お知らせ・コラム
令和6年4月1日 改正不正競争防止法が施行されました
知的財産分野におけるデジタル化・国際化に伴い、知的財産を活用した新規事業に参入するスタートアップ企業・中小企業も増えてきています。環境の変化に対応すべく知的財産制度の見直しが行われ、この度「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が令和6年4月1日に施行されることとなりました。今回は直前に迫っている「不正競争防止法等の一部を改正する法律」について、経営者・事業者の皆さまに知っておいていただきたい情報を提供させていただきます。
【目次】
1.不正競争防止法等の一部を改正する法律
2.禁止行為と罰則
3 . 今回のまとめ
不正競争防止法等の一部を改正する法律
「不正競争防止法等の一部を改正する法律」では、「不正競争防止法」だけでなく「商標法」「意匠法」「特許法」「実用新案法」「工業所有権特例法」が改正されます。デジタル空間における模倣行為の防止、営業秘密・限定提供データの保護の強化、外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充、国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化が主な改正内容となっています。
【デジタル空間における模倣行為の防止】
商品形態の模倣行為について、デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できるようにする
【営業秘密・限定提供データの保護の強化】
不正競争防止法について、ビッグデータを他者に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等を可能とする。また、損害賠償請求訴訟で被侵害者の生産能力等を超える損害分も使用許諾料相当額として増額請求を可能とするなど、営業秘密等の保護を強化する
【外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充】
OECD外国公務員贈賄防止条約をより高い水準で的確に実施するため、自然人及び法人に対する法定刑を引き上げるとともに、日本企業の外国人従業員による海外での単独贈賄行為も処罰対象とする
【国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化】
不正競争防止法について、国外において日本企業の営業秘密の侵害が発生した場合にも日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不正競争防止法を適用する
◆不正競争防止法等の一部を改正する法律「法律概要」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/r5kaisei01.pdf
※経済産業省HP「不正競争防止法 直近の改正(令和5年)」より
禁止行為と罰則
不正競争防止法に該当する行為の規制(行為規制)が知的財産の保護等を図ることから、不正競争防止法は知的財産法の一環となっています。不正競争防止法の禁止行為は知的財産の侵害に繋がることからも、禁止行為と罰則についてもおさえておく必要があります。
≪禁止行為≫
- 周知表示混同惹起行為(2条1項1号・21条3項1号)
- 著名表示冒用行為(2条1項2号・21条3項2号)
- 形態模倣商品の提供行為(2条1項3号・21条3項3号)
- 営業秘密の侵害(2条1項4~10号・21条1項、2項、4項、5項)
- 限定提供データの不正取得等(2条1項11~16号)
- 技術的制限手段 無効化装置等の提供行為(2条1項17号、18号・21条3項4号)
- ドメイン名の不正取得等の行為(2条1項19号)
- 誤認惹起行為(2条1項20号・21条3項1号・5号)
- 信用毀損行為(2条1項21号)
- 代理人等の商標冒用行為(2条1項22号)
≪罰則≫
【刑事罰の対象行為】
- 営業秘密侵害罪(21条1項、2項)⇒10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金(又はこれの併科)
※海外重罰が適用される場合は、3000万円以下の罰金(又はこれの併科)
- その他の侵害罪等(21条3項)外国公務員贈賄罪を除く⇒5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(又はこれの併科)
- 外国公務員贈賄罪(21条4項4号)⇒10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金(又はこれの併科)
- 営業秘密侵害罪の未遂処罰(21条6項)⇒営業秘密侵害罪の未遂行為は処罰される(21条2項1号の領得行為は除く)
- 親告罪(21条7項)⇒秘密保持命令違反に対する罰則(21条3項6号)は、告訴が必要条件
- 営業秘密侵害罪の国外犯(21条8項・9項)⇒営業秘密侵害罪(営業秘密侵害品の譲渡等は除く)は、国内で事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外で罪を犯した者にも適用。秘密保持命令違反罪も、日本国外で罪を犯した者にも適用
- 国民の国外犯(21条10項)⇒外国公務員贈賄罪は、日本国外で罪を犯した日本国民にも適用
- 外国人従業員の国外犯(21条11項)⇒外国公務員贈賄罪は、日本国内に主たる事務所を有する法人の従業者であって、その法人の業務に関し、日本国外で罪を犯した日本国民以外の者にも適用
- 刑法との関係(21条12項)⇒罪数処理において、刑法その他の罰則と不正競争防止法とが一般法と特別法との関係にないことを明示ある行為が、不正競争防止法の罰則とその他の罰則の両方に触れる場合、どちらも成立する(科刑上一罪)
- 営業秘密侵害罪の犯罪収益等の没収・追徴(21条13項、14項、15項)⇒営業秘密侵害罪により生じた財産などは、裁判所の判断により、犯人及び法人両罰が適用された法人から、上限なく没収できる。また、その財産を犯人が費消してしまった場合など、没収ができなくなったときなどは、その財産の価額を追徴できる
- 法人処罰(22条1項)法人の業務に関して、以下の犯罪が行われた場合には、行為者が処罰(懲役・罰金)されるほか、その者が所属する法人もそれぞれ以下の処罰(罰金)の対象となる
今回の改正では罰則に関する他法の例にならって、法人両罰の有無による規定を整理し、罰則の構成要件に該当する行為を行った時期を明確化しています。※経済産業省 知的財産政策室「不正競争防止法」より
今回のまとめ
知らない間に知的財産権の侵害をしていた、サイバ-攻撃や内部不正により情報が漏えいしていた、といったリスクは今や規模に関わらずあらゆる企業・事業者に共通するリスクとなっています。知的財産権の侵害リスクや情報漏えいリスクは、損害保険で備えることが可能です。気になる方はお近くの保険代理店までお気軽にご相談ください。
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