お知らせ・コラム
テレワークの拡がりと上司の心理
少し前のニュースになりますが、アメリカの大手電気自動車メーカー「テスラ」のCEOであるイーロン・マスク氏の発言が話題になっていました。氏が送ったとされる幹部宛のメールの中で「リモートワークを希望する者は週40時間の出社をすること、できなければこの会社を去れ」と事実上のリモートワーク希望者の解雇を示唆した発言があったものです。奇しくもほぼ同時期に、ソーシャルネットワーキングサービス「エアビーアンドビー」のCEOが、「オフィスはデジタル化以前の時代錯誤の遺物である」として、給与を減らすことなく恒久的にリモートワークが可能になる制度を発表しました。リモートワークと出社のバランスを模索している多くの企業からみればどちらも極端な考え方のように思えますが、このようにコロナ禍で拡がったリモートワークを契機に、世界中が「働き方」について考える時期にきているのかもしれません。
【目次】
1.リモートワークで上司の心理に何が起きているのか
2. 他者の目がなく叱責がエスカレート?
3. 知ること、内省、思いやりが大切
4.今回のまとめ
リモートワークで上司の心理に何が起きているのか
コロナ禍で広がった働き方の変化は、上司部下の関係にも大きく影響を及ぼしています。今年(2022年)4月から「労働施策総合推進法(※通称 パワハラ防止法)」が中小企業にも適用され、全ての企業でパワハラへの取り組みが義務付けられました。したがって企業は従来の働き方を想定したパワハラ対策のみでなく、テレワーク環境も考慮したパワハラ予防、対策を講じる必要性が高まっています。このような時代に、上司、部下に生じる心理的な影響やそれにより引き起こされるトラブル、パワハラについてみていきましょう。
【リモートワークに対する上司側の意見】
「部下の仕事状況を把握しにくい」
「部下との心理的距離が離れている」
従来であれば、同じ環境下で部下の表情や声のトーン、行動の様子を把握できたし、心配であればその都度声をかけることもできました。しかしテレワークではそういった情報を得ることが難しいため、上司に不安を抱かせることになるようです。こうした不安からテレワーク下での監視管理体制を強めようとする動きも出てきます。中には時間監視システムを導入する会社もあるようですが、海外の調査では、「時間監視システムを導入した会社では、仕事をしているふりをする社員の割合が増加した」という結果も出ており、一概に管理体制を厳しくすればよいともいえないようです。
【部下の意見】
「公私を切り替えるのが難しい」
「何かあった時すぐ相談しにくい」
家でのリモートワークでは公私を切り分けるのが難しいこと、また特に何かミスをした場合、上司から叱責を受けた場合、職場であれば周りの同僚や先輩に相談したりできるが、テレワークの場合は一人でかかえるしかないことなどがあげられます。相談したくとも相手方の状況がわからず遠
慮してしまう場合も多いようです。またメールなどの文字上での指示ややり取りが多くなるため上司の意図をくみ取ることが難しくなり、あれこれ疑心暗鬼になってしまうこともあるようです。
他者の目がなく、叱責がエスカレート?
上司は部下との心理的距離を埋めるためコミュニケーションを密にとろうとします。良好な関係であれば効果的ですが、従来からあまりそうでない場合、またテレワークで距離をつめられると部下は圧迫感やストレスを感じることがあります。管理、指導、叱責がオンライン上で行われると、部下は通常の職場環境よりも逃げ場がなくなり、家での気持ちの切り替えもできないためネガティブな気持ちを引きずりやすくなります。
もう一つ重要なことは、1対1でしかもオンライン上で部下を叱責する場合、人の目がないことからエスカレートしやすいということです。「叱る依存」といって、叱ることは人の脳の報酬系回路を活性化させドーパミンを放出します。つまり叱ることが気持ち良いと感じてしまいどんどんエスカレートしてしまうのです。そういったことが重なるとパワハラにつながりかねないということも覚えておくべきでしょう。
知ること、内省、思いやりが大切
上記のようなことを防ぐためには、これまで述べてきたようなテレワークによる心理的影響やパワハラについて社内研修などで周知することが必要です。また「内省」や「思いやり」がここでは重要になってきます。「内省」とは自分の感情、欲求、価値観や行動について自覚的に見つめることです。ビジネス場面では「感情的になるべきではない」「常に冷静であれ」ということが求められ、表面上はみなそのようにふるまっています。パワハラは個人内に押し込められた感情の蓋が開いた時に発生します。上司側は常に自分の感情を見つめて内省を繰り返し行う必要があります。
今回のまとめ
新しい働き方によってハラスメントの定義も変わってきています。今まででは考えられないことが思わずトラブルやハラスメントと捉えられることもあり、雇用側のリスク管理はますます重要になっています。民間の保険の中には、企業がハラスメント等で訴えられ損害賠償責任をおった場合、その争訟費用や専門家への相談費用を補償するものがあります。
全ての企業にハラスメント防止対策が義務付けられた今、雇用リスクにそなえる補償に入っておくことは、リスクマネジメントの一環として必要なことなのではないでしょうか。
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