お知らせ・コラム
通勤災害の合理的な経路とは
労災上乗せ保険の事故報告で、通勤中に従業員やパート・アルバイトの方が負傷したと通勤災害の報告を受けることがあります。基本的に通勤災害に関して労災上乗せ保険のお支払い基準は、労災保険の基準に準じますので、労災で払われない場合は上乗せ保険でも払われません(別途特約を付帯すればお支払いできる場合もあります)。お支払い可能かどうかの判断で難しいのが、住居と就業の場所との合理的な経路および方法により往復することという規定です。今回は合理的な経路とは、経路を逸脱した場合はどうなるかなど細かい内容について触れていきたいと思います。(労働新聞社 安全スタッフ3月15日号参照)
【目次】
1.通勤途上の「日常生活上の必要な行為」とは
2.それぞれの具体例
3.今回のまとめ
通勤途上の「日常生活上の必要な行為」とは
◎通勤の定義
労働法において、「通勤とは就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいい業務の性質を有するものを除く」としています。つまり、自宅以外の場所から職場に向かう途中や職場から自宅以外の場所に向かう場合は通勤経路から外れているので、そもそも通勤とは認められません。例えば、大学から直接アルバイト先に向かう途中の事故や就労後に職場から実家など自宅以外の場所へ帰る途中の事故などは通勤災害として認められないので注意が必要です。
◎日常生活上の必要な行為
「労働者が前項の往復経路を逸脱し、また同項の往復を中断した場合においては当該逸脱または中断の間およびその後の同項の往復は通勤とはしない」「ただし当該逸脱または中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省で定めるものをやむを得ない事由により行うための最低限度のものである場合は、当該逸脱または中断の間を除きこの限りではない」となっています。つまり日常生活上必要な行為により通勤経路を逸脱した場合、逸脱や中断中に起きた事故は通勤災害として認められないが、経路に戻った後に起きた事故は通勤災害として認められるとされています。
◎逸脱・中断とはならない通勤に付随する「ささいな行為」
通勤途中に行われるもので通勤行為を継続するために必要性または合理性を有する「通勤に付随するささいな行為」については、逸脱・中断とはならないので当該行為の間およびその後についても通勤遂行性が認められます。「通勤に付随するささいな行為」とは通勤経路の近くにある公衆トイレを使用する場合、経路近くにある公園で短時間休憩する場合、経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合等のように通勤途上で行うささいな行為をいいます。
それぞれの具体例
日常生活上必要な行為は労働規則で次のように定められています。下記の事由で中断・逸脱中は通勤とは認められませんが、帰路に戻った後の事故は通勤と認められます。それ以外の事由で逸脱した場合は、通勤は終了になります。
①日用品の購入その他これに準ずる行為
帰途にスーパーなどで惣菜等を購入する場合、帰途で理・美容院に立ちよる場合、クリーニング店に立ち寄る場合等がこれに該当します。
②職業訓練や学校教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
職業能力開発促進法に規定する公共職業開発施設において行われる職業訓練、学校教育法1条に規定する職業能力の開発向上に資するものを受ける行為が該当します
③選挙権の行使その他これに準ずる行為
選挙権行使のほか、最高裁裁判官の国民審査権の行使、住民の直接請求権の行使等がこれに該当します
④病院または診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
病院または診療所において通常の医療を受ける行為に限らず、人工透析などの比較的長時間を要する医療を受けることも含まれます。また「これに準ずる行為」の具体例としては施術中において、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師等の施術を受ける行為があります。
⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、孫。祖父母および兄弟姉妹ならびに配偶者の父母の介護(継続的に、または反復して行われるものに限る)
同居している者の介護を行う場合としては、養護老人ホームや軽費老人ホーム等に一時的に入所している者を介護する場合等が想定されます。また「扶養」とは主として当該労働者が経済的援助をすることにより生計を維持させることをいいます。また当該行為が「やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合」というのは、日常生活上必要のあることをいい、当該逸脱または中断の原因となった行為の目的達成のために必要とする最小限度の時間、距離等をいうものとされています
今回のまとめ
通退勤途中として認められるかどうかは、非常にややこしいので、企業の保険担当の方は一度整理しておく必要があると思います。また、上乗せ保険ではフルタイム補償を付帯する事によりプライベートを含めて24時間の補償が可能になります(常勤の役員、社員、常勤のアルバイトなど条件あり)ので気になる方はお問合せください。また、おケガの補償はもちろんのこと、万一の賠償事故に備えて、自動車通勤の方の自動車保険への加入、自転車通勤の方の自転車保険もしくは個人賠償保険への加入は会社として確認しておく必要があります。
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