お知らせ・コラム
サービス業で過重労働による脳内出血で労災訴訟
近年では、政府の施策でいわゆるブラック企業の撲滅を掲げて長時間労働を規制する動きが強まっております。その中で労災の認定基準においても業務が原因での脳梗塞や心筋梗塞などいわゆる病気労災といわれる業務上疾病の労災認定が増加傾向にあります。
また、深刻な労災事故においては政府の労災補償ではだけでは補償が不十分ということもあり、被災者が会社に対して使用者賠償責任で損害賠償請求を行うケースも散見されます。
未だに長時間労働やサービス残業に関して意識の低い企業もありますが、今回は実際に発生した事例の中から過重労働が原因で労務トラブルに発展した事例についてご紹介していきたいと思います。(AIG損害保険株式会社 事故例集を参照)
【目次】
1.長時間労働による業務上疾病の事例
2.解決と保険の活用
3.今回のまとめ
長時間労働による業務上疾病の事例
☆事故概要
サービス業で発生した過重労働が原因で2億円もの損害賠償請求を受け、解決金1憶5000万円を支払い解決した事案になります。従業員A(40歳)が、勤務先オフィス内において脳内出血で倒れました。約2年間治療しましたが、高次脳機能障害と右半身の機能障害が残りました。長時間労働による業務上疾病として、労働災害上の後遺障害2級に認定されました。
☆事故内容
・従業員Aは、入院7カ月、通院1年半にわたって治療を受けましたが、脳挫傷による高次脳機能障害と右半身の機能障害が後遺障害として残りました。
・従業員Aは、早期出勤・無休憩・深夜残業・休日出勤等による長時間労働や過大なノルマにより過重労働に陥っていたとして発病から3年後、ユニオンを通じて会社に対して2憶円の損害賠償を請求しました。
・従業員Aの法定外労働時間は、事故前半年の月平均は80時間、事故前1カ月は110時間という状態でした。
☆発生原因と未然防止策
発生原因①早朝出勤・休憩未取得・深夜残業・休日出勤等の長時間労働 |
未然防止策
・過重労働対策のためには、労働時間の把握が重要です。勤務の不規則性、出張の有無、交代勤務や深夜勤務の状況についても把握するとともに労働時間そのものを縮減するための対応が求められています。
・労働時間、休日、時間外及び休日の労働に関わる労働基準法第32条、35条、36条、37条に違反した場合は6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金に処される場合があります。
発生原因②過大なノルマによる過重労働 |
・事業者が「過労死や過重労働における健康障害を生じさせない」という方針を決定し、これを表明することが重要です。
解決と保険の活用
☆解決までの経緯
①従業員Aは発病から3年後、過重労働が原因としてユニオンに協力を要請 |
※ポイント①ユニオンへの協力要請
②会社は従業員Aと労働基準監督署への対応に備え、自社の顧問弁護士に相談 |
③会社は風評を気にするあまり、積極的な従業員Aへの対応を回避 |
※ポイント②風評被害の懸念
④会社はユニオン同席の従業員Aと交渉し、労災申請に応じることになる |
⑤労働基準監督署は、業務災害であったとして後遺障害2級を認定 |
⑥訴訟にならないように交渉した結果、解決金1憶5000万円で示談 |
※ポイント③保険金額の不足
☆解決までの対応ポイント
ポイント①ユニオンへの協力要請
・従業員が外部の労働組合に協力を要請して会社と話し合いを行うなど、団体交渉を申し込まれてしまった場合には会社は無視することはできません。
・従業員Aが脳内出血の治療から復帰した後、会社は従業員Aを週2回程度の出社へシフト変更し、給料の減少分を補填していましたが、限度があるとして会社は2年後にその補填を終了させました。
・その事を契機に従業員Aは長時間労働や過大なノルマにより過重労働に陥っていたとして、ユニオンに協力を求めこの疾病は業務災害であったと会社に損害賠償を請求しました。
・会社は、従業員Aの疾病が業務に起因するとは認めたくなかったようです。
ポイント②風評被害の懸念
・ユニオンにより団体交渉申込書が送付された後、会社は従業員Aと労働基準監督署への対応に備えて、同社の顧問弁護士に相談していました。しかし。風評を気にするあまり、従業員Aに対して積極的な行動をとらず、また保険会社への報告も慎重になっていました。
・従業員Aからは発病時に労災申請しなかったこと等について指摘があり、後日、労働基準監督署の調査が入りました。
・訴訟に至らずに決着できたことで風評被害を免れましたが交渉においては非常に苦しい立場に立たされました。
ポイント③保険金額の不足
・訴訟にならないように交渉した結果、解決金は1憶5000万円と高額になってしまいました。
・この会社の使用者賠償補償保険金額は1億円でした。昨今の実情に照らすと、使用者賠償補償の保険金額は1憶円では不足と言わざるを得ませんでした。
・後遺障害補償保険金額が1000万円支払われていましたので、会社は解決金のうち4000万円を自社で負担、また争訟費用も4000万円かかったため、合計約8000万円が自己負担となりました。
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