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雇用トラブルでの保険使用事例(運送業)

雇用トラブルでの保険使用事例(運送業)

今回は、保険会社から提供された実際の事故事例から学ぶ効果的な事故対応と未然防止策のご紹介になります。運送業で発生した雇用トラブルの事案です。会社が仕事の態度に問題のあった従業員に対して、懲戒処分・退職処分を行った結果、1130万円の損害賠償請求をされ、労働審判の結果350万円も支払い命令がでたという内容です。

近年では業種を問わず従業員とのトラブルが増加しており、配置転換や謹慎処分をきっかけとして雇用トラブルに発展するケースも多く、発生原因と未然防止策についても考えていきましょう。

【目次】

1.取引先の荷物を頻繁に損傷した従業員とのトラブル

2.,発生原因と未然防止策

3.今回のまとめ

 

取引先の荷物を頻繁に損傷した従業員とのトラブル

事故概要

重要な大口取引先の貨物を度々損傷し、担当変更まで求められた従業員に対して、これまでの勤務態度なども考慮して非現場部門への移動を命じましたがこの従業員はこれを拒否しました。現場にポジションがないため、会社は退職勧告を行い、合意の上で退職しました。

事故内容

・この従業員は、フォークリフトの主任オペレーターで最重要の大口取引先を担当していましたがある時その取引先の貨物を損傷してしまいました

・会社はこの取引先に謝罪しましたが、「以前から度々同じようなミスがあった」と指摘され担当変更を要求されました

・重要取引先との関係悪化を重く見た会社は、従業員に対して2週間の謹慎処分を命じましたがこの従業員は猛反発し、上司ともみ合いになりました。

・これまでも現場における勤務態度に問題があり、数々の懲戒処分歴があることを考慮し、会社は非現場部門へ移動を命じましたが、従業員はこれに応じませんでした。

・現場にポジションがなく、移動にも応じない従業員に対して会社はやむなく退職を勧告し話し合いの結果、合意の上で退職しました。

解決までの経緯

①3カ月後に元従業員の弁護士から会社に対して1130万円の損害賠償請求

 

②請求項目は謹慎処分と退職強要に対する慰謝料、退職無効と現場への復帰、退職から解決までのバックペイ、過去一年分の未払い残業代

※ポイント① パックペイとは

 

③弁護士同士の話し合いは不調に終わり、元従業員側が労働審判を申し立て

※ポイント② 労働審判

 

④裁判官から和解勧告。解雇そのものに違法性がないとは言えず、会社が30万~400万円を支払い、会社には復帰しないという条件

※ポイント③ 雇用慣行賠償保険の補償対象

 

⑤未払残業代・退職から和解までのバックペイ・慰謝料、計350万円で和解成立

 

ポイント① バックペイとは

解雇が不当と判断された場合、解雇時から解決時(和解・解決など)までに労働者に支払われるべきであった賃金を「さかのぼって支払う」という意味です。本件のように、会社の退職勧告に合意した退職であっても、後で争った結果から不当解雇と判断された場合、解雇日から示談・和解に至る日までの給与相当額の支払い義務が生じます。

ポイント② 労働審判

労働紛争を原則3回以内の期日で迅速・適正・実務的な解決を目的として裁判所の制度で審理期間は平均約2カ月半とされています。

ポイント③雇用慣行保険の対象

和解金額 350万円の内訳

未払い残業代120万円(保険対象外)、バックペイ(月給30万×6カ月)180万円(保険対象)、慰謝料50万(保険対象)、弁護士費用45万円(保険対象)

注意して頂きたいのは未払い残業代に関しては保険の対象外です。弁護士費用は保険の対象となります。

発生原因と未然防止策

問題点①

懲戒処分について

・今回の貨物損傷や取引先から指摘された以前の同様なミスについて従業員に確認せず(弁明の機会を与えず)2週間の謹慎処分を命じたこと

防止策

就業規則に規定されていない懲戒処分を科すことはできません。従業員に事実経過や顛末を報告させ、当該行為の性質や態様が就業規則に照らして、懲戒事由や過去の処分と比較して均衡がとれているのか合理性があるのかを冷静に判断する必要があります。

問題点②

配置転換について

・配置転換の必要性と正当性を従業員に理解させる十分な説明が行われなかったこと

防止策

就業規則に基づき配置転換命令を出すことは可能ですが、業務上の必要性がある、従業員に著しい不利益(賃金・勤務場所・私生活への影響)がないことが必要です。しかし従業員の理解を得る対応(人事異動命令を拒否する正当で配慮すべき理由の有無の確認)も、トラブル防止の観点から重要です。

問題点③

退職勧奨(退職勧告)について

・退職勧奨による合意退職(従業員が自由な意思で退職届を提出して退職すること)の手続きが不十分で退職強要または普通解雇と捉えたこと

防止策

退職勧奨を行うこと自体は問題ではありません。ただしその方法が多数回にわたり必要以上に長時間行われ、不当な心理的圧力をかけるなどの対応は退職強要、解雇とみなされる可能性があります。

今回のまとめ

ご紹介した事案のように、取引先とトラブルを起こした従業員を配置転換したという会社としては当然の措置をとっただけなのに、様々な原因が重なり雇用トラブルに発展してしまいました。一連の流れの中で従業員が納得してなかったり、退職勧奨と思われる行為などがあると訴えられてしまい負けてしまうこともあります。

近年は、従業員などの労働者の方々が会社を訴えやすい環境が整ってきていますので、雇用慣行保険や使用者賠償保険で備えることも大切です。また同時に就業規則などの見直しなど会社の雇用体制を整えることもますます重要となりそうです。

 

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