お知らせ・コラム
「介護と仕事の両立支援」ビジネスケアラーの問題を考える
超長寿社会と言われる昨今、介護の問題は介護する方にもされる方にも避けては通れない課題です。経済産業省は、企業側が介護と仕事の両立支援を促すため、管理職研修の進め方などを盛り込んだ企業向けのガイドラインを作成する方針です。両立支援への取り組みが市場評価につながるように、健康経営等に関する認定制度の評価項目にも追加する考えです。現在、介護離職者が毎年10万人程度発生していることを指摘し、2030年には仕事をしながら、家族の介護に従事する「ビジネスケアラー」が320万人ほどになるとの試算も出ています。
【目次】
1.ビジネスケアラーが抱える問題
2.「まだ大丈夫」はNG。早期対策が自分を救う。
3.企業としてできること
4.今回のまとめ
ビジネスケアラーが抱える問題
働きながら介護をする「ビジネスケアラー」が増加しています。介護を迫られているのは、40歳代以上の働き盛りで責任ある仕事を任されている人が多く、そうした人達が介護のために仕事の効率が下がったり、離職したりすると、企業としての損失も大きくなります。日本は世界でもトップの少子高齢化社会であり、2025年には、約800万人いる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、国民の6人に1人が後期高齢者になる超高齢社会、「2025年問題」がやってきます。ある企業の調べによると、従業員数500人以上の大手企業で、すでに介護をしている人と、いつ始まってもおかしくない介護予備軍を合わせた人は、社員の24%にも達していたとのことです。大手企業では介護休暇や介護休業などの制度を用意しているにもかかわらず、介護支援制度について「知っているが利用したことがない」という人が77%以上、「知らない」を合わせると96%が制度を利用していないという調査結果が出ました。企業側から見ると、制度は用意した→あまり利用されていないから対象者が少ない→介護関係の制度充実は後回しでいい→ということになりかねません。なぜ介護に関する制度はあまり利用されていないのでしょうか。
介護をしている働き盛りの世代は「仕事に責任を持っているから休めない」「休業すると収入が落ちるし、休業期間が終わっても同じ部署や仕事に戻れないかもしれない」という意識をもつ人も多くいます。今の仕事を続けたいのに、上司に知られると、負担の少ない部署や仕事に異動させられる可能性もあるので、介護をしていることを会社や同僚に知られて良いことはない、と思っている人が多いようです。
「まだ大丈夫」はNG。早期対策が自分を救う
介護という現実が目前に迫っていても「何も準備していない」という人も多いかと思います。親が認知症になっているかもしれないと感じても、そうじゃないと思いたい、すぐに病院に連れていくほどではないと判断してしまう。介護は災害と同じで、いつ来ても良いように普段から準備をしておく必要があります。介護についての情報をほとんど知らない人は、公的な制度等を利用せず自分や家族だけで対応しようとした結果、心身のバランスを崩してしまうこともあります。それでは仕事の効率も下がり、企業側にとってもマイナスです。両立が困難になって離職するとさらに損失は大きくなります。そうならないためにも、企業としても、従業員が介護と仕事を両立できるような対策に、取り組む必要があります
企業としてできること
【介護から目をそらさせない。社員全員にリスクチェック】
企業側でも従業員の介護問題に真剣に取組むところが出ています。東京の大手食品グループは2020年10月から3か年計画で本格的な介護支援策に乗り出しました。介護は誰もが自分の身に迫っていることであるため、いざ介護しなくてはいけなくなっても、仕事と両立できる環境を作ることが、会社側にも求められているという方針のもと、この計画が実行されました。同社でも、「介護の支援制度はあるのに、利用している社員は非常に少ない」という状態だったといいます。制度がありながら使われていないのはなぜなのか、ということから検討を始め、制度を知らないのか、知っていてもあえて使わないのか、介護制度についての課題を探るため、アンケートなどを実施した結果、「自分は全く準備できていなかった」「介護から目をそらしていた」という声が圧倒的でした。それを踏まえて2020年10月から3か年計画をスタートさせました。1年目のテーマは「知る」。2年目のテーマは「行動」3年目の今年は「組織浸透」をテーマとして「介護を個人的なことと捉えるのではなく、会社として、チーム、組織の問題であり、だからこそ、仕事との両立にそれぞれが向き合うという意識を社員が共有すること」を目的とした活動を行っています。
今回のまとめ
国も、介護を「個人の問題」として捉えず「働く人がいる場合、その職場も一緒になって考える、また制度を整える」方向でのガイドラインを策定していく方向です。介護をしなければいけない立場になった従業員は、誰にも言えず、1人で抱え込んだ結果、自分自身が精神的にも肉体的にも追い詰められることが少なくありません。企業経営者や管理職の方々は、「働き方についていつでも相談してほしい」と社内に周知し、介護する本人のメンタルや身体への配慮、ケガや心身の病気にも対応できる福利厚生制度を整えておくことが重要なのではないでしょうか。
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