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病気での休業と所得補償の保険

病気での休業と所得補償の保険

従業員が業務外の日常生活でケガをしたり、私病で会社を休業した場合には健康保険の傷病手当金の給付を受けることが出来ます。また、会社の業務が原因でケガや病気になった場合は労災から支給を受けることが出来ます。しかしうつ病や体調不良等で休業した場合に原因が業務によるものなのか、日常生活によるものなのか、判断は難しく労災申請をしても労基署の判断が下るまでわかりません。今回は、事例をもとに精神障害の労災申請のポイントと傷病手当金や労災給付の上乗せとなる所得補償保険について触れていきたいと思います。

【目次】

1.職場で激しく注意されうつ病に

2.労災上乗せ保険の所得補償特約の活用

3.今回のまとめ

 

職場で注意されうつ病に

災害の事例

AさんはB社会福祉法人(90人規模)の経理・会計部署で課長として勤務していた。Aさんは強度の便秘となりそれが原因で不眠症となった。Aさんは自宅付近の内科と心療内科併設クリニックに通院し1カ月の便秘治療後、「うつ病」の診断を受け休職した。休職の間、健康保険から傷病手当金を1年ほど受給した。体調が良くなるとAさんはB社会福祉法人に職場復帰した。職場復帰3日目の午後に体調が悪くなり、施設長に午後から年次有給休暇を申請して帰宅した。次の日、体調も良くなり通常始業時刻に出社したところ、C事務長から「休むのであれば事前に言わないといけない、自分に一言話して帰るべきだ」と激しい口調で注意を受けた。Aさんは施設長に年次有給休暇の申請を提出したと反論した。Aさんは職場復帰5日後から休んだ。後日、B社会福祉法人宛にクリニックから1カ月の療養を要するうつ病の診断書が届いた。Aさんは休職後職場に復帰したが、短期間でまたうつ病と診断を受け、さらに治療を要することになった。Aさんは所轄の労働基準監督署長に職場復帰後のパワーハラスメントが原因によるものだとして労災認定を申し立てた。

判断

労基署が精神障害の労災認定のための要件を踏まえて、調査した結果、心的負荷が「強」とはならないと判断。また職務復帰から一カ月以内ということもあり業務外となった。

解説

精神障害の労災認定のための要件のポイントは3つあります。

  • 認定基準となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個別要因に発病したことが認められない事

心理的負荷の強度は、労働者がその出来事を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めたかという観点から評価します。また、発生前の6か月間に心理的負荷が「強」と判断される出来事や、「弱」や「中」の出来事が複数回にわたり発生している場合には労災認定が下りる可能性があります。

心理的負荷が「強」の事例

・上司等から治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

・上司等から暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

・上司等から精神的攻撃が執拗に行われた場合

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性が無い又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

今回のAさんが発症したうつ病が労災認定されるかどうかだが、職場復帰前の「うつ病」との診断についてパワーハラスメントは関係なく、強度の便秘による不眠症のせいで発症しています。復帰後は上司との年次有給休暇の取得申請の行き違いで、関係がギクシャクしたことが要因となっていますが、具体的出来事が心理的負荷の「強」にならないと労基署が判断しました。

労災上乗せ保険の所得補償特約の活用

所得補償の保険は、労働者が病気やケガで働けなくなった時に保険金を受け取ることができる商品です。労災給付の上乗せや傷病手当金の上乗せ補償として、企業が福利厚生の一つとして導入するケースが増えてきています。また、上記のうつ病で休業したケースなどでも労災認定の有無に関わらず、保険金の給付が出来る商品もありますので従業員との無用なトラブルを回避できる可能性があります。傷病手当金や労災の給付では、従業員さんの実際の給料の60%~80%の給付になりますので、従業員さんが生活に不安を感じる可能性があり十分に休養できないケースもありますが、所得補償を上乗せで給付することにより不安の解消にも繋がります。

売上高や従業員の給与の総額等で保険料が決まります

保険料は、会社の売上高と業種から算出する場合と従業員の給料の総額をお聞きして算出する方法があります。また、補償の金額や補償期間、免責期間(保険金がお支払いできない期間、最低30日以上で設定)の内容などで保険料が変わりますので内容を確認の上、導入する必要があります。

今回のまとめ

パワーハラスメントを始めとするハラスメントの問題、長時間労働の問題、さらには人手不足等の課題など会社経営に関わる問題は年々複雑化しているように感じます。時代に合わせて損害保険も進化しているので、会社の状況にあった保険に加入するなど定期的に保険の見直しを行う必要があると思います。また弊社としても、損害保険を通じて少しでも会社経営のお役に立てればと思っております。

 

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