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長時間労働による過労自殺で取締役らへの賠償請求も

長時間労働による過労自殺で取締役らへの賠償請求も

長時間労働により自殺した銀行員の遺族が、取締役らが適正な労働時間管理体制の構築を怠ったとして、同行の取締役11人を相手に、株主代表訴訟を提起しました。地裁は取締役には善管注意義務違反はなかったとして原告の訴えを退けましたが、労務トラブルが起きた際、企業だけでなく役員個人の責任を問われることも多くなっています。企業としてはどのような対策をとるべきでしょうか。

【目次】

1.事案の概要と判決のポイント

2. 役員の会社に対する責任と株主代表訴訟とは

3. 役員への賠償責任が問われた場合に備えて

 

事案の概要と判決のポイント

原告はH銀行の株主権兼従業員であったA氏の妻です。平成24年10月、Aが本店屋上から飛び降り自殺をはかり死亡しました。当時その銀行では時間外・休日出勤管理システムを備えてはいましたが、Aは平成24年5月~10月の間の自身の労働時間を過少申告しており、またAの上司も部下である従業員の労働時間を正確に把握、確認していませんでした。実際、Aの亡くなる直前1ケ月の労働時間は209時間に達していました。Aの遺族は、自殺は長時間労働によるものであったとし、H銀行に対し安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を提起したところ、裁判所は原告の主張を認め、H銀行に対し損害賠償金の支払い(1億3000万円)を命じました。

【その後、さらに原告らは株主代表訴訟を提起】

原告は、銀行として信用毀損による損害を被ったのはH銀行の取締役であった被告ら11人が、従業員の労働時間管理体制の構築に係る善管注意義務を懈怠したためであると主張して、計2億6000万円の株主代表訴訟を提起しました。しかし裁判所は直接の上司でない取締役らが長時間労働を予見するのは困難であり、取締役としての善管注意義務違反は無かったとして原告の訴えを退けました。

(参照 労働新聞3月21日号)

役員の会社に対する責任と、株主代表訴訟とは

◇役員等の会社に対する責任

株式会社の取締役など役員等と会社との関係は委任関係に立ち、役員等は会社に対して善管注意義務や忠実義務などを負っています。それらの義務に違反し会社に損害を与えた場合には任務懈怠責任を負うことがあります。この場合、本来であれば当該役員に対して責任追求をするのは会社側(監査役)ですが、役員間の仲間意識などで実際にはうやむやにされてしまうことも想定されます。そこで一定の要件のもと、株主が会社に代わって当該役員に対して責任追求の訴えを提起することが会社法上認められており、これが株主代表訴訟です。                                   ※あくまで会社全体としての利益、ひいては株主の利益を保護する制度で、株主個人のための訴訟ではありません。

株主代表訴訟の要件

株主代表訴訟を提起できるのは、公開会社では6ヶ月前から引き続き株式を有している株主となります。非公開会社の場合は6ヶ月の制限はありません。 本来は役員に対しては会社が責任追及すべきですが、請求の日から60日以内に会社が提訴しない場合に株主が代わって提訴できます。ただしその期間を待っていては会社に回復できない損害が生じるおそれがある場合はただちに提訴できます。

代表訴訟への訴訟参加

株主代表訴訟が提起されている場合、会社や他の株主等は共同訴訟人や補助参加人として訴訟に関与することが可能です。被告の役員に間違いはなかったとして被告側に加勢したい場合や、逆に株主側に立って追求したいと考える他の株主が存在する場合もしばしば見られます。このような参加への機会を確保するため、株主代表訴訟を提起した場合、その株主は会社に対して訴訟告知する必要があり、訴訟告知を受けた会社は遅滞なく公告または株主への通知をする必要があります。なお会社が被告である役員側につく場合は監査役等の同意を要します

今回のケースでは、地裁は労働管理体制に不合理な点はなく、当時の役員らに労務管理に関する内部統制システム構築義務に違反した点はなかったとし訴えを棄却しました。原告側はどうすれば夫は長時間労働をしなくて済んだのか疑問が残るとして控訴する方針のようです。

企業や役員への賠償責任が問われた場合に備える

企業の安全配慮義務とは、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように、使用者において配慮する義務のことです。この義務を怠り労働者が仕事でケガをしたり病気になった場合にはその損害を会社が賠償しなければなりません。この損害賠償は労災認定による補償と並行して請求されることがあります。また昨今、企業に対してだけでなく、社長や役員個人への高額な賠償請求事例が認められたケースもあり、企業単体や役員個人で賠償金や解決金の原資を準備することは難しいと言わざるを得ません。使用者賠償責任保険や、会社役員賠償責任保険に加入するなどで備えを準備しておくことが大切です。労務トラブルへの備えをお考えの方はぜひお近くの代理店までご相談ください。

 

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