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労働者私傷病報告 原則電子申請義務化へ

労働者私傷病報告 原則電子申請義務化へ

厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は2023年5月、労働災害統計の基盤となる労働者死傷病報告等について、電子申請を原則義務化することとしました。このほか、労働基準監督署に提出する定期健康診断結果報告書や、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書なども電子申請を原則義務化する予定です。今後申請の電子化がすすむとどのようなことが考えられるでしょうか。

【目次】

1.負担軽減や適正化を促進

2. 電子申請の具体的運用とは

3. 電子申請メリット・デメリット

4.今回のまとめ

 

負担軽減や適正化を促進

厚生労働書は、労働者死傷病報告の電子申請を原則義務化するとしましたが、その目的は、報告者(事業者)の負担軽減や報告内容の適正化、統計処理の効率化などをより一層促進することが目的です。私傷病報告内容についても、詳細な業種、職種別の集計、災害発生状況や要因などの的確な把握を容易にするため、コード入力方式への変更と記載欄の分割を行う予定です。じん肺健康管理実施状況報告や、定期健康診断成果報告書などについても原則電子申請となります。

電子申請の具体的運用とは

事業者の負担軽減、報告内容の適正化のために原則電子申請が義務化される予定ですが、具体的にはどのような運用になるのでしょうか。

【スマートフォンなどからでも電子申請可に】

「労働安全衛生法関係の届け出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」のシステム改修を行い、ポータルサイト「e-Gov」と連携する予定です。また、パソコン、スマートフォンなどを所持していない事業者向けに、労働基準監督署に設置しているタブレットからも電子申請ができる体制を整備するとのことです。電子申請が困難な場合の紙媒体での報告に関しても経過措置として規定する考えです。

【私傷病報告内容の改正】

詳細な業種や職種別の集計、災害発生状況や要因などの的確な把握を容易にするため、コード入力方式への変更に加え、災害発生状況および原因の欄を分割します。また事業の種類欄を日本標準産業分類コード4桁で入力できるよう修正するほか、職業欄を日本標準分類コード3桁で入力できるよう修正するとしています。

【報告内容の漏れがないよう工夫】

災害発生状況及び原因の欄は、報告者が漏れなく報告できるよう以下のことを明確に記載できるように欄が設けられています。

「どのような場所で」
「どのような作業をしている時に」
「どのような物、(化学物質による被災の場合、化学物質の名称を記載すること)」
「どのような不安全な又は有害な状態があって(例えば保護具をきちんと着用していなかったこと等を具体的に記載すること)」
「結果としてどのような災害が発生したのか」

以上の5つの記載に沿って詳しく入力できるように記載欄が設けられています。

【休業4日未満の災害の報告に関しても電子申請義務化へ】

休業4日未満の災害の報告に関しても、電子申請の原則義務化に伴い、活用を後押しする狙いから改正が行われます。これまで明確に記入欄が設けられていなかった「労働保険番号」「被災者の経験期間」「国籍・在留の資格」「親事業場等の名称」「災害発生場所の住所」などの事項についても報告事項に加えます。なお、死傷病報告と同じく電子申請が原則義務化される予定の様式は以下のとおりです。

  • じん肺健康管理実施状況報告
  • 統括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
  • 定期健康診断結果報告書
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書
  • 有機溶剤等健康診断結果報告書

厚生労働省は、これらの電子申請義務化施行日を2025年1月1日と定める予定です。

電子申請のメリット・デメリット

電子申請にもメリット、デメリットがあります。

【メリット】

①申請にかかる時間や交通費などのコストを削減できる

②紙などの資源の節約

③書類の紛失の防止、セキュリティの向上

【デメリット】

①利用環境の整備が必要で、場合によっては初期投資が必要になることも

②申請後の記載内容の修正が困難であること

電子申請は、手続きにかかる時間やコストを削減することができるため、行政機関にとっても利便性が高く、今後ますます電子申請への流れは進んでいくものと思われます。書類の提出先が遠方であったりする場合、会社や自宅からできる電子申請は利用者にとってもメリットが大きいでしょう。しかし紙媒体を中心に手続きを行ってきた企業においては、慣れるまではしばらく困難があるかもしれません。

今回のまとめ

今後企業経営において、労務関連だけでなく、様々な手続きが電子化されていくものと思われます。これを機会に企業内のIT化、DX化を図る企業様も多くいらっしゃるでしょう。電子申請や業務のDX化は仕事の効率化につながりますが、きちんと準備をしてから始めないと、行政機関や顧客からの信用を失うような事故がおきることもあります。金銭的な損害だけでなく、企業の存続にも影響することから徹底したリスクマネジメントが必要です。従業員のITリテラシー教育や社内規則の整備を行うと共に、万が一に備えて必要に応じた補償に加入しておきましょう。社内をデジタル化する際に必要な補償などについて知りたい方はぜひお近くの代理店などでご相談してみてください。

 

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