お知らせ・コラム
止まらぬ高齢化、できることから労災防止策を
建設、製造業、介護事業などでは、高齢の従業員による「加齢に伴う身体機能の低下」が災害発生要因の一つとして問題になっています。令和2年に発生した休業4日以上の労働災害の25パーセントを転倒災害が占めており、そのうち50歳以上の労働者が被災するケースが7割を超えています。
止まらぬ従業員の高年齢化に備え、企業は備えとしてどんな対策をとるべきでしょうか。みていきましょう。
【目次】
1.神奈川県で、労災防止へ専門家無料派遣
2.労災事故が起きる可能性の高い企業で取り組みたい5つのこと
3.今回のまとめ
神奈川県で、労災防止へ専門家無料派遣
神奈川県産業保健総合支援センターでは、転倒、腰痛災害ゼロをめざす企業に専門家を無料で派遣するサービスを全国で初めて開拓しました。高年齢者従業員を抱える作業場や現場など、各事業場に適した健康保持増進計画の作成を支援します。同センターでは「高齢化がすすむなか、安全面だけを重視した従来型の防止対策では災害を減少させるのは困難である」として「ゼロ災無料出張サービス」と銘打ち、企業の災害防止を図る狙いです。
出張サービスでは、健康運動指導士や理学療法士などの専門家が事業場を個別訪問して現状を分析したうえで、事業所の規模や職種、作業内容に応じた健康保持増進計画の作成をサポートします。主に健康測定と職場環境のチェックの他、社内セミナー開催や実技指導、運動アドバイスなどを提案、実施していきます。健康測定では、健康度や体力の測定、バランス・ロコモ度(運動器の障害による移動機能の低下の有無)のチェックなどを想定しています。また、セミナーでは転倒・腰痛予防運動、職場で行えるストレッチ体操などを紹介します。その他にも作業姿勢の改善や適切な作業管理、作業環境改善に向けたアドバイスを行います。これらの措置の実施後、従業員アンケートなどによる効果測定をして、さらに課題を洗い出していき、助成金などの活用も促しながら企業の自主的な活動を後押ししていきます。同サービスは現在製造業、小売業、道路貨物運送業など幅広い業種を対象に実施がすすめられており、11月からは病院、社会福祉施設なども支援対象に加えていく予定です。※労働新聞記事参照
労災事故が起きる可能性の高い企業で今すぐ取り組みたい5つのこと
1.安全衛生教育を徹底する。
労働災害防止のために、安全衛生講習会や避難訓練などを定期的に実施しましょう。
2.リスクアセスメントを実施しましょう
リスクアセスメントとは、災害や事故など企業を取り巻くリスクを特定、分析し、被害を最小限におさえるための手法です。リスクの特定は一人にまかせるのではなく各部署から担当者を集め、意見交換をしながら企業全体で想定されるリスクを洗い出すことが大切です。
3.従業員同士でKY活動を徹底する
KY活動とは、危険予知活動、つまり作業を始める前にどのようなリスクがあるのか予見したうえで作業に入る活動のことです。
KY活動は労働者が現場で作業前に行うもので、代表的な手順に4ラウンド法があり、以下のように進めます。
①現状の把握→②リスクの整理→③対策の提案→④目標の設定
4.メンタルヘルス対策を導入する
従業員のメンタルヘルス対策はできていますか。職場におけるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどを徹底的に排除するほか、厚生労働省が発表している「職場における心の健康づくり」によって以下の5つのケアが推奨されています
(ア)セルフケア
従業員自身が抱えているストレスに気づきやすくなるようセルフケア教育を行う。
またストレスに気づけるようにストレスチェックを行う。
(イ)ラインによるケア
管理監督者が部下の状況を日頃から把握しておき、様子がおかしければ産業医にみてもらう。また休職から復帰するための支援を行う。
(ウ)事業内産業保健スタッフらによるケア
上述のセルフケアやラインケアが効果的になるように産業医らが従業員や管理監
督者のサポートを行う
(エ)事業外資源によるケア
事業所外の医療機関や従業員支援プログラムなどのことで、企業が専門的な知識や状況などを把握したい場合に産業保健スタッフが窓口となって相談する
5.従業員の過重労働を防ぐ
時間外、休日労働時間が長ければ長いほど従業員が疲労し仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく疲労による労働災害発生のリスクが高まる傾向があります。
今回のまとめ
労働災害が発生すると、企業のイメージダウンにつながるばかりか、場合によっては損害賠償責任や刑事責任を問われる場合もあります。こうした災害を未然に防ぐために、法律で義務付けられている取り組みを行うのはもちろん、個々の企業がそれぞれの事情に照らして自主的な取り組みを行うことが重要です。もちろん、どんなに気を付けても、どうしても事故は起きてしまうものですが、その際にはあらかじめ労災の上乗せ保険に加入しておくなどして、万が一の時に企業として迅速に対応することで、従業員を守ることができます。日頃の作業や活動からリスクを適切に洗い出して企業の全員が危険を適切に認識するようにし、労働災害防止に積極的に取り組みましょう。
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