お知らせ・コラム
建設工事の事故の高額賠償事例(スプリンクラー破損)
今回は、建設工事中に実際に発生した事故例のご紹介となります。工事中にスプリンクラーを破損してしまい下階のパチンコ店が浸水し、現状復旧と休業損害の損害賠償として2億3000万円の損害賠償請求を受け、解決金として1憶円を支払い解決した事案になります。解決までにはなんと3年の月日を要しました。弁護士費用や休業損害まで含めて、保険で対応できた案件なので詳しく内容について触れていきたいと思います。(参照 AIG損害保険の事故例集)
【目次】
1.漏水事故の発生原因と対策
2.高額な賠償請求の内容
3.今回のまとめ
漏水事故の発生原因と対策
事故概要
テナントビルの改装工事中に小型重機が天井のスプリンクラーに接触してしまい、漏水事故が発生してしまいました。スプリンクラーヘッドが損傷したことにより、消火設備が起動し建物全体が水浸しとなってしまいました。止水できるまでの約10分間放水が続き、地下一階のパチンコ店全体に水濡れ損害が発生しました。
事故内容
・当会社はテナントビル(地上2階、地下1階)の1階部分を改修する工事を請け負っていた
・間仕切り壁は頑丈であるため、コンクリート破砕機(小型重機)で作業していたが、下請けのオペレーターが操作を誤って、天井に敷設されたままであったスプリンクラーの配管を破損させてしまった
・事故発生からビルの消火設備の止水バブルの閉鎖まで、約10分かかった
・その間に噴出した水は1階の土間に溜まりつつ、下階である地下1階のパチンコ店に流れ落ち、内部造作や備品、機器類などに水濡れ損害を負わせてしまいました
・パチンコ店は営業時間中に大量漏水を被ったことで臨時休業となり、各種設備の復旧が完全に済むまで営業を再開できない状態となりました。
発生原因と未然防止策
①改修工事を行う工程を重機オペレーター任せにし、配管等の防護や養生もせず作業を行ったこと
未然防止策
・水等が流れる給排水設備や消火設備等の管の位置を図面などで事前に確認し、破損させてしまう可能性がないかを検討する必要があります
・配水管を破損する恐れがある場合は、養生をしっかりと行い破損防止に努めるか、重機を使用しない作業へ変更するなどの必要があります
②工事計画や安全計画書等の届出を行う際、既存消火設備(スプリンクラー、屋内消火栓等)の機能停止措置を行わず、作業効率を優先したこと
未然防止策
・工事中における安全上の措置等に関する計画の届出において、当該エリアのスプリンクラー配管を止水し、消火器等を増やし火災危険を減らす対応を行います。管に水が入ってないため漏水事故防止になります。
・仮に止水できない場合は、漏水が発生した場合の対策や止水バブルの所在確認などを対応しておきます。
高額な賠償請求の内容
解決までの対応ポイント
ポイント①損害賠償は時価額が限度
・被害者店舗の損害は、内装、レーン、台、什器(景品・カウンター・サーバー機器・球)商品など多岐に渡り、修理費用として提出された見積金額の合計は5700万円でした
・調査した結果、実際に水濡れ損害があった部分を原状回復(原状復帰)するための費用として2600万円を保険会社が認定(2重計上分やリニューアルオープンの新規改装分、損害が無かった備品の請求もあったため減額)
・原状回復は損害賠償の基本的な考え方、事故が発生する前の状態に回復する修理費用が賠償額となります。
・修理費用が時価額(事故時点での金銭的価値)を超えるときは、時価額を賠償することで賠償責任を果たされると法的には考えられています。
ポイント②企業の休業損害は高額に
・当初の被害者からの損害賠償額2億3000万円のうち、15000万円が休業損害でした(年末年始に営業できなかったこと、損害調査や警察によるパチンコ台の検査などで再開までに4カ月かかった、再開後も客足は鈍かった)
・被害者店舗の年間売上高は7億円、利益率は30%だった
・裁判所はパチンコ店が完全休業した4か月間の粗利益、営業再開後8カ月間の粗利益減少額の50%について本件事故と因果関係を認め、7000万円を認定した
ポイント③損害賠償と弁護士費用
・弁護士費用は「争訟費用」として支払いの対象としている保険もあります。
「争訟費用」とは訴訟に限らず、仲裁、調停または和解等に要する費用のことで、被害者と示談交渉する場合の弁護士費用も該当します
今回のまとめ
ご紹介した事例のように、建設工事では一歩間違えれば、1憶円を超える高額な賠償請求に繋がる可能性があります。自動車を乗る時に必ず自動車保険に加入するのと同じように、法人や個人事業主で建設業を行う場合は元請や下請けの保険加入の有無に関わらず、自社で保険に加入する必要があると思います。
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