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職場のパワハラと企業責任について

職場のパワハラと企業責任について

パワーハラスメント防止対策は進んでいますか?2022年4月1日よりすべての企業が労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」の対象となります。パワハラの被害を受けた従業員から、パワハラ行為者と法人が訴えられる事例も発生しています。今回は、同僚からのいじめで精神的に追い込まれて休職したケースをもとに精神障害の業務災害の認定要件などについて触れていきたいと思います。

【目次】

1.同僚からいじめを受けPTSDに!

2.パワハラ行為者と法人が訴えられた事例

3.今回のまとめ

 

同僚からいじめを受けPTSDに!

☆災害のあらまし

幼稚園教諭Aが、副主任に昇格後、困難な人間関係に置かれているなかで体調不良を訴え、副主任に就任から1年後に「うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)」と診断され休業した。

☆判断

幼稚園教諭Aの発病は、職場での長期にわたる一連の出来事が原因として業務上による災害として判断された。

☆解説

精神障害の業務災害の認定要件は通達(心理的負荷による精神障害の認定基準について)により次のとおりとされている。

1.対象疾病を発病していること

2.対象疾病の発病前おおむね6か月間に業務による心理的負荷が認められること

3.業務以外の心理的負荷および個体側要因により対象疾病を発病したとは認められない事

今回のケースでは、1と3の要件は満たしており2に該当するかが問題となっている。

心理的負荷の強度は「強」「中」「弱」の3段階で評価

「強」にあたる出来事がある場合は2の条件を満たすものとされている。また、「中」にあたる出来事が複数存在する場合は出来事の数、内容などから全体の評価をし、「強」にあたると判断される場合は2を満たすものとされている。

心理的負荷を与えた12の出来事

今回のケースはAさんがより経験年数が長い同僚より早く副主任に昇格したこと、教頭と教務主任が対立しておりその板挟みになったこと、当初仲が良かった同僚のB先生との関係が悪化したこと等、Aさんに心理的負荷を与えた12個の出来事が発生している。

12個のうち「中」に該当した4つの出来事

このうち、心理的負荷が「強」に該当することはできないが、「中」に該当する出来事が次のとおり4つある。

1.B先生がAへの嫌がらせの意図で研修会への不参加の意思を示したことにより研修会の運営に支障をきたしたこと

2.B先生とAさんが言い争いになり、Aさんの人格を否定するような発言があったこと

3.B先生とAさんが共同担任になったこと

4.Aさんが教務主任から給茶機からお茶が漏れているにもかかわらず対処しなかったことについて厳しい指導を受けたこと

発病前6か月以内の出来事が対象

いずれの出来事も心理的負荷の強度は「中」または「弱」であるが、「中」に該当する出来事が複数あることから、出来事の数、内容などを勘案することになる。厚生労働省の通達では、「いじめやセクシャルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6カ月以内の期間にも継続しているときは、開始時からすべての行為を評価の対象とすること」とされている。Aさんに心理的負荷を与えた12個の出来事は、人間関係の中で生じてくるお互いに対する不信感や嫌悪感が背後にあると思われることが多く、どこの職場でも多かれ少なかれ発生してしまう可能性があります。強烈ないじめや明らかなパワハラ、セクハラでなくても、半年以上にわたる心理的負荷で精神障害の労災が認定された事案となります。今回のケースのように職場において人間関係のちょっとした問題を放置しておくと大きな問題に発展してしまう危険性があります。

パワハラ行為者と法人が訴えられた事例

<概要>

40代従業員が、上司等から名誉感情を不当に害する言葉で退職勧奨をされたり、能力と経験からかけ離れた除草作業などを命じられ適応障害を発症し休業。その後、休職期間満了で退職となった。元社員は、パワハラ行為者と法人に対して慰謝料と治療費等の損害賠償請求とパワハラ行為を受けたことにより適応障害に罹患し休職するに至ったものであり休職期間満了による退職は無効だとして訴訟を起こした。

<裁判所の判断>

・パワハラ行為による精神的苦痛は著しいとして、慰謝料500万円、その他、治療費、弁護士費用等74万円の支払いを命じた。

・長期間に渡る執拗なパワハラ行為により適応障害を発症したとし、労働基準法19条の定める「業務上の疾病」にあたり、休職期間満了による退職は無効とし休業期間中および退職後の給料および期末手当等の約1600万円の支払いを命じた。

(パワハラ行為者と法人)  慰謝料500万

(法人)          未払い賃金等約1600万円

             合計約2150万円

パワハラの行為者のみならず、法人にも賠償金の支払い命令がでた事案となります。パワーハラスメントの防止対策を怠ったことによる慰謝料に加え、退職の無効による未払い賃金の支払いが多額の支払い命令の要因となりました。

今回のまとめ

パワーハラスメントの防止対策の法整備がすすみ、国をあげてパワハラ・セクハラを始めとする各種ハラスメントの撲滅を掲げています。企業内で発生したハラスメントやいじめ等の雇用トラブルで企業側に責任が及ぶケースも増加すると考えられます。企業にとって働きやすい職場環境の構築はもちろんのことですが、雇用トラブルの保険や使用者賠償保険などに加入しておくことで万一の際に企業防衛に繋がると思います。

 

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