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介護スタッフが認知症入居者の行為でケガをした場合の労災対応とは

介護スタッフが認知症入居者の行為でケガをした場合の労災対応とは

介護施設内でおこるケガについては、予期せぬものもありそうです。政府労災では、その起きたケガについて、業務が原因で起きたことでないと認められない為注意も必要です。

今回は、実際に起きた事例を用いて、介護スタッフが認知症の入居者からの行為で負ったケガが業務災害になるのか第三者行為による賠償となるのかどうかについて解説します。

結論から申しますと、認知症患者による今回のケガは結果的に業務災害ととられました。

では、その経緯をみていきましょう。

【目次】

1.介護施設で働くベテランスタッフが受けたケガの内容とは

2.業務上災害と第三者行為災害の違いとは

3.今回のまとめ

 

介護施設で働くベテランスタッフが受けたケガの内容とは

介護施設を運営しているX事業所で働く介護歴10年以上のベテランスタッフAがいつものように認知症の入居者Bをトイレに連れていくため、ベッドから起こそうとした際にBが暴れてAの唇を傷つけました。Aは出血してしまったので、皮膚科を受診したところ、口唇裂創と診断され、通院しました。ここで問題となってくるのが、今回のケースでは業務上災害になるのか、Bによる第三者行為災害なのかという点です。

業務災害と認められるかどうかについて

業務災害とは、労働者が業務上により、負傷、疾病、障害または死亡することをいい、業務が原因となって起こったことをいいます。業務上疾病の場合も業務と傷病などの間に一定の因果関係があることをいいます。これを業務起因性といいます。

また、前提条件として業務遂行性が認められなければなりません。業務遂行性とは、事業主の指揮命令、管理下で業務に従事している場合、以下の3つが挙げられます。

①担当業務、事業主からの特命や突発事故に対する緊急業務に従事している場合

②担当業務を行う上で必要な行為、作業中の用便、飲水などの生理的行為や作業中の反射行為

③その他労働関係の本旨に照らし合理的と認められる行為を行っている場合など

※安全スタッフ参照

今回のケガのケースでは、AはBの介助を行っていた際にケガをしたので、業務起因性、業務遂行性がともに認められるケースとなり業務災害といえます。

第三者行為災害と認められるかどうかについて

第三者行為災害とは、労災保険給付の原因である災害が第三者の行為などによって生じたもので、被災した労働者や遺族に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものを言います。

業務上災害と第三者行為災害の違いとは

もし第三者行為災害に該当する場合には、被災者は第三者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険に対しても給付請求権を取得することになります。しかし、第三者と労災からと同時に受け取ったとなれば、それは実際の損害額よりも多くが支払われることになってしまいます。そうならないため、労働者災害補償保険法第12条の4では、次のように定めています。

①先に政府が労災給付をしたときは、政府は、被災者などが第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険給付の価額の限度で取得する(政府が取得した損害賠償請求権を行使することを求償といいます)

②被災者等が第三者から先に損害賠償を受けた時は、政府は、その価額の限度で労災保険給付をしないことができる

以上のように二重取りができないような仕組みとなっています。

今回のケガのケースではBがおこした暴力が原因で起きたことは明白ですが、Bに責任能力があるのかどうかという点が争点となりました。責任能力とは、一般的に自らの行った行為に対して責任をおうことができる能力のことをいいます。刑法においては、事物の是非・善悪を弁別し、かつそれに従って行動する能力をいいます。

また、民法では、不法行為上の責任を判断し得る能力のこととしてとらえます。

認知症とはどういう状態をいうか

認知症とは、さまざまな原因で脳の神経細胞が破壊・減少し、日常生活が正常に送れない状態になることをいい、主な症状として、直前の行動を忘れてしまったり、覚えていた人や物の名前が思い出せなくなるなどの「記憶障害」、自分のいる場所や状況、年月日、周囲の人間との関係性などがわからなくなる「見当識障害」、料理の手順がわからない、服のコーディネートができなくなる、善悪の区別ができなくなるといった「判断能力の低下」があります。

以上の内容から、今回のケースでとりあげたBは認知症により事物の是非や善悪を判断できるような状態ではないと認められ、第三者行為災害として賠償責任を負うのではなく、業務災害として認定される運びと考えられます。

介護事業者が加入すべきおすすめの保険とは

今回の事例でいくと、介護に携わるベテランスタッフAのケガについては労災もしくは第三者賠償として相手から、どちらで補償されるのかという点でのポイントを解説していきましたが、企業サイドの気持ちを考えると、どちらにしても業務中のケガになるのでAのケガをまずは手当てすることが必須となります。そんなときに役に立つのが、民間の保険会社による任意労災です。労災の判定に関係なく、業務中のケガに対してお守りすることが可能です。また、介護者が相手をケガさせてしまったり、相手の物や部屋を傷つけてしまったりという対人対物賠償の心配もでてくるとおもいますので、業務に見合った賠償保険の完備も検討しておくと良いです。

今回のまとめ

業務中の予期せぬケガは、多かれ少なかれ発生します。起きてしまったことに対してスピード感をもって対処できる知識をもっておくことが大切だと感じます。またその責任の所在がどこにあるのか、今回のケースのように、相手が認知症患者だった場合どうなるのか、などあらゆるパターンを想定しながら、会社のリスクに立ち向かっていくのが安心です。

 

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