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『損害保険の準備の前に』労災事故防止における若年者、未熟練者、外国人など「人」の問題を考える

『損害保険の準備の前に』労災事故防止における若年者、未熟練者、外国人など「人」の問題を考える

建設や製造現場では、事故が多いことは皆様もご存かと思います。2020年厚生労働省の「業種、事故別死亡災害発生状況」によると、建設業の死亡事故における死亡者数は258人、製造業は136人と全産業の死亡事故の中でも大きな割合を占めています。これらに対して単に損害保険で労災事故に対して備えるだけではなく、事前に考えできることがあります。今回は、それらの労災事故の起因性を「人」にスポットを当ててみていきましょう。

【目次】

1.若年者、未熟練者安全教育の基本

2.外国人特有災害の基本

3.労働災害を起こす「不安全行動」とは?

 

若年者、未熟練者安全教育の基本

若年、未熟練労働者は、熟練労働者に比べて労働災害発生割合が高い状況にあります。労働災害データを見ると、経験3年未満の労働者の休業4日以上の死傷災害の割合は増加傾向にあります。若年、未熟練労働者の労働災害防止には安全教育が有効なことは言うまでもありません。安全教育は繰り返し実施することが重要です。現場にある危険を教え、「かもしれない」で危険を意識させ、決められた服装や作業手順を守るなど安全教育の基本である7つのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

【若年者、未熟練者安全教育の基本】

その1 職場には様々な危険がある  様々な災害事例を活用し一緒に考えます

その2 「かもしれない」で危険を意識する

その3 安全な作業は正しい服装から 「なぜ?」も教え保護具の正しい着用を教える

その4 決められた作業手順を守り、作業の中に潜む危険を意識させる

その5 4S、5Sの励行で安全を高める 整理整頓は作業性の向上にもつながります

その6 安全な作業をみんなで実施し、職場を安全に

その7 緊急時、自分は何をしなければならないかを覚えさせます                          

外国人特有災害防止の基本

外国人特有災害防止の基本は、「言葉の問題」をうまく解決する、しっかり教育をすることです。建設業では、外国人労働者が急増しています。建設業の外国人労働者数は2018年10月末、6万8604人。うち、外国人技能実習生は約3分の2を占めています。

さらに、2019年4月1日就労を目的とした新たな在留資格「特定技能」の創設に伴い、さらに外国人の労働者の数が増加しています。ただ、外国人の場合、日本語が充分に通じないことによる労働災害が心配され、それに対し効果的な対策を講じる必要があります。外国人労働者の労働災害は増加傾向にあり2015年以降は、毎年2000人を超えています。

建設会社を対象としたアンケート調査によると、外国人特有の安全上の課題は以下のとおりでした。最多は、「言葉の問題、コミュニケーションの問題」です。安全指示が伝わらない、安全教育を十分にできない(特に、緊急対応)、作業手順・作業方法が理解できない専門用語が理解できない、安全標識・掲示物が理解できない、安全意識のレベルが把握できないなどの意見が寄せられています。

次いで「安全意識の問題」があります。国民性、慣習などの違いにより、日本の安全ルールを遵守する意識が十分に高まらないおそれがある、潜在的な安全意識が把握できず効果的な教育ができない、新たな安全教育が必要になり、負担が増えるなどです。外国人労働者の安全確保のために、言語の無い安全標識も活用することが大切です。

労働災害を引き起こす不安全行動とは

不安全行動とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為をいいます。これもまた「人」に起因する労働災害です。

手間や労力、時間やコストを省くことを優先し、つい「これくらいは大丈夫だろう」、「面倒くさい」、「皆がやっているから」、「(作業を早く進めるためには)仕方がない」などと考えたり、「長年経験しているから大丈夫」、「自分が事故を起こすはずはない」など慣れや過信から、「あるべき姿」を逸脱する安易な行動がとられた結果、労働災害に発展するケースが少なくありません。

【労働災害発生の原因】

労働災害が発生する原因は、労働者の不安全行動の他、機械や物の不安全状態(事故が発生しうる状態、また、事故の発生原因を作り出されている状態)があると考えられています。厚生労働省では、不安全行動の類型として以下の12項目をあげています。

◇労働者の不安全行動◇

1.防護・安全装置を無効にする。

2.安全措置の不履行

3.不安全な状態な放置

4.危険な状態を作る

5.機械・装置等の指定外の使用

6.運転中の機械・装置等の掃除、注油、周知、点検

7.保護服、服装の欠陥

8.危険な場所への接近

9.その他の不安全行為

10.運転の失敗

11.誤った動作

12.その他

【不安全な行動による労働災害を防ぐために】

不安全行動を誘発する要因としては、①労働者の要因、②作業の要因、③作業環境の要因、④安全管理の要因、⑤組織の要因等があり、不安全行動は、これらのうち一つの要因に起因するばかりでなく、複数の要因が絡み合って発生すると考えられています。

また、不安全行動によって発生する労働災害を、労働者の心構え、意識だけで防止することはできません。その不安全行動が管理・監督の不徹底や、設備・環境面の欠陥によってもたらされることも少なくないからです。

今回のまとめ

今回は労災事故を「人」という側面にスポットを当ててみました。若年者、未熟練者、外国人労働者に限らず、人は誰でも油断しミスをおかします。しかし、それが労災事故につながれば企業側、労働者共に大きなダメージを受けます。ヒューマンエラーを限りなくゼロに近づけるとともに、労災の上乗せ保険などで、万が一の時に素早く解決に向けて対応できるような体制をととのえておきましょう。

 

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