お知らせ・コラム
「安全配慮義務」と「安否確認」
2023年9月12日の労働新聞ニュ-スに、『東京商工会議所が会員企業に毎年実施している「災害・リスク対策に関するアンケート調査」によると、従業員の安否確認手段として民間企業が提供する専用の「有料の安否確認システム」を用いる企業は32.3%となり、前回調査の30.8%、前々回の27.1%から増加傾向にある』との記事が掲載されていました。有料の安否確認システムを利用する企業が増加している一方で、メールやSNSを利用して安否確認を行う企業は減少しているようです。安否確認システムの導入を検討している企業・事業者の皆さまに知っておいていただきたい安全配慮義務についておさらいしておきましょう。
【目次】
1. 安否確認と安否確認システム
2 企業の安全配慮義務と安否確認
3. 今回のまとめ
安否確認と安否確認システム
安否確認とは、災害発生時などに従業員やその家族が安全な状態であるかを確認することです。企業にとって最も優先すべきものは人命です。令和5年5月24日版の中小企業庁「中小企業等経営強化法 事業継続力強化計画策定の手引き」においても、自然災害等が発生した場合における対応手順として真っ先に挙げられているのは「人命の安全確保」であり、初動対応のひとつとして「従業員の安否確認方法」が含まれています。これは自然災害だけでなく、感染症の場合、サイバ-攻撃の場合も同様となっています。事業継続力強化計画の申請において「従業員の避難方法」と「従業員の安否確認方法」については必ず記載する必要があることからも、事業継続力強化や事業継続計画(BCP)において欠かすことはできません。これまで安否確認の方法として主流となっていたのは携帯電話やメールアドレス、SNSといった従業員の連絡網を整備するという手段でしたが、今後は安否確認システムの導入・活用が主流となりそうです。安否確認システムの仕組みは、従業員の安否確認をいち早く行う必要がある災害発生時やパンデミックなどの非常時に管理者が一括でメールを送信し、回答内容が自動で集計されるというものです。管理者が回答内容をもとに次の行動を迅速に指示することが出来るというメリットがあります。災害時においては「いかにスピ-ディ-に行動できるか」が企業の明暗を分けるため、安否確認システムを導入する企業が増加傾向にあるのは当然と言えるのかもしれません。
企業の安全配慮義務と安否確認
企業の安全配慮義務とは、「従業員が安全および健康に働くことが出来るように対策を講じることが使用者の義務」として労働契約法第5条に明記されています。安全配慮義務違反となった場合、法的根拠である
・債務不履行(民法415条)
・不法行為(民法709条)
・使用者責任(民法715条)
により、事業者が損害賠償責任等を負うことになります。労災事故が発生した際、「安全配慮義務」を怠っていると判断されれば、多額の損害賠償請求を受けるだけでなく企業イメ-ジの低下や人材流出にもつながりかねません。
従業員やその家族が安全な状態であるかを確認する「安否確認」は、法的な義務として定められている訳ではないものの、企業の安全対策として重要な位置づけとされています。平時に利用している携帯電話やメールアドレス・SNSといった連絡手段は、災害時には電話が繋がりにくくなる、メールが届かない等の理由で機能しなくなる可能性があります。従業員の安全と健康を守る「安全配慮義務」である安全な職場環境の提供、防災対策のひとつとして災害時の安否確認は必要不可欠なのです。安否確認システムには様々なものがあり、それぞれに特徴があります。無料で使える安否確認システムもありますが、
・自動送信機能がついていないため管理者が手動で行わなければならない
・自動集計機能がなく、管理者が集計を取る必要がある
・送信回数や文字数に制限がある
など、有料の安否確認システムとの違いがあります。これらの相違点が、コストがかかっても有料の安否確認システムを導入する企業が増えている理由のひとつとなっているのかもしれません。有料版にかかる費用は、初期費用の有無・月額の利用料金など導入する安否確認システムによって異なりますので、導入される際は機能と合わせてしっかりとチェックしておきましょう。
今回のまとめ
安否確認システムは災害時の連絡手段としてだけでなく事業継続対応として活用できるため、今後も導入するという企業が増えていくことが予想されます。事業継続力強化計画やBCPの一環として、また企業の安全配慮義務対策としても備えておきたい安否確認システムの有料版ですが、法人向け経営者保険の付帯サ-ビスとして無料(利用人数によっては初期費用無料+優待価格)で提供している保険会社もございます。死亡や後遺障害・就業不能といった経営者の万が一に備える保障とともに、災害時に迅速な安否確認ができるこのような付帯サ-ビスを活用してみてはいかがでしょうか?気になる方、ご興味のある方はお近くの保険代理店までお気軽にご相談ください。
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