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『カスハラ』から従業員をまもる!国の対応と損害保険

『カスハラ』から従業員をまもる!国の対応と損害保険

お客様に理不尽な要求を突きつけられた時、過度な謝罪や土下座を強要された時、あなたならどう対応しますか?

近年、暴言や暴力、脅し、セクハラ、動画を撮影してネットにアップするなどのカスタマーハラスメントが年々増えており、それにより精神疾患になる従業員も増加しています。企業の危機管理を支援する「エス・ピー・ネットワーク(東京)」が2019年に実施した調査では、苦情処理にあたったことがある会社員1000人のうち、約56%が「直近3年間でカスハラが増えた」と回答しました。古くからのいわゆる「お客様は神様です」というような顧客第一主義に加え、日本特有の「おもてなし」の文化で求められるサービス水準も一因となっています。

【目次】

1.カスタマーハラスメントに対する政府の動き

2.カスハラへの具体例と、現時点での対応策とは

3.損害保険によってお手伝いできることとは?

4.今回のまとめ

 

カスタマーハラスメントに対応する政府の動き

厚生労働省は、企業や労働者がカスタマーハラスメントやクレームハラスメントに対処するためのマニュアル作成に向けて、関係省庁との連携会議をスタートさせました。顧客や取引先からの不当な要求や迷惑行為は、労働者に過大なストレスを与えます。企業は労働契約締結に伴い「安全配慮義務」が生じます。つまり、お客様とはいえ、外部からの著しい迷惑行為であれば、従業員の心身の健康や生命の安全に配慮する必要が出てくるのです。このため厚労省が中心となって、連携会議の中で令和3年度中に企業向けのマニュアルを完成させる予定です。この連携会議には、厚労省の他、経済産業省、国土交通省、農林水産省、消費者庁に加え、オブザーバーとして法務省、警察庁も参加します。

想定できる企業の対応策として、迷惑行為者への対処方針・対処内容の就業規則への規定、事実関係の迅速正確な対応策、再発防止策などが盛り込まれる予定です。

小売業、サービス業、などの他に、特に介護現場でのハラスメントも大きな問題としてとりあげられています。職員の、実に4割から7割が利用者から何らかのハラスメントを経験しているという驚くべき結果も出ています。具体的なハラスメントの内容は叩く、蹴る、ものを投げつける、威圧的な態度で文句を言い続ける、過度な要求をするなどがありますが、その他にも、利用者から介護者へのセクシャルハラスメントも多く報告例があがっており、介護離職の一因となっていることから深刻な社会的問題となっています。

カスハラへの具体例と現時点での対応策とは?

ここからは実際にあった悪質なクレームやハラスメントをご紹介したいと思います。

□購入した包丁の切れ味が悪い!と文句をつけ、その包丁をむき出しで顔に近づける。

□商品不良のため返金をした際、丁寧に謝罪したにも関わらず土下座を強要。さらにSNSに従業員の土下座姿をアップし拡散。

□コンビニでガムを購入した男性に対し、店員が「袋にお入れしますか?」と聞くと「聞かなくても袋に入れるのが常識だろ!」と怒鳴られ、お金を投げつけられた。

□宿泊しているホテルの部屋が狭いから交換しろと要求。満室だと断ると、別のホテルに行くから、そこの宿泊費用と移動のタクシー代を出せと要求された。

□訪問介護の際、利用者の男性から手を握られたり、過度な身体的接触を要求された。

耳を疑うような悪質行為ばかりですが、では実際ハラスメントにあった場合、どのような対応をすべきなのでしょうか。

【悪質なカスタマーハラスメントは犯罪行為であるという認識を持ちましょう】

まず、一人でなんとか対応しようとせずに、必ず現場責任者、法務担当部署などと連携をとります。安易に相手の要求を飲めば、何度も同じ行為を繰り返すようになるため、不当な要求は断固として拒否しましょう。またどんな状況になっても書類の作成や署名、捺印などは絶対にしてはいけません。例えば「今すぐ謝罪文を書け」などと言われても、「上司の判断が必要です」と突っぱねましょう。

クレームがエスカレートし犯罪行為になった場合は、警察などに躊躇なく通報するようにします。    

【以下のようなクレームは違法行為となります】

1.脅迫罪

具体的な発言例;「お前の名前は覚えたからな」「組の者にもう話はつけておいた。」

2.恐喝罪

具体的な発言例;「謝罪だけでなく誠意をみせろ」「明日までに100万用意しろ」

3.強要罪

具体的な発言例;「今すぐここで土下座しろ」

そのほかにも、威力業務妨害罪、不退去罪などに該当する場合があります。

損害保険によってお手伝いできることとは

企業経営者の皆様にとって、従業員の離職や経営の危機にもなりかねないカスタマーハラスメント被害ですが、民間の保険会社では、そういったトラブルに対応する商品も出ています。お客様とのトラブルがあった際の相談先としての弁護士費用、お店で暴れられて商品が壊された時の物損を補償するもの、また保険加入企業の従業員がカスタマーハラスメント行為をした場合の損害賠償費用を補償するものなど各社様々な取り組みを行っています。コロナ禍で、飲食店や、ドラッグストアなどではお客様とのトラブルが多発したこともあり、昨年は特にこういった保険への加入が飛躍的に増えたようです。

今回のまとめ

お客様が神様である時代は終わりました。悪質なクレームは犯罪行為に該当する可能性があります。政府も対策にようやく重い腰をあげ、今後さらに法整備などもすすむと考えられます。また企業側も、従業員への安全配慮義務があることを決して忘れてはいけません。従業員がケガをしたり、心身の健康を害した時に企業側がなにも対応策を講じていなかったとすれば、安全配慮義務違反となり、損害賠償責任を負うこととなります。対応マニュアルの作成、各部署との連携やハラスメント研修など十分に対策を講じるようにしましょう。

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