お知らせ・コラム
経済活動再開と違法長時間労働
長らくコロナ禍で滞っていた経済活動が再開し、日常を取り戻したと喜んでおられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、アフターコロナは、企業の悪しき習慣までも復活させてしまった側面があるようです。今回は経済活動の再開と共に違法長時間労働が増えたことについて考えてみましょう。
【目次】
1.4割を超える事業場で違法長時間労働
2.メンタル不調者の割合も上昇
3.アフターコロナの新しい働き方をみてみよう
4.今回のまとめ
4割を超える事業場で違法長時間労働
厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場を対象に令和4年度に実施した監督結果をまとめました。すると、4割を超える事業場で上限規制違反など違法な時間外労働が発覚していることがわかりました。厚生労働省は「コロナ禍でおさえられていた経済活動が徐々に戻ってきたことが原因である」とみています。さらに労働時間の把握や健康診断を実施していないなど健康障害防止措置に違反している事業場も3割近くに上りました。厚生労働省は、「時間外、休日労働時間数が1か月80時間を超えている事業場」や、過労死などの労災請求が行われた事業場を対象に調査を実施したところ、3万3218の事業場のうち、42.6%にあたる1万4147事業場で36協定の限度時間を超える時間外労働や、上限規制に抵触する時間外労働などの違法な時間外労働がみつかり、是正勧告書を交付しました。またその他にも何らかの労働基準関係法令違反が判明したものを含めると、計81.2%となり、前年度を7.2ポイント上回っています。法令違反があった事業場割合を業種別にみると、接客娯楽業が86.6%と最も高く、ついで運輸交通業が86.2%で続きます。違反内容では、過重労働による健康障害防止措置を行っていない事業場が26.6%、賃金不払い残業が9.0%などとなりました。健康診断や長時間労働者に対する医師面談が行われていなかったケースについては今後も指導していくとのことです。
(労働新聞 8月 第3414号参照)
メンタル不調者の割合も上昇
厚生労働省がまとめた令和4年労働安全衛生調査結果によると、過去1年間にメンタル不調によって連続1か月以上休業した労働者がいた事業所割合は10.6%となり、前年調査からは1.8ポイント増えました。退職した労働者がいたのは5.9%で前年度から4.1%上回っています。一方、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場は63.4%で前年比より4.2ポイント増加しました。
アフターコロナの新しい働き方への議論
スイッチワークの導入やテレワークでの人材育成を議論
テレワークについては勤務中の中抜けを認めるスイッチワークの導入や、テレワーク勤務が可能な日数の増加などが検討されています。アフターコロナを見据えたテレワークのあり方や、テレワークでの人材育成について議論が必要です。
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた対応も
ワーク・ライフ・バランスについては、不妊治療と仕事の両立支援制度の拡充、介護短時間勤務の適用期間のほか、配偶者の転勤に伴う同行休職や彼らのテレワークによる継続勤務、育児のための特別休暇などについて企業と政府両面からの対応が求められています。
従業員モチベーション向上のための要求を
労働組合によると「組合員からの要望が多い項目を選定し、モチベーションの向上を図るため、付帯項目について要求」を掲げたといいます。具体的には、テレワーク勤務手当のほか、作業所手当の一律5,000円増を要求。さらに、人間ドック等に関する補助および制度の拡充として、①受診日の特休化②受診時の交通費補助③受診機関が遠隔地の場合の宿泊費補助を要求し、いずれも要求通りで妥結しています。
賞与の算定の見直しを別途協議
70歳までの雇用延長や60歳から65歳への定年延長についても議論が進められています。労働組合では労使協議として、業績連動型賞与の算定式の見直しについても話し合いがもたれました。組合員の全員投票で合意された場合、次回の年末一時金より算定式が改定されることになるとのことです。
今回のまとめ
コロナ禍の3年間を通して、私たちは働き方について今一度改めて考え直す機会となりました。国も長時間労働やブラックな企業の悪習慣を無くそうと法整備を進め順次適用しています。しかし、一部の事業場では未だに違法な時間外労働やハラスメントがあるようです。このような状態を無くすために、政府も企業も一体となって働きかけを行っていく事が重要です。またハラスメントや労災事故が起きない職場づくりも大切ですが、万が一企業責任を問われた場合に備えて補償をあらかじめ準備しておくことも、大切なリスクヘッジだといえるでしょう。アフターコロナで働き方が多様化したことを認識し、従業員の心身の健康を第一に考えた職場づくりをこころがけていきましょう。
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