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仮設足場工事業で発生した高額労災訴訟とは

仮設足場工事業で発生した高額労災訴訟とは

作業現場で足場の解体作業中に従業員が高さ5mから墜落して、頭を強く打ち頸髄損傷により四肢麻痺が残り後遺障害1級に認定された事故のご紹介になります。

事故の原因が企業側の事故防止措置不足ということで、被災した従業員から2億8000万円もの損害賠償請求訴訟を起こされてしまいました。

近年では、労災訴訟の金額が高額化しており一つの労災事故によって会社の経営が傾き、最悪のケースでは廃業に追い込まれてしまうこともあります。事故が発生しないように安全対策を徹底するともに、万一に備えて保険などで備えておく必要があります。

今回は、実際に起こった仮設足場からの転落事故について触れていきたいと思います。

(AIG損害保険 事故事例集参照)

【目次】

1.仮設足場の解体中の労災訴訟事故

2.労災訴訟の高額化

3.今回のまとめ

 

仮設足場の解体中の労災訴訟事故

☆事故概要

作業現場の足場解体中に従業員A(20歳)が高さ5mから墜落しました。その結果、頸髄損傷、両大腿骨骨折、右膝蓋骨骨折を受傷しました。頸髄損傷により四肢麻痺が残り、後遺障害1級に認定されました。

☆事故内容

早朝の事故で、現場にいたのは足場作業主任者と従業員Aの2名だけでした

・足場を上から解体していく作業で、一番上の横の鉄棒(養生シートをかける最上段の部分で作業員がのって作業する部分ではない)部分を解体するよう、足場主任者が指示し従業員Aが上りました。

・下からハンマーでたたけばすぐに解体できるもので、特殊な作業ではありませんでした。

・従業員Aは足場の5段目に上って手すりを解体した際、片方の手で支えていなかったため、勢いあまってバランスを崩し、アスファルト舗装の地上に転落してしまいました

☆解決までの経緯

①治療期間は4年以上の長期に

②従業員Aは頸髄損傷により四肢麻痺が残り、後遺障害1級に認定

③従業員Aは弁護士に委任し、会社に対して書面で1億8000万円超を請求

④損害賠償請求金額2億5000万円で訴訟に

⑤和解案提示の直前に訴えの変更申し立てがあり、請求額が2億8000万円に

⑥訴訟開始から約4年後、1億5000万円で和解が成立

 

・後遺障害とは「治療の効果が医学上期待できない状態であって、補償対象者の身体に残された症状が将来においても回復できない機能の重大な障害に至ったものまたは身体の一部の欠損をいいます」政府労災も民間の保険会社も同じ考え方です。

損害賠償において、後遺障害1級の認定は労働能力の喪失率が100%であり、医師の指示により将来介護費も認定されるため賠償額が高額になります。

・逸失利益、将来介護費、後遺障害慰謝料、休業損害、家屋改造費用などで和解金が1億5000万円と高額となり、死亡案件よりも重度後遺障害の方が賠償金が高額となるケースが多いです。

労災訴訟の高額化と会社責任

☆未然防止策と企業責任

①安全帯のフックを固定していなかった(墜落・転落防止措置不足)

・高所からの万一の墜落・転落した落下物に備えて、安全ネット(落下防止ネット)や防護柵を設置し墜落・落下防止措置を講じる必要があります。

・労働安全衛生法では、足場の組立て、解体又は変更の作業時における墜落制止用器具(安全帯)取付設備(手すり、手すりわく、親綱等)の設置が義務づけられています。

②従業員Aは高所作業をしないという条件で会社に雇用されており、高所作業のための十分な指導も受けていなかった(雇用条件無視)

・労働安全衛規則では、足場の組立て、解体又は変更の作業のための業務に労働者を就かせる時は、特別教育を実施しなければならないと義務付けられています。

・労働基準法では年少者(18歳に満たない者)の危険有害業務の就業制限が規定されており、高さ5メートル以上で墜落のおそれのある場所における業務は禁止されています。

☆労災訴訟の高額化

使用者賠償など従業員や下請け業者などに対する人身賠償において認められる損害額は近年高額化しています。今回の事故では2億8000万円もの高額請求でしたが請求項目についての詳細になります。

・逸失利益 9100万円

基礎収入×労働能力喪失力(死亡・後遺障害1~3級では100%)×ライプニッツ係数

・将来介護費 6800万円

日額×365日×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数

・後遺障害慰謝料 2800万円

・家屋・自動車等改造費用 2400万円

・休業損害 1300万円

さらに2020年4月1日以降に発生した事故の場合、ライプニッツ係数が高くなる改定が行われました。例えば本件の場合では、逸失利益が9100万円→1億2376万円となり、将来介護費は6800万円→9656万円に値上がりすることになります。

今後、ますます労災事故の賠償金額は高額になる事が予想されます。

今回のまとめ

労災事故や労災訴訟の備えとして、労災の上乗せ保険に加入することにより被災者への補償が厚くなるとともに、企業防衛として会社や経営者をお守りする事が出来ます。年々、労災訴訟の賠償金額が高額化しさらに業務上疾病(業務が原因で病気となり、脳梗塞、心筋梗塞、うつ病など重大な疾病の危険性もある)など労災認定の基準も拡大している為、時代にあった内容になっているのか、満期更新の時などに内容の見直しが必要となります。

 

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