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パチンコ店駐車場で火災【失火法とは!?】
神奈川県厚木市のパチンコ店「マルハン厚木北店」の立体駐車場で2023年8月20日に起きた火災では、駐車場内の100台以上の乗用車が被害にあいました。火災が起きたのは、午後2時45分ごろ。同店の立体駐車場(鉄筋コンクリート2階建て)の2階に駐車中の車両から火が出ているのを利用者の男性が発見しました。けが人はいませんでしたが、100台以上の乗用車が焼ける被害に見舞われました。民法709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」としています。しかし、明治32年に制定された「失火ノ責任ニ関スル法律」(失火責任法)は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と明記。つまり、失火の場合には民法709条は適用されず、重大な過失があった場合には「その限りではない」という内容があります。この火災で注目されるのが、乗用車の「補償」がどうなるのかという点です。明治時代に制定された法律により、失火の場合には重大な過失がない限り火元側の責任が問われることはないかもしれません。失火責任法とは何か。2024年以降の火災保険料率改定からも見ていきましょう。
【目次】
1.失火責任法をおさらいしておきましょう
2.火災保険料率改定について
3.今回のまとめ
失火責任法をおさらいしておきましょう
失火責任法とは、軽過失による失火については民法709条(不法行為責任の一般原則)を適用せず、損害賠償責任を負わず、重過失がある場合のみ損害賠償責任を負うこととした法律のことです。
明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
- 軽過失による失火は出火元が類焼先へ損害賠償を負わない。
- 重過失による失火は出火元が類焼先へ損害賠償を負う。
民法709条(不法行為責任の一般原則)を適用してしまうと、日本には木造家屋が多いという事情があったことから、軽過失まで損害賠償を負ってしまうと失火者に過大な責任を課すことになることが問題とされていました。そのため、失火者に過大な賠償金が請求されないようにと失火責任法が制定されました。失火責任法でも責任を免れない重大な過失として判断された事例を紹介します。重過失として認められるのは、わずかな注意さえ払っていれば予見、防止できたのにそれを漫然と見過ごしたような場合です。
以下のような事例では重過失が認められています。
石油ストーブの火をつけたまま、かつ、カートリッジタンクのふたの閉まり具合を確認しないまま給油したことでこぼれた石油にストーブの火が引火して火災が発生した事例(東京高裁平成15年8月27日判決)
点火中の石油ストーブから75cm離れた場所に蓋がしていないガソリンの入ったビンを置き、ビンが倒れて火災となった事例(東京地裁平成4年2月17日判決)
寝たばこの火災の危険性を十分認識しながらほとんど頓着せず、何ら対応策を講じないまま漫然と喫煙を続けて火災となった事例(東京地裁平成2年10月29日判決)
周囲に建物が建ち、多量のかんな屑が集積放置されている裏庭において、火災注意報等が発令されているような状況下で焚火をしたところ、火の粉がかんな屑に着火して火災になった事例(京都地裁昭和58年1月28日判決)
主婦が台所のガスコンロに油の入った鍋をかけ、中火程度にして台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火し火災が発生した事例(東京地裁昭和57年3月29日判決)
電気コンロを点火したまま就寝したところ、ベッドから落ちた毛布がコンロにたれさがり、毛布に引火し火災になった事例(札幌地裁昭和53年8月22日判決)
どれもそのままでは火災が起こることが容易に分かると思います。それなのに火災を防ぐための注意を払わなかったことで火災に至ったことで、重大な過失を認められています。
火災保険料率改定について
損害保険料率算出機構【略称:損保料率機構、理事長:早川眞一郎】は、「損害保険料率算出団体に関する法律」(料団法)第9条第1項後段の規定に基づき、火災保険参考純率の変更に関する届出を、2023年6月21日付で金融庁長官に行い、同年6月28日に料団法第8条の規定に適合している旨の通知を受領しました。
【改定の概要】
①住宅総合保険の参考純率について、全国平均で13.0%引き上げます。
②水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化します。
【改定の背景】
①自然災害などによる保険金支払いの増加とリスク環境を踏まえた対応
②水災料率における契約者間の保険料負担の公平化など
今回のまとめ
以上のとおり、もらい火等被害事故でも自分で自分の財産を守らなくてはいけません。火災保険料率改定から、2024年以降、民間保険会社でも火災保険の金額の改訂が行われる可能性があると思います。万が一の被害事故でも財産やお車を守れるように、補償は適正なのか。お近くの代理店で一度、相談してみてはいかがでしょうか?
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