お知らせ・コラム
労災認定の境界線とは!?『コロナ禍の昼食時テイクアウトに気を付けましょう』
労災はなにも業務自体が危険だから起こるものとは限りません。
今回取り上げる、昼食を買い出しに行く途中で負傷するケースについてはありとあらゆる企業で起きそうな事案となります。
今回はそのような労災になるのか否か、についてとその対策についてまとめています。
【目次】
1.ある事務員がお昼の買い出し途中に負傷したケースは労災にならない?!
2.労災認定の判断は業務起因性と業務遂行中がポイントです
3.今回のまとめ
ある事務員がお昼の買い出し途中に負傷したケースとは
危険が伴う業務ではない会社の日常でも労災リスクは潜んでいます。
ある昼食時に起きた労災事例
X社の事務員であるAは、お昼の休憩中に自ら申し出て、自分を含めた社員数人ぶんの昼食も一緒に買い出しに出かけました。その日は大雨が降っていて、傘と買い物袋を両手に持っていたAは、X社に戻る途中、急な風に傘が大きくあおられ、足をすべらせてバランスを崩し、左手首の打撲と左足首を捻挫、全治2週間との診断をうけました。
政府労災の対応はどうか?
Aが負傷した時間はお昼休憩中だったことに加えて、Aが自分の昼食とともに他の社員のぶんの昼食を買い出しに行く行為には業務遂行性があるとは認められず、業務外と判断されました。
労災認定の判断は業務起因性と業務遂行中がポイントです
通常、業務上の災害=労災認定、と判断されるには、その災害が業務に起因したものかどうかの業務起因性、業務の遂行中に発生したものかどうかの業務遂行性が確認され、業務上災害かどうかが判断されます。
■業務上の災害になるかどうかの2つのポイント
・業務起因性
・業務遂行性
業務遂行中とは、事業主の支配、管理下にある状態で発生した災害となり、勤務時間中のケガについては上記の2点を満たしていることから業務上災害と判断されることがおおい。一方、休憩時間については、労働基準法第34条3項に「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」と規定がうたってあり、よって労働者は休憩時間中は事業主の支配下でも業務に従事してもいないことになります。休憩時間中に外出することも基本的には自由ですので、その休憩時間中に転倒などでケガをすることがあっても業務外と判断されることがおおいです。
休憩中に業務中と認められるまれなケースもある
休憩時間中のケガだとしても、業務中と認められるケースもじつはあります。
例えば、社員食堂で昼食をとっている最中の被災であったり、会社の階段など事業場内の施設を利用している際、その施設に欠陥や不備があったことによるケガであれば、たとえそれが休憩時間中であっても、事業主の支配下かつ管理下にあるとして業務上災害と認められることがあります。
また、トイレや飲水などの生理的に必要なもの、かつ簡易なものであれば、一時的に業務や作業を中止していても、それは通常の業務に付随する行為とみなされるため、トイレに行った前後でつまずいて負傷したといった場合でも業務上災害となります。
今回の事務員Aのケースでも状況により判断が異なる
今回の例に出した事務員Aのケガは会社に戻る途中ではありますが、住居から会社への移動途中でもないので通勤災害の適用もできません。今回Aは昼休憩時に外が大雨だったために自らの親切心で他の社員に声をかけ、その際に頼まれたぶんの昼食を買い出しに行っています。この際A自身の昼食も一緒に購入していることから休憩時間中の私的行為とみなされました。もしもの話ですが、「他の社員ぶんの昼食のみを買い出し」に行くことをAが上司から頼まれたという状況ですと、変わってきます。上司から頼まれた=業務命令があったとみなされ、会社としての休憩時間中だったとしても業務命令があれば勤務とみなされ、また自社施設外であっても、業務起因性ならびに業務遂行性が認められ、業務上となる可能性が高いと考えられます。
上記のように政府労災においては業務上となるかどうかの判断が状況により異なりますが、労災の上乗せ保険において、フルタイム特約というものがあり、業務中でなくてもケガの備えができるものもございます。
あらゆる面を考えながら保険の選択をしていくのが良いでしょう。
今回のまとめ
昨今では、新型コロナウイルスによる影響で、店内で飲食をするよりもテイクアウトを選ぶ方が増えてきています。なるべくなら不特定多数の人と接触をしないよう、会社のグループの一人が全員分の昼食を買い出しに行くケースは考えられます。そのような方法を会社として新型コロナウイルス対策の指針として打ち出しをし、上司が買い出しの人を指定して買い出しに行かせているのか、または、単に同僚同士での話し合いで買い出しに行かせているのか、という状況でも異なる結果になりそうです。いずれにしても、労災が起きた際に業務上とならないケースでも任意労災などでカバーできるようにしておくと、労災とならないケースの保険の保険として有効活用できることでしょう。
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