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経営者は事故で負傷しても休業損害は認められないのか!?

経営者は事故で負傷しても休業損害は認められないのか!?

役員報酬を受け取っている経営者が交通事故等により負傷した場合、休業損害の支払いの可否がしばしば問題となります。会社から役員報酬が支払らわれているので、損害(休業損害)が発生していないと考えられるからです。ただ、事故により現場に出られなくなった、営業活動が出来なくなった、などの実務にも影響がでた場合には、支払われないことに到底納得はできないと思います。また、経営者の業務中のケガは労災の補償対象外で特別加入が必要であるなど従業員に比べて、労働法規による法的保護が少ないのが現状です。今回は、役員の休業損害の考え方と経営者の労災補償について触れていきたいと思います。

【目次】

1.役員報酬は補償されないのか?

2.経営者の労災補償について

3.今回のまとめ

 

役員報酬は補償されないのか?

Q横断歩道で自動車と接触し負傷しました。そのためしばらく会社の仕事に復帰できませんでしたが、私は役員であり、役員報酬をもらっているのでその分は補償されないとのことです。確かに報酬自体は減額はありませんでしたが、営業活動ができず、会社にとっては売上などでマイナスが発生しています。この穴埋めはされないのでしょうか?

(労働新聞社 安全スタッフ2024年1月号参照)

法的な考え方

相談者は会社の役員であると同時に営業活動にも従事しているので、売上のマイナスは発生しています。ただし会社から役員報酬が支払われているので自身の損害(休業損害)は発生していません。このような事例を法的にみますと、交通事故の損害賠償額を算定するうえで参考にする「損害賠償額算定基準(いわゆる赤本)」に次のように書かれています。「会社役員が会社から受ける報酬は、労務の対価のみにあらずその信用や人間関係により、その地位にあることの報酬や利益配当等の部分が含まれることがある。こうした場合は、損害の対象となるのは役員の報酬の全額ではなく労務対価の部分のみである」つまり休業損害の認定にあたり、会社役員の報酬については利益配当など経営者として得ている報酬のみの場合、休業損害は支払い対象外となります。しかし役員報酬全体を全額否認するものでは無く、労務提供の対価部分のみであれば休業損害として認められる可能性があるということです。

 従業員としての給与部分の確認

役員の報酬が「純粋な役員報酬」と「従業員としての給与部分」に分けられて支払われていたかは確認が必要です。ほとんどの会社で明確に分けて支払われておらず、仮に休業が発生しても役員報酬が減額されるケースは少ないと思います。本来マイナスされるべき従業員としての給与部分があるにも関わらず、会社が減額せずに休業損害部分も役員報酬として支払っているのは、損害を会社が肩代わりして支払っているという見方もできます。この場合、会社は相談者の役員報酬のうちの一部については、損害賠償(休業損害)として加害者側に請求できることがあります。どれくらいの金額を請求できるかは会社の規模、営業状態、相談者の職務内容や年齢・報酬の額・執務状況、事故後の他の役員の報酬額の推移などを総合して判断されますが、その算出は簡単ではありません。いずれにしても、相談者が休んだことによる損害は発生しているのですから、その埋め合わせとして、会社の立場で請求することも十分考えられます。妥当な請求金額等は、専門家に確認してみて下さい。

経営者の労災補償について

上記の事例のように、役員と従業員では受けられる補償の考え方が異なるケースや、そもそも社員等の労働者に比べて補償が少なく労働法規による法的保護が少ないので自助努力でカバーする必要があります。

労災補償はありません

労災保険は「労働者」の業務上の疾病等を補償する制度なので、役員は基本的には補償対象外となります。事業主で現場に出る場合は、労災保険特別加入もしくは一人親方労災への加入がないと労災の保障を受けることが出来ません。

労災保険特別加入の注意点

業務内容・労働時間など給付上、一定の制限があるので注意が必要です

特別加入者の保険給付範囲

【原則】

  • 特別加入申請書に記載(届出)を行った業務または作業
  • 所定の労働時間内における業務

【例外】

  • 所定労働時間外に社員と一緒に行っている場合
  • 就業時間に接続して行われる準備、後始末作業を一人で行う場合など

給付されない主な事例

・接待で釣りに行っていたときの事故

・所定労働時間外に経営者(役員)のみで業務していた時の事故

・所定労働時間内に経営者会議に参加していた時の事故

労災保険は、あくまでも労働者の保険なので、特別加入をしている役員が役員としての業務を行っている時に負傷をした場合は支払い対象外となります。

今回のまとめ

万一の事故の際に、役員の保障はどうしても手薄になってしまうので、会社で自助努力で備える必要があります。ケガや病気での入院・通院の補償はもちろんのこと、病院代や休業補償や所得補償、さらには死亡や後遺障害など働けなくなった時のリスクに対しても備えておく必要があります。経営者のリスクは、業種や会社の規模、年齢など様々な要因で変化しますので、リスクに応じた補償の準備をお考えの方は是非、お問合せ下さい。

 

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