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保険の重要事項などでよくみられる「重過失」の定義とは
損害保険に加入した際や更新時に説明をうける重要事項のなかによく表記がある「重過失」とはどんなものか気になった事はございますでしょうか。その中にはよく、被保険者または契約者の故意または重大な過失により損害が発生した場合には、保険金の支払いは行いませんという内容の規定があります。今回はこの「重過失」とはどのような場合を指しているのか解説していきます。
【目次】
1.損害保険などの重要事項にある「重過失」とは
2.「重大な過失」は「故意」や「過失」とどう違うのか
3.今回のまとめ
損害保険などの重要事項にある「重過失」とは
重大な過失とは何なのでしょうか。不注意などのために生じた失敗(過失)のうち、不注意の度合いが極めて大きいもののことを言います。それを「重過失」として省略して表現をすることがあります。一つの事例を取り上げます。
■ほとんど故意に近い場合※二審で判断覆った例あり
最高裁判決は失火ノ責任ニ関スル法律但書に規定されている「重大ナル過失」について、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたようなほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指す」としましたが、保険契約の免責条項に規定されている「重過失」もこれと同様の内容であると思われます。このような抽象的な定義では分かりにくいので、重過失が問題となった福岡高裁判決(令和2年8/27)を紹介します。此の事案は、片側2車線の車道の第2車線の中央分離帯の位置で歩行または一時的に立っていた歩行者が、平成28年12月中旬の午前5時ごろに、後ろから走行してきた車にはねられたという交通事故について、この歩行者に重過失があるといえるかどうかが問題となったものです。判決は、「重過失」について上記昭和32年の最高裁判決と同じ見解をとったうえで、本件事故現場は見通しのよい片側2車線の一般道路上の地点であり、本件事故発生当時の交通状況は閑散としていたものである可能性が高いこと、被害者(歩行者)は第2車線の中央分離帯寄りを走行し、中央分離帯に設置された高さ約80cmの防護柵が途切れる約70m先の地点で道路を横断するつもりであった可能性が高いことなどからすると、被害者において、車両の運転者が被害者の存在を認識し、わずかのハンドル操作により容易に被害者を回避して、その側方を通過するものと期待することにも一定の客観的合理性があったものということができるとしました。そして、結論として、被害者にほとんど故意に近い著しい注意欠如があったとはいえず、重大な過失があったということはできないとしました。ただし、原審(福岡地判令和2年1/16)は、車道は、車両の通行の用に供するためのものであり、歩行者が車道をほこうすることや車道に佇むことは予定されていないにもかかわらず、被害者はそのような行動をとったのであるから、被害者には重過失が認められるとしていて、地裁と高裁の判断は別れています。(上告はなされず高裁判決が確定)。被害者に重過失が認められるかどうかは微妙な場合があり、傷害保険について保険会社が重過失による免責を主張した場合などには弁護士に相談するのもひとつの手段です。※安全スタッフ参照
「重大な過失」は「故意」や「過失」とどう違うのか
不法行為や契約の違反が起こるとき、その原因となる行為が「不注意」によって引き起こされた場合は「過失」と判断されます。一方、その行為が「わざと」行われた場合には「故意」と判断され、一般的に過失の場合よりも重い責任や罪に問われます。ではあらためて「重大な過失」とはどのようなものか下記にご紹介します。
「重大な過失」とは?
わずかな注意を払いさえすれば予見や防止が可能であったにもかかわらず、それを漫然と見過ごした場合などは「重大な過失」と判断され、一般的に「単なる過失」とは区別されます。例えば交通事故の場合、飛び出してきた人を誤って轢いてケガを負わせた場合は「過失」となる可能性が高いですが、スマホの画面に気を取られて轢いてしまった場合は「重大な過失」と判断される可能性が極めて高いでしょう。
「重大な過失」は「故意」と同等に扱われることが多い
「重大な過失」は「故意」と同等に扱われる場合も多いため、「過失」の場合はそれが「重度」な過失に相当するか否か」がしばしば法廷で争われます。契約書の損害賠償に関する条項にも、損害賠償の対象となるのは「故意または重大な過失による場合」と限定されている場合もあり、「重大な過失か否か」の判断は原告・被告両者にとって、まさに死活問題となることも多いでしょう。
今回のまとめ
損害保険の契約の際や更新の際の重要事項に記載のある、「重過失」というワードについてとりあげました。重過失は保険支払いの免責事項にあたります。内容を理解したうえでお手続きをすすめてください。
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