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外国人技能実習生受け入れ制度の問題点とこれからの課題とは

外国人技能実習生受け入れ制度の問題点とこれからの課題とは

2019年4月、政府は「特定技能」という在留資格を新設し、これによって外国人労働者の受け入れが一気に加速しました。その中の一つである外国人技能実習制度は、主に発展途上国の労働者を一定期間日本で受け入れ、技術や知識を学んでもらい、本国の発展に活かしてもらうことを目的としています。本来は「先進国から途上国への技術移転という国際協力・貢献」を目的とした制度なのですが、実際は農業、製造、建設業などでの日本の労働者不足を補うための制度という側面が大きくなってしまい、それが原因で様々なトラブルを産んでいます。事実、実習先企業の実に7割がなんらかの労働関係法令違反が認められるといった厚生労働省の調査もあります。今回は外国人技能実習制度の問題点とこれからの課題についてとりあげてみました。

【目次】

1.外国人実習生受け入れ制度の仕組み

2.それでも減らない外国人技能実習制度の問題点

3.違法労働をさせた業者が書類送検された事例とは

4.今回のまとめ

 

外国人実習生受入れ制度の仕組み

実習生の受け入れ方法としては、大きく分けて次の2つがあります。

□企業単独型:日本企業の海外現地法人などから現地職員を受け入れ、実習を行う。

□団体管理型:非営利の管理団体(商工会議所、協同組合等)が受け入れ、傘下の企業などで実習を行う

実際にはほとんどのケースが団体監理型です。法務省の発表によると、外国人技能実習生の受け入れ人数は年々拡大しており、昨年は、コロナ禍で国外渡航に大きな制限がありましたので新規の受け入れ数の減少、また実習生の本国への帰国などがあったにもかかわらず2020年6月末時点で累計約41万人の実習生が日本に在留しています。国籍・地域別でみるとベトナムがもっとも多く、次いで中国、フィリピン、インドネシアとなっています。

技能実習法の成立で監督強化

技能実習制度については、これまで入管法令で規定されていました。その内容の見直しが行われ、新しい法律として平成29年11月に「技能実習法」が施行され、管理団体への監督が強化されました。実習生の受け入れを行ってきた管理団体は許可制、実習先(実習実施者)は届け出制になり、技能実習計画も認定制になりました。また監督機関として新たに「外国人技能実習機構」が創設され、機構の改善命令などに従わなければ、管理団体などは許可が取り消されることもあります。
実習生に対する人権侵害についても禁止規定が設けられ、違反した場合には罰則が課されるようになりました。実習生からの申告制度も整えられました。

それでも減らない 外国人技能実習制度の問題点

このように、技能実習制度に対しての監理監督も強化され、業務環境の改善がはかられてしかるべきなのですが、実際実習先では様々なトラブルが起きています。もちろん実習生本人が受け入れ先で問題を起こしたり逃げ出してしまったりということもありますが、受け入れ先側企業における問題も少なくないようです。みてみましょう。

1.低賃金や残業代未払い、長時間労働

外国人技能実習制度における問題点として、多くあげられるのが、まず「低賃金」と「労働時間」です。
団体監理型の技能実習生の場合、2ヶ月間の講習が終了すると、受入先に雇用される労働者となり、日本の労働関係法令が適用されます。よって、技能実習制度においても、賃金は最低賃金以上、労働時間も原則として1日8時間、週40時間までとなっています。時間外労働や深夜勤務、休日勤務には当然割増賃金が支払われなければいけません。しかし実際にはこれらが守られない事態が頻発しており、実習先によるタイムカードや勤務記録の改ざんという、悪質なケースも多く報告されています。

2.暴行、ハラスメント、労災隠し

実習生に対して暴行や脅迫、ハラスメント、パスポートや在留カードを取り上げるといった深刻な人権侵害も相次いでいます。
たとえば「差別的発言を受けた」「日本語の指示が理解できないと殴られた。」「上司に呼び出され、身体を触られた。」「入所してすぐにパスポートと通帳を取り上げられた。」といったものがあります。また仕事中に業務が原因でケガをしたのに治療を受けさせてもらえないといった「労災隠し」も起きています。

3.実習計画にない職種への違法な従事

2015年、福島県で鉄筋や型枠施工職種で来日したにもかかわらず、実習計画にない東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業や避難指示地域での配管工事などに 従事させられたとして、ベトナム人の元実習生が実習実施者を提訴した事例もあります。

違法労働をさせた業者が書類送検になった事例とは

岐阜、関労働基準監督署は、関市の縫製業者Aに対し、労働基準法および最低賃金法違反の疑いで岐阜地検に書類送検しました。Aは中国人技能実習生2人に対して違法な時間外労働、休日労働を行わせたうえ、承諾や協定なく家賃や光熱費、親睦会費等を賃金から控除し、さらに給与の少なさに不信を抱いた技能実習生が労基署に申告したことに腹を立て、報復として直後の給金を支払わない等悪質な違反行為をしていました。技能実習生2人の時間外労働は、最長月に94時間にものぼり、4週間に最低4日必要な法定休日も与えられていなかったとのことです。

※労働新聞参照

今回のまとめ

このように、技能実習生の受け入れには、様々な問題が起こる可能性があります。技能実習法第3条には「技能実習は労働力需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されています。受け入れ先は労働関係法令を遵守し、本来の「技術移転による国際貢献」という理念を常に忘れてはいけません。また、毎年不慮の事故や疾病に遭遇する技能実習生がいることから、受け入れ先は、公的保険を補完するものとして労災の上乗せ保険などに加入することにより、実習生のケガや病気にも迅速に対応できます。さらに自転車事故などによる高額な賠償に備える個人賠償責任保険や、実習生に万が一のこと(遭難、危篤、死亡)があった時等、緊急時の親族の来日費用や、捜索費用、現地から本国への移送費用などを補償する救援者費用保険もあります。法を順守し、またこういった補償を受け入れ側企業が備えたりすることで、技能実習生と企業双方がお互い幸せになれるように制度の活用をしていきたいものです。