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令和時代の雇用トラブルにも保険で備える

令和時代の雇用トラブルにも保険で備える

トランスジェンダーで専門医から性同一性障害の診断を受けている公務員(戸籍上は男性)が女性トイレの使用に関して制限されたとして、職場に対して損害賠賞を求める事案が発生しました。SDGsの中でもトランスジェンダーの方への理解を深めることが求められており、差別や偏見などを無くすことは重要です。企業としても10年前、20年前ではなかなか考えつかないような雇用問題が発生する可能性がありますので、今後の企業の取り組み方にも変化が求められています。

【目次】

1.性自認は女性、トイレ一部使用できず賠償請求

2.性自認のトイレ使用は国民の権利

3.今回のまとめ

 

性自認は女性、トイレ一部使用できず賠償請求

戸籍上の性別が男性で、自らを女性と認識するトランスジェンダーの職員が女性トイレの使用を制限されたため損害賠償を求めた。東京地裁は自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益とした。性同一性障害と診断後、ホルモン投与により女性に性的な危害を加える可能性は低く、外見も踏まえたうえで、使用制限を違法と判断した。

・事案の概要

原告は経済産業省に勤務する国家公務員であり、トランスジェンダー(出生した時に割り当てられた性別と自認している性別とが一致しない状態の者)で専門医からも性同一性障害の診断を受けている。原告は、幼少の頃から自らの身体的性別が男であることに強い違和感を抱いており、平成10年頃から女性ホルモンの投与やカウンセリングを受けていた。

平成20年頃からは、私的な時間は全て女性として過ごすようになってはいたが、性別適合手術までは行っておらず、戸籍上の性別は男である。

平成21年に、原告は上司に対して性同一性障害であることを伝えるとともに、女性として勤務すること、女性用休憩室や女性用トイレの使用を認めることなどを要望した。

しかし経産省は、原告に対し一部の階のトイレの使用を認めなかった。そこで原告は、本件トイレに係る処遇は違法であるなどとして国に対し国家賠償法に基づく損害賠償を求め訴訟を提起した。

判決のポイント

1.性別は社会生活や人間関係における個人の属性の一つとして取り扱われており個人の人格において必要不可欠なものである。個人が真に自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益として国家賠償法上も保護されるべきである。

2.性同一性障害である職員に対して、具体的な事情や社会的な状況を配慮して、規則や慣例も柔軟に変化させ対応していく事が重要である。

3.原告は女性ホルモンの投与により、少なくとも平成22年3月頃までには女性に対して性的な被害を加えるのは客観的にも低い状態にあると判断できる。また、私的な時間や職場において生活習慣を送るにあたって行動様式や振る舞い、外見を含めて女性として認識される度合いが高いものであった。トランスジェンダーの従業員に対して制限なく女性用のトイレの使用を認めた民間企業の事例は少なくとも6件存在し性自認に応じたトイレ施設の利用をめぐる国民の意識や社会の受け止め方には相応の変化が生じている。女性用のトイレの使用を認めても、トイレの構造から性器を露出する事態が生じる事は考えづらいなどトラブルに発展する可能性は低いと判断できる状況であった。

4.したがって庁舎管理権の行使に当たって尽くすべき注意義務を怠ったものとして、国家賠償法上の違法の評価を免れない

性自認のトイレ使用は国民の権利

今回の件では、自認する性別に即した社会生活を送ること自体を重要な法的利益とするとともに、人格的利益と位置付けている点に特徴があります。つまり民間の企業で配慮しなければいけない点として、性別は男性だが、自認する性が女性であり、見た目も女性の従業員に対して女性用のトイレの使用を認めないこと自体が人格権の侵害に当たる可能性があるという事です。

以前も性同一性障害を有するトランスジェンダーの人に対して、自認する性別と異なる処遇をしたことを違法とするものがありましたが、「女性風の服装・化粧をしないように命じられた事案S社事件(東京地裁H14年6月20日)」で多大な精神的苦痛を受けた「会員制のゴルフクラブの入会を拒否された事案(東京高判H27年7月1日)」ことにより人格の根幹部分にかかわる精神的苦痛を受けたなど精神的苦痛を受けたことに対する判例がほとんどでした。精神的苦痛を受けたことにより慰謝料を請求し認められたことはありましたが、今回の件のように自認する性別(今回は女性)に即した社会生活を送ること自体の法的利益性に言及し、認められたことは大きな変化だと思います。

今回のまとめ

トランスジェンダーの方や外国人労働者の方、人種や宗教や価値観が異なる方などが日本社会ではたくさん活躍しています。従来の企業のルールや今までの日本の社会の習慣だけで判断すると、社会生活を送ること自体に不便を感じるとしてトラブルに発展してしまうケースが増加してくると思います。お互いに相手の立場を理解することや話し合うことが一番大切な事かと思いますが、企業としては雇用問題や使用者賠償責任などが問われた際の備えとして適切な保険に加入して対応していく事も重要です。

 

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