お知らせ・コラム
新型コロナウイルス罹患後症状の労災補償とは
厚生労働省は、新型コロナウイルスの罹患後症状(後遺症)の労災の取扱いに関する通達を発出しています。4月に罹患後症状に関する診療の手引きがとりまとめられたのを受け、取扱いの明確化を図ったものです。その手引きのなかでは罹患後症状の代表的な例として、疲労感・倦怠感や咳、息切れ、記憶障害、集中力低下、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害などが挙げられています。今回はそのような新型コロナと労災の関係について取り上げていきます。
【目次】
1.新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について
2.企業においての損害保険などの備え
3.今回のまとめ
新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について
新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」と表記)の労災補償の取扱いについては、令和2年4月28日付で発行されている「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施されているところであり、本感染症の罹患後症状についても労災保険給付の対象としてきたところですが、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(第1版)」がとりまとめられたことを踏まえて、本感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いを明確にしたうえで、今後より一層適切な業務運営の徹底を図ることとするとされています。下記のような対応が求められています。
1.基本的な考え方とは
本感染症については、感染性が消失した後であっても、呼吸器や循環器、神経、精神等に係る症状がみられる場合があります。新型コロナウイルス感染後のこれらの症状については、いまだ不明な点も多く、国内における定義は決まっていませんが、WHOの定義の「postCOVID-19condition」を「COVID-19後の症状」と訳したうえで、診療の手引きでは「罹患後症状」とされています。これらの罹患後症状については、業務により新型コロナウイルスに感染した後の症状であり療養等が必要と認められる場合は、労災保険給付の対象となるケースがあります。
2.具体的な取扱いとは
①療養補償給付
医師により療養が必要と認められる以下の場合については、本感染症の罹患後症状として、療養補償給付の対象となる。
ア 診療の手引きに記載されている症状に対する療養(感染後ある程度期間を経過してから出現した症状も含む)
イ 上記アの症状以外で本感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)も対する療養
ウ 本感染症の合併症と認められる傷病に対する療養
②休業補償給付
罹患後症状により、休業の必要性が医師により認められる場合は、休業補償給付の対象となる。なお、症状の程度は変動し、数か月以上続く症状や症状消失後に再度出現することもあり、職場復帰の時期や就労時間等の調整が必要となる場合もあることに留意する
③障害補償給付
診療の手引きによれば、本感染症の罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込まれることから、リハビリテーションを含め、対症療法や経過観察での療養が必要な場合には、上記のとおり療養補償給付等の対象となるが、十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状固定と判断され後遺障害が残存する場合は、療養補償給付等は終了し、障害補償給付の対象となる。
3.相談等における対応
本感染症に係る罹患後症状の労災保険給付に関する相談等があった場合には、上記の取扱等の懇切丁寧な説明に努めることとし、罹患後症状がいまだ不明な点が多いこと等を理由として、保険給付の対象とならないと誤解されるような対応は行わないよう徹底すること。なお、罹患後症状については、「いわゆる”後遺症”」として「後遺症」との用語を用いられる場合も少なくないが、通常は障害補償給付における後遺障害の状態ではなく、療養が必要な状態を意味する場合が多いことから、説明等を行う際に誤解を生じさせることのないよう留意すること。
4.周知
本感染症それ自体はもとより、症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も労災保険給付の対象となることについて、令和2年11月20日付け基補発1120第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」により指示したところのほか、あらゆる機会をとらえて、医療機関や被災労働者の方などに周知すること。
5.その他
上記2の③により障害補償給付を行う際には、当分の間、事前に当課業務係に協議すること
以上です。
また、「診療の手引き」より「代表的な罹患後症状」とは、
・疲労感・倦怠感
・関節痛
・筋肉痛
・咳
・喀痰
・息切れ
・胸痛
・脱毛
・記憶障害
・集中力低下
・不眠
・頭痛
・抑うつ
・嗅覚障害
・味覚障害
・動悸
・下痢
・腹痛
・睡眠障害
・筋力低下
以上です。
企業においての損害保険などの備え
企業においては、最低限の政府労災で賄える責任部分とそれ以外の福利厚生部分も視野にいれた民間の保険会社による労災の上乗せ補償で、の仕事中のおケガだけでなく業務上疾病またはプライベートのお病気まで対応できるものを備えるということも視野に入れる必要がありそうです。費用対効果を考えつつ企業防衛に係る保険と福利厚生に係る保険の両方をご準備出来ると良いですね。
今回のまとめ
いまだ罹患されるかたが非常に増えている新型コロナへの対応は政府も通達を発出して対応を呼びかけています。民間の保険による備えは企業様の自助努力とはなりますが、社員のモチベーションにつながる福利厚生の構築もぜひ考えてまいりましょう。
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