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アスベスト含有建物の解体工事が増加

アスベスト含有建物の解体工事が増加

新聞やニュースで最近はあまり話題に上がらなくなったアスベストですが、実は今、国や地方自治体や建設業界を中心に環境問題として取り上げられています。アスベストが大量に輸入された1970年代から1990年代に建てられた建物の老朽化に伴い2028年頃にかけてアスベスト含有建物の解体件数がピークを迎えるのです。解体に伴いアスベスト飛散事故件数が増加した影響で2020年以降、大気汚染防止法が厳格化しています。今回は、解体時の取り扱いに注意が必要なアスベストについて触れていきたいと思います。

【目次】

1.そもそもアスベストとは?

2.アスベスト訴訟の事例

3.今回のまとめ

 

そもそもアスベストとは!?

天然にできた鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれます。種類は蛇文石(ジャモンセキ)族と角閃石(カクセンセキ)族に大別され6種類あります。日本で使用されているほとんどすべての石綿製品の原料は、蛇文石族のクリソタイルになり、世界でも使用された石綿の9割以上を占めています。石綿は極めて細かい繊維で熱、摩擦、酸やアルカリにも強く丈夫で変化しにくいという特性があるため、建築物に使用されてきました。

アスベスト(石綿)と健康問題

アスベストが原因となる主な病気には、中皮腫、肺がん(原発性肺がん)石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などがあります。石綿のばく露が原因でおこり、石綿の蓄積ばく露量が多いほど発症率が高くなりますが、家庭内ばく露や近隣ばく露など低濃度でも発症する危険があります。また、潜伏期間も病気により違いはありますが、15年~50年と長く、すぐに症状がでないため問題を複雑化させています。

アスベスト使用用途

アスベストは、壁・天井・鉄骨の防火耐火・吸引性等の確保としてや、耐火間仕切り、床材、外装材、屋根材、設備配管など様々な用途で使用されてきました。発塵性(危険度)は吹き付け石綿(レベル1)がもっとも危険で、煙突やボイラーに使用される石綿含有断熱材等(レベル2)、スレート波板や石膏ボード(レベル3)となっております。

アスベスト訴訟の事例

溶接粉じん吸引で安全配慮義務違反(横浜地裁横須賀支部令和3年8月30日判決)

・事件の概要

被告AさんはY社の工場で昭和36年9月から昭和54年12月まで長年にわたり製缶構造物の電気溶接作業を行ってきた。電気溶接作業の際には保温材として布状の石綿を使用し、石綿の含まれた防護服を着ることがあり、その結果、石綿粉塵にばく露されてきた。Aさんは平成11年3月にY社を退職したが平成27年12月に胸膜中皮腫に罹患していることが判明した。胸膜中皮腫に罹患したのは、長年の作業が原因だとしてY社に対して安全配慮義務違反による損害として2500万円を請求した。

 ・判決の趣旨

①石綿のばく露

昭和36年9月から昭和54年12月までの期間において石綿粉塵が発生する環境下において勤務していたことが認められる。Y社より石綿対策用のマスクが配布されるようになったのは昭和60年代になってからなので、Aさんは石綿粉塵にばく露する機会があったといえる。

②石綿ばく露と中皮腫の発症

中皮腫の原因のほとんどが石綿にばく露したことによるものとされる。低濃度のばく露であっても発症し1年以上の職業による粉塵のばく露は中皮腫発症の重要な要因とされ、発症までの潜伏期間の平均は40年程度であること。また、業務以外で石綿にばく露する機会があったとは考えられないため業務に原因があったと考えられる。

③Y社の予見可能性

海外においては昭和5年(1930年)には、石綿による石綿肺に関する知見が示され、昭和30年頃には石綿の肺がん性に関する知見が確立されていた。我国においても昭和35年(1960年)には石綿も規制対象とするじん肺法が制定されたことから石綿が石綿肺などの危険性を有するとの知見は確立していたと考えられる。Y社は昭和35年には溶接作業に従事する者が石綿粉塵にばく露して、生命、身体に重大な障害が生じる可能性があることを十分に認識できたはずであり、認識し対策を取るべきであった。

Y社の安全配慮義務違反の内容

局所排気装置によって石綿粉塵を適切に破棄し労働者がこれを吸い込まないようにする義務

・適切な呼吸用保護具を使用させ、労働者を石綿粉塵から守る義務

・労働者の安全教育を行い石綿粉塵から適切に身を守れるように指導する義務

 

判決2200万円の支払い

本事件では、Aさんは労災保険の支給を受けていることもあって、精神的苦痛に対する慰謝料請求として2500万円の請求をしているが2200万円の判決を下した。逸失利益の積算も可能であったと思われるが、Aさんは中皮腫発症時にすでに70歳を超えており将来の逸失利益が多額にはならないと考え、慰謝料のみに絞った請求となった。

今回のまとめ

アスベストの健康被害に対しては、業務によりばく露の可能性がある従業員や作業員は政府労災、その家族は石綿健康被害救済制度などで補償されますが民間の保険では免責(補償しない)としているケースがほとんどです。また、解体作業中に石綿が飛散した場合は、通常、賠償損害保険では石綿に関する免責としていますが、一部の保険会社では除去費用等を補償する特約が発売されます。気になる方は是非、お問い合わせください。

 

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