交替運転者の配置
・異常気象時の安全運転の確保
・点呼・日常点検の実施及び安全運転の確保のための指示
・運転日誌の備付けと記録
・運転者に対する安全運転指導
等の業務をおこない、安全運転管理業務や運転者に対する交通安全教育を行わなければなりません。
事業用自動車(いわゆる「緑ナンバー」)を使用している事業所が選任するのは「運行管理者」です。
【安全運転管理者等の選任】
使用者は、自動車の使用の本拠ごとに自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として安全運転管理者を選任しなければなりません。
・乗車定員が11人以上の自動車 1台以上
・その他の自動車 5台以上
※ 大型自動二輪車又は普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算
※ 台数が20台以上40台未満の場合は副安全運転管理者を1人、40台以上の場合は 20台を増すごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要
【安全運転管理者の資格要件】
20歳以上(副安全運転管理者を選任しなければならない場合については30歳以上)自動車の運転の管理に関し、2年以上の実務経験を有する者又は同等以上の能力を有すると公安委員会が認定した者いずれも道路交通法施行規則第9条の9第1項第2号イ及びロに該当しないものとなっています。(安全運転管理者等の解任から2年を経過していない方や、ひき逃げ・飲酒運転・無免許運転等の違反行為から2年を経過していない方が当たります)
安全運転管理者の業務の拡充等
令和3年6月、千葉県八街市において飲酒運転のトラックによる交通事故が発生したことを受け、業務使用の自家用自動車における飲酒運転防止対策を強化することを目的として、令和3年の道路交通法施行規則の改正により、
① 安全運転管理者に対し、目視等により運転者の酒気帯びの有無の確認を行うこと及びその内容を記録して1年間保存することを義務付ける規定(令和4年4月1日から施行)
② 安全運転管理者に対し、アルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無の確認を行うこと並びにその内容を記録して1年間保存すること及びアルコール検知器を常時有効に保持することを義務付ける規定(令和4年10月1日から施行)が設けられました。
このうち②の規定については、最近のアルコール検知器の供給状況等を踏まえ、令和4年の道路交通法施行規則の改正により、当分の間、適用しない(①の規定と読み替えて適用する)こととなりました。また、令和4年の道路交通法の改正により、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則が、5万円以下の罰金であったものが、50万円以下の罰金に引き上げられました(令和4年10月1日から施行)
【安全運転管理者の届出】
安全運転管理者・副安全運転管理者の届出・申請手続きは、安全運転管理者・副安全運転管理者を選任した事業所で行います。選任した日から15日以内に事業所の所在地を管轄する警察署の交通課窓口に届出かインターネットでの届出が可能です。警察行政手続サイトの申請等一覧 – 愛知県警察 (pref.aichi.jp)届出者は、自動車の使用者(事業所)であるため、安全運転管理者等本人以外でも可能です。
届出に必要な書類は、
・安全運転管理者等に関する届出書 2部(1部コピー可)
・履歴書 1部
・自動車の運転管理経歴書 1部
・運転記録証明書1部
※運転免許を保有する場合は提出が必要(自動車安全運転センターに申込み必要)
・戸籍抄本、住民票の写し又は運転免許証の写し いずれか1部
届出書の申請様式や記載例などは管轄の警察署ホームペ-ジにて確認できます。
今回のまとめ
乗用定員11人以上の自動車は一台、その他の5台以上の自動車を使用している事業所は安全運転管理者の選任・届出が必要であり、安全運転管理者は事業所において安全運転管理業務や運転者に対する交通安全教育を行わなければなりません。交通安全教育不足により、法律上、社会通念上、損害を負ってしまうケースも考えられます。保険会社によっては、自動車保険だけでなく、安全運転診断や車両運行日報管理の効率化サービスなどを案内しているところもあります。業務効率向上、コンプライアンス意識の向上等、気になる方はお近くの保険会社へ相談してみてはいかがでしょうか?
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