お知らせ・コラム
ヒヤリハットを前向きにとらえる「建災防」の新しい考え方
今まで、建設や製造現場でのヒヤリハットは「不注意による不安全行動」として災害の一歩手前の行為であるとされマイナスに捉えられていました。しかし、新しい考え方ではヒヤリハット事例を「災害を回避できた成功体験」として位置付けていこうという試みがなされています。
どのような取り組みなのでしょうか、みていきましょう。
【目次】
1.建災防の新しい「ヒヤリハット」の考え方とは?
2.ヒヤリハットに潜むメンタルヘルスの不調、健康対策で不安全行動防止
3.今回のまとめ
建災防の新しい「ヒヤリハット」の考え方とは?
ヒヤリハット事例が起きた時は、作業者が報告書の提出をすることが望ましいですが、失敗を隠したい、恥ずかしい、怒られたくないという意識から、提出をしない作業者が増えており、報告書の提出が低調でした。そこで建設業労働災害防止協会では建設現場の新しい安全衛生活動の手法として「新ヒヤリハット報告」という名称で、ヒヤリハットへの意識を刷新する手法を発表しました。
従来の安全衛生活動では、発生した災害やヒヤリハットの原因分析による災害の未然防止活動に重点を置いていました。今後はヒヤリハットを「災害に至る前にリカバリーした成功事例」として捉え、ヒヤリハットにとどまった理由や背景を詳細に調査しようという前向きな捉え方をすることで、個人の人間力や現場の組織力を高める活動につなげていこうとしています。
報告書ではまず、ヒヤリハットの体験について「どのような作業で何をしようとしていた時、どうなったか」を記入します。次に仕事をコントロールできているか、周りの支援の状況を確認。ヒヤリハットが事故や災害に至らなかった理由を説明します。
報告からヒヤリハットの事例を収集し、災害防止対策を立案し、さらにヒヤリハットの背後要因やレジリエンス力関連の回答を集計し傾向を把握することで、災害防止に効果的な日ごろの活動を選定し、それを現場や上層部で共有することで、毎日の作業を安全に行っていこうという前向きな試みです。
ヒヤリハットに潜むメンタルヘルスの不調、健康対策で不安全行動防止
労働災害ゼロを目指した様々な活動に皆さん取り組まれてきていると思います。社会問題でもある過労死・過労自殺事案に端を発する過重労働対策・働き方改革の社会的ニーズに応えるためには、従来の取組に加え、建設工事従事者の「心身の健康」に着目した新たな取組が必要不可欠です。メンタルヘルス対策を進めることで、精神面からの不安全行動の防止等、真に実効性のある労災ゼロ活動へと進化させることができます。
【建設防方式健康KY】
作業前に実施する現地KYでの職長から作業員への健康KY
①上記の3つの問いかけと姿勢や表情等の確認を行い、健康状態を把握します。
②健康KYを行ったうえで、作業員の体調やメンタルに心配なことがある場合には職長から作業所長等へ報告します。作業所長等はその報告を受けて対策を検討します。
③心配がある作業員には睡眠に関して再度詳細な問いかけやストレスチェックを行い、スコアが高かった場合相談機関や医療機関等を紹介します。
現場従事者が精神障害を発症し、労災補償を受ける状況は多く報告されています。それは職場環境にストレスの種が多くある、という可能性が高いといえます。作業員のメンタルヘルスの不調は、そのまま労災事故へとつながる可能性があります。ストレス軽減をはかる取り組みとともに、設備や工法等の安全対策も積極的に実施することで、作業員全員が安全・安心で快適な職場環境を作っていくことが大切です。人間は完璧ではなく、必ずミスを起こす生き物です。しかしヒューマンエラーに対し「当人の注意不足」だけで片付けてしまうと問題は起こるばかりでしょう。「なぜ注意不足が起こったか」という根本的な問いかけをし、注意不足の前兆であるヒヤリハットが起きる原因を探ることが大事です。それにはストレスが関係している可能性を忘れないでおきましょう
今回のまとめ
仕事をしていて、もう少しで怪我をするところだったということは誰にでもあります。このヒヤっとした、あるいはハッとしたことを取り上げ、災害防止に結びつけることが目的で始まったのが、ヒヤリハット活動です。仕事にかかわる危険有害要因を把握する方法の1つとして、効果的です。しかしヒヤリハットは報告する側にとっても、報告を受ける側にとっても、あまり名誉なことではありません。このため、新名称となってからは特に「労働者を責めない」という取決めをし、これを実行することで制度を長続きさせようとしています。たとえ作業手順書どおりに作業を行わなかったことが原因であった場合も、手順書に無理があって守ることができないのかもしれません。手順書の見直しの良い機会と考えるべきです。 朝礼などの機会をとらえ、ヒヤリハットがきちんと報告されるよう意識付けをしておくことも重要です。また、改善された事例については、社内報などを通じて社内に広く情報提供すると、水平展開はもとより、労働者の意識向上にもつながります。ヒューマンエラーを限りなくゼロに近づけるとともに、労災の上乗せ保険などで、万が一の時には素早く解決に向けて対応できるような体制をととのえておきましょう。
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