お知らせ・コラム
雇用トラブルの罠に巻き込まれないために【退職・解雇にまつわるリスクに備える方法とは?】
日本のような長期雇用システム下で勤務する労働者に対しては、解雇の判断を下すさい、単に能力不足、成績不良勤務態度不良、適格性の欠如というだけでなく、その程度が重大なものか、改善の機会を与えたか、そのうえで改善の見込みがないかなど、慎重に判断する必要があります。解雇トラブルで訴訟になった場合、容易に解雇を認めない裁判例も少なくありません。
会社が従業員を解雇するには①解雇理由と②解雇予告手続きの2つが必要になります。①の解雇理由については、解雇するに足る合理的な理由が必要であり、一方的に辞めさせることは認められません。訴訟となった場合、会社側が解雇理由を立証する必要があります。よって労働契約書及び就業規則であらかじめ解雇事由を定めておく必要があります。②の解雇予告手続きについては、原則、最低30日前に解雇予告をするとの定めがあります。即日解雇の場合は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。解雇トラブルに直面した時、企業として、どのような対応をとるべきなのでしょうか。事例を交えて、その備えについて考えてみましょう。
【目次】
1.飛び込み営業を拒否した社員を解雇できるかどうか
2.アルコール中毒社員の解雇した際に最高裁まで争った事件とは
3.解雇トラブルについて保険がどのようにお役にたてるか
4.今回のまとめ
飛び込み営業を拒否した社員を解雇できるかどうか
「 わが社の営業会議で、来期より飛び込み営業で新規顧客を開拓することになった。しかし社員Aをはじめとした数名がそれを拒否したあげく、有給休暇を取得すると告げ、話し合いから勝手に退席してしまった。これは職場放棄にあたる!解雇だ!」(社長)
「そもそも採用の際『飛び込みによる営業はない』と聞かされていました。営業会議での指示の際、社長も交えて協議をしましたが、感情的になるばかりで話し合いにもなりませんでした。社長の強圧的な態度に、一旦冷却期間をおくべきだと考え有給休暇の申請をしたのです。 いきなり解雇なんてあんまりだ!」(社員A)
社命である新規顧客への飛び込み営業につき、社員Aを含む営業部数名が、それを拒否したことによる解雇の無効を争った事例です。
判決では「飛び込み営業は採用の前提と異なっており、社員の労働荷重がさらに増加すると考えたAの反対理由が妥当である。」「社長は相当の手続きでAらの同意を得る努力をすべきところ、強圧的な応対に終始し、また日頃から会社の方針に従わない者には解雇を示唆していた」ことからAら社員にも責任の一端はあるとしながらも、社長の主張は解雇権の乱用であるとし、解雇は無効であるとの判決が下されました。
アルコール中毒社員の解雇した際に最高裁まで争った事件とは
(最三小判 平成22/5/25)小野リース事件
C社の営業部長であるDはアルコール依存症で、勤務時間中に居眠りしたり、職場を放棄してほかの従業員を誘っては昼間から温泉施設で飲酒したりと、やりたい放題をしていた。
社長が再三に渡り訓戒したものの、聞く耳をもたず、会社の重要な取引の日に酒に酔って寝過ごし無断欠勤したため、これ以上は業務に支障をきたすと社長はDに解雇を言い渡した。
Dはこれを不服とし、解雇は違法であると主張して争った。
一審、二審では、C社にも注意、指導において改善すべきところがあったと解雇は無効であるとの判決を出しました。しかし最高裁において、Dの行動はC社の正常な職場機能、秩序を乱すものであり、かつDが態度を改める見込みはなく、本件解雇が著しく相当性を欠くとは言えないとし、Dの訴えを退け、解雇は有効であるとの判決を出しました。
解雇した相手方がそれを受け入れない場合は、訴訟で最高裁まで争う事案もあるという例です。その社員の行動に多大な問題があるとしても、解雇は容易にできるものではないということがおわかりになるかと思います。
解雇トラブルについて保険がどのようにお役にたてるか
就業規則や労働契約に基づき、きちんと手順を踏んで解雇したとしても、解雇した相手から
訴えられる場合もあります。雇用慣行賠償責任保険では、万が一訴訟となった場合、争訟費用や、弁護士への相談費用、和解金や示談金、敗訴した場合の損害賠償金などを備えることができます。不当解雇だけでなく、パワハラやセクハラ、雇用差別などで訴えられた場合にも、利用することができます。正社員だけでなく、契約社員、アルバイトやパートなど、会社の業務に関わる全ての雇用形態からの訴えが対象となります。
今回のまとめ
雇用に関するリスクは、どの業種でも起こりえますが、特に解雇については慎重な扱いが求められます。解雇には客観的合理性と社会的相当性が必要です。嚙み砕いて説明すると、誰が見ても合理的な(理にかなっている)解雇理由だということです。そして、社会通念上の相当性がなければなりません。例えば、『社長が従業員のことを嫌いだから解雇した』という理由は、当人にとってはともかく、第三者から見てみれば、理にかなっていない理由だと言える可能性は高いので、不当解雇とみなされる可能性も高いのです。解雇は労働者に大きな不利益をもたらすので、客観的合理性と社会的相当性の基準は非常に厳しい条件になっており、特に訴訟になると簡単に認められるものではありません。
企業経営者の皆様は、雇用へのリスクには雇用慣行賠償責任保険であらかじめ備え、トラブルがあった際は、訴訟になる前に弁護士への相談や和解への道を探ってみるのも一つの手かもしれません。雇用慣行賠償責任保険の具体的な補償内容について聞いてみたいという方は、ぜひお近くの代理店までご相談ください。
従業員に関わる雇用リスクについての保険にご興味があるという方はいらっしゃいませんか?株式会社保険ポイントでは法人・個人事業主様を中心に、企業様向けの保険を専門に取り扱っております。お気軽にお声がけください。
TEL>052-684-7638
お電話でもメールでもどちらでもお待ちしております。