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労災の復帰後の解雇が思わぬ労働裁判に発展するリスクとは

労災の復帰後の解雇が思わぬ労働裁判に発展するリスクとは

2006年4月から労働審判制度が施工されました。この制度は個別の労働関係民事紛争を対象としており、労働者が事業主に対して権利の主張を行いやすくするための制度となっております。制度開始から労働審判の件数は年々増加しており、近年では年間3000件以上の労働審判の新規受付があります。

特に近年では、パワハラやセクハラをはじめとしたハラスメントの問題や不当解雇の問題、うつ病などの心の病や高額訴訟に発展しやすい労災訴訟など雇用トラブルの内容も複雑化しており以前では問題にならなかった事案も労働裁判や労働審判制度の対象になっています。

実際に行われた労働裁判の事例を紹介しながら雇用トラブルについて考えてみましょう。

【目次】

1.食品製造中のケガ、治ったが復帰先が無いと解雇に

2.労災による休業と解雇

3.今回のまとめ

 

食品製造中のケガ、治ったが復帰先が無いと解雇になった事例

食品製造中にケガした労働者に対し、治癒後も従前業務は困難で配置転換も拒否したとして解雇した。配置転換の提案を解雇回避努力として評価した一審に対して、高裁は配置転換を拒否すれば解雇もある旨の説明がないなど努力を尽くしたとはいえず、治癒の診断から2カ月後の解雇を無効とした。元従業員は医師の「復帰の承諾」があったと申告しており、高裁は会社は申告内容を医師に確認すべきとした。

「札幌高裁 令和2年4月15日」

事故の概要

正社員として働いていた従業員のAさんはタラコの加工業務に従事していたところ、業務中に右手を負傷し平成26年10月から休職した。複数回の手術を経て平成29年10月に症状固定しそのわずか2カ月の同年12月に普通解雇された。

従業員(控訴人)の請求

①解雇は無効であるとして雇用契約上の社員であることの確認(不当解雇の確認)

②復職可能な平成30年4月以降の賃金等の支払い

③会社側の安全配慮義務違反があったとして不法行為または債務不履行に基づき、後遺障害慰謝料180万円の請求

④解雇で復職を阻止されたことの慰謝料100万円の請求

判決のポイント

会社側は、Aさんから事故後の復帰が可能と申告を受けていたのに、本件診断書を作成した医師に確認を取ることなく元の食品加工の部署で復職させなかった。同医師からは小指に無理をかけないように注意を払えば慣れた作業や労働は可能であるし、仕事に小指が慣れるまでは仕事量を減らすなど一定の配慮は必要であるが、慣れれば包丁を使う作業なども不可能でないと回答を得られたと思われる。それであれば、しばらくの間業務の軽減などを行う事により製造部署への復帰は可能であったと考えられるので、本件の解雇時におけるAさんが製造部の作業に耐えられないと認めることはできない。

また会社側は清掃係への配置転換をAさんに打診したところ、Aさんが配置転換を拒否したため解雇している。その際に配置転換を拒否すれば解雇の可能性がある事などを伝えるなど会社側が解雇回避努力をつくしたものとみることはできないとした。

判決

本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であったとは認められず解雇権を濫用したものとして無効というべきである。

労災による休業と解雇

労働基準法19条(解雇制限)1項本文に労災による休業と解雇について定めています

解雇制限の解除

業務上の傷病の療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇は法的に禁じられている。一定期間について解雇を制限し生活の脅威を被ることが無いように保護するためである。

平均賃金の1200日の打切補償

基本的には傷病の療養のために休業する期間とその後30日間は解雇することができないが、労働者がケガして療養を開始した時から3年経過しても傷病が治らない時は、平均賃金の1200日分の打切補償の支払いを行う事により解雇制限の解消を行なう事ができる

解雇制限解消後の解雇についての注意点

解雇制限の解消後の解雇であっても、労働契約法16条の解雇に関する規定の適用を受けることになります。解雇に関する規定とは「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したものとして無効とされる」

上記のタラコの食品加工業のAさんの事案でも、労災の負傷による休業から復帰して2カ月経過してからの解雇になる為解雇制限解消後の解雇です。しかしAさんがまだまだ働く事が可能な状態であった為「精神または身体の障害により業務に耐えられないと認められたとき」には該当せず解雇は無効との判断されました ※労働新聞社参照

今回のまとめ

近年、今回ご紹介したような解雇に関しての雇用トラブルが増加しております。ご紹介したように、適正な解雇事由が無ければ解雇が認められず不当解雇として訴えられてしまう危険性がございます。

民間の保険会社では、様々な雇用トラブルにおける労災審判や高額化しやすい労災訴訟に対して、使用者賠償保険や雇用慣行賠償保険などで対応しておりますのでご心配の方は一度ご相談してみて下さい。

 

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