お知らせ・コラム
カスタマーハラスメント対策企業マニュアルの整備
顧客などから従業員に対しての暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求と著しい迷惑行為がカスタマーハラスメントとして大きな問題となっております。カスハラを経験している企業は2割に達し、過去3年でもパワハラやセクハラに比べても増加傾向にあるようです。
この度、厚生労働省はカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成し、事業主の基本方針・基本姿勢の明確化と従業員への周知・啓発、従業員のための相談窓口の設置や実際にカスハラが発生した場合の対処法をあらかじめ定めておく必要があるとしています。
今回は、カスタマーハラスメントの対応マニュアルについて触れていきたいと思います。
【目次】
1.対策企業マニュアルの内容
2.カスタマーハラスメントに関する企業の責任
3.今回のまとめ
対策企業マニュアルの内容
☆カスタマーハラスメントの定義
顧客などからのクレーム・言動のうち要求内容の妥当性に照らして、手段や状態が社会通念上不相応なものであって労働者の就業環境が害されるものとしている。
カスハラの行為態様として、時間拘束型、リピート型、暴言型、暴力型、威嚇・脅迫型、権威型、店舗外拘束型、SNSやインターネット上での誹謗中傷型、セクシャルハラスメント型の9つを挙げており、それぞれに対処法を定めることが求められています。
☆カスハラへの対応方針
企業が具体的に取り組むべきカスハラ対策としては、まず事業主の基本方針・基本姿勢を明確化した上で従業員への周知徹底を行い、基本方針まとめた対策マニュアルなどを整備しておく必要があります。
例えば、大きな怒鳴り声をあげたり「馬鹿」といった侮辱的発言、人格の否定や名誉を棄損する発言をする暴言型には、後で事実確認ができるように録音し程度がひどい場合にはその場から退去を求めます。またSNSやインターネット上での誹謗中傷型では、名誉棄損などで投稿者の処罰を望む場合、弁護士や警察への相談を検討する。解決策や削除の求め方が分からない場合には、法務局、違法・有害情報相談センター「誹謗中傷ホットライン」に相談するなどの対処が必要となります。
☆従業員(被害者)のための相談体制の整備
従業員(被害者)の受け取り方によりカスハラの判断基準に違いがでてくる可能性がある為、各社であらかじめカスハラの判断基準を明確にした上で対応方針を統一し、現場と共有しておくことが重要です。
下記のような相談体制のマニュアル整備を行い、カスハラが発生した際の報告・相談から指示・助言をスムーズに行い現場の従業員や責任者だけで対応するのではなく、会社としてカスハラを行う加害者に対応する必要があります。人事や総務部に加えて外部関係機関(弁護士など)と速やかに連携できる体制の構築も重要です。
カスタマーハラスメントに関する企業の責任
企業及び事業主として適切な対応をしていない場合、被害を受けた従業員から責任追及をされてしまう可能性があります。以下の事例は、実際に企業で起きた事例と類似の事例として学校現場で起きた事例になります。(厚生労働省HP参照)
事例① カスハラに対して不適切な対応をとったことで賠償責任が認められた事例
市立小学校の教諭が児童の保護者から理不尽な言動を受けたことに対し、校長が教諭の言動を一方的に非難し、また事実関係を冷静に判断して的確に対応することなく、保護者の勢いに押されその場を穏便に収めるために当該教諭に対して保護者に謝罪するように求めた。
その後、保護者からの教諭に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理監督者である校長がその場しのぎの対応をとったことで、損害賠賞責任が追及された。裁判所は、甲府市及び山梨県は損害賠償責任を負うと判断しました。(甲府地判平成30年11月13日)
事例② 顧客トラブルへの対応を十分行っていたことで賠償責任が認められなかった例
買い物客とトラブルになった小売店の従業員が会社に対し、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を欠いたとして損害賠償請求を求めた。
それに対し、被告会社は誤解に基づく申出や苦情を述べる顧客への対応について、入社テキストを配布して苦情を申し出る顧客への初期対応を指導し、サポートデスクや近隣店舗のマネージャー等に連絡できるにしていた。さらに深夜においても店舗を2名体制にしていたことで店員が接客においてトラブルが生じた場合の相談体制が十分整えられていたとし、被告会社の安全配慮義務違反は否定されました。(東京地判平成30年9月3日)
今回のまとめ
お客様は神様だというのはひと昔前の話で、お客の無理な要求や理不尽な言動に対して一方的に受け入れる必要はないと思います。逆にカスタマーハラスメントと思われる状態を放置したり、その場しのぎの対応を取ってしまうと従業員から安全配慮義務違反で訴えられてしまう可能性があります。雇用トラブルや労災訴訟に対して保険で備える事も重要ですが、これからの時代は従業員の職場環境を整えて、従業員を大切にする会社経営が求められています。
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