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海外赴任先で自殺 労災認定される

海外赴任先で自殺 労災認定される

2021年、造船会社の社員として同年1月からタイに海外赴任していた27歳の男性が赴任先で自殺を図り死亡しました。労働基準監督署は、心理的負荷の強度を「強」と評価。死亡前に精神障害を発症したとし、労災を認めました。労災認定された背景にはどんな問題が隠されていたのでしょうか。

【目次】

1.希望をもって赴任したが・・・

2.死亡までの状況、労災認定まで

3.海外で年間100~200人が精神障害

4.海外出張先で事故に遭った場合、労災保険の適用はどうなるの?

5.今回のまとめ

 

希望を持って赴任したが・・・

死亡男性(Y氏)は大学院卒業後2018年造船会社に入社。日本では、海外のゴミ焼却発電プラントなどの電気設計業務に従事していました。労基署開示資料によると、Y氏は2021年1月にタイに到着。2月より現地で業務を開始しました。Y氏が担当していたプロジェクトが予定より早く進捗したことから、3月半ばからは専門外である機械の試運転の業務に携わることが急遽決まりました。経験したことのなかった業務にもかかわらず事前研修はなく、また、これまでとは違うシフト制での勤務が始まり、業務時間も増加しました。心身共に疲弊する状況が続く中、上司がY氏に対し、ミスを厳しく叱責する様子も見られるようになりました。Y氏の死後、労働基準監督署は、海外勤務での業務内容や、上司による厳しい叱責や業務指導が、A氏に与えた心理的負荷の強度を「強」と評価。死亡前に精神障害を発症したとし、労災を認めました。渡航前「仕事は忙しいけど、楽しい。」と、家族に対して、仕事に対する熱意を語っていたY氏。希望をもって渡った海外赴任先で、どのように精神的に追い込まれ、自死を選択するに至ってしまったのでしょうか。

当時つけていた日記にその片鱗がみられます。

・3月28日

「昼までは死にたかったけど、週報作ってたら死ぬ気がなくなった」

「久々に食べたマックのチーズバーガーがとてもおいしい」

・4月16日

「前日お酒を飲まなかったのでスッキリ目がさめた」

「悪夢を見ずに目がさめた」

「マンゴーフローズンがおいしい」

・4月18日

「特に何もしていないが死にたい気持ちにはならなかった」

「お酒のまなかった」

このように日記には度々、「自死」をほのめかす表現が出てくる一方、日常の小さな幸せを見つけようとする想いが見えており、前向きな言葉を綴ることで、心の平穏を保とうとしていた様子がみられます。

死亡までの状況、労災認定まで

亡くなる前日、設備トラブルが起き、対応は深夜にまで及びました。翌日、Y氏は通常通り出勤しミーティングに参加した直後、突然ボイラーの約30メートルの高さから、手すりを乗り越えて飛び降りました。すぐに現地の病院に運ばれましたが、そのまま帰らぬ人となりました。事故当初タイ警察が死因を特定しなかったことから、遺族は会社から「自死か事故なのか分からない」という説明を受けていました。しかし、その後「Y氏が手すりを自ら乗り越える様子が映っている監視カメラの映像がある」という証言や、日記や労働時間の記録を確認していくにつれ、遺族は「息子は自死した」と確信したといいます。Y氏の母親の弁護士が、週報やエクセルの保存時間、メールの送信履歴などをもとに、改めて労働時間を算出すると、1ヵ月当たりの残業時間は、最大約150時間にも上っていたことが分りました。その後労災が認定され、造船会社では再発防止のための第三者委員会が設置されたそうです。

海外で年間100~200人が精神障害

在外公館が把握している海外の事故・事件に関する邦人援護統計によると、2012~22年の間、年間約100~200人が「精神障害」を理由に援護されており、さらに30~70人程度が毎年、海外で自殺、自殺未遂をしています。「勤務する工場が地方にあり、他に日本人がおらず、孤独」「中間管理職として、日本社と現地社の板挟みになっている」「食や生活習慣が合わない」など、海外勤務では日本とは違う働き方や生活様式に、慣れず心身共に体調を崩してしまう人もいます。

海外の仕事先で事故に遭った場合、労災保険の適用はどうなるの?

海外での業務が「海外出張」として取り扱われる場合には国内での災害と同様に労災保険給付を受けることができますが、「海外派遣」とみなされる場合には、海外派遣者として特別加入をしていなければ労災保険給付を受けることができません。労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられているため、国内の事業からの「出張」の場合には労災保険の対象となりますが、海外の事業に「派遣」され、その事業に使用される場合には労災保険の対象となりません。「出張」に当たるか「派遣」に当たるのかは、その労働者の海外における労働関係によって判断されます。海外での勤務が長期にわたる場合でも、国内の事業場の指揮命令に従って業務に従事している場合には海外出張となり、海外の事業場に所属して、その事業場の指揮命令に従って業務を行う場合などは、海外派遣とみなされることになります。

今回のまとめ

海外で働く方は、心身共にケガや病気の可能性も高くなります。海外勤務のある企業様は民間の海外駐在保険などで、特に高額になりやすいケガや病気の補償にしっかり備えましょう。また帯同する家族がいる場合は家族も補償対象内かも重要です。慣れない海外でも安心して仕事ができるように、保険や企業でのサポート体制をしっかり整えましょう。

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