お知らせ・コラム
高齢者が活躍できる職場へ
働く人の高齢化が進む中で、高年齢者に優しい職場づくりが求められているようです。加齢によって身体機能は低下し、労働災害に被災しやすくなり重症化もしやすい傾向があります。厚生労働省のガイドラインでは、段差の解消や滑り止めによる転倒防止、見やすく聞きやすい警告方法などの作業環境改善と共に、身体特性を考慮した配置などがポイントになるとされています。
【目次】
1.被災者の割合は年々増加
2.働き方、企業に求められる様々な工夫
3.高齢者雇用助成金
4.今回のまとめ
被災者の割合は年々増加
60歳以上の高年齢労働者の割合は年々増加しており、総務省の調査によると、令和3年には18.2%となりました。それに伴い労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合も増えており、昨年は過去最多の3万6370人で労働災害全体の4分の1をこえる数字となっています。労働災害発生率は、若年層に比べ高年齢層で高くなっています。30代に比べて男性で2倍、女性では約3倍発生しやすくケガが重症化しやすく、休業見込み期間が長期化する傾向があります。被災しやすい理由の一つに身体機能の低下が挙げられます。平衡感覚、聴力、視力、筋力の大幅な低下により、若い時と同じ感覚で仕事をしようとすると、例えば重いものを持ち上げた時に腰を痛める、バランスを崩して転倒、段差につまずくなどといった労働災害が起こりやすくなります。
働き方、企業に求められる様々な工夫
厚生労働省では、働く高齢者の特性に配慮した職場を作るために「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を策定しました。高年齢者を使用している、またこれから使用しようとしている事業場で事業場と労働者に求められる取り組みを示しています。
【事業者、労働者に求められる取り組み】
□安全対策推進の表明、社内体制整備
□災害事例やヒヤリハット事例を基にリスクアセスメント実施
□ハード面の改善
※視力や明暗の差に対応した照度の確保
※階段への手すりの設置、通路への滑り止め設置
※適切な温度の休憩場所の設置
※認識しにくい危険個所を標識等で注意喚起
□ソフト面の改善
※ゆとりある作業スピードや作業工程マニュアルの作成
※重量物作業の小口化、減少化
※定期的な休憩の導入、作業休止時間の運用
労働者が健康状態や体力の状況を客観的に把握するための方法として「2ステップテスト(歩行能力・筋力)」「座位ステッピングテスト(敏捷性)」「ファンクショナルリーチ(動的バランス)」「閉眼又は開眼片足立ち(静的バランス)」によるセルフチェックを紹介しています。自分では「まだまだ身体を動かせる」と思っていても、自己認識よりも体が動いていないと事故のリスクは高まります。健康診断や身体機能テストを通じて体の状況を把握し、事業者は体力にあった作業に従事させるとともに、高年齢労働者自身も身体機能の維持向上に取り組むことが望ましいといえます。
高齢者雇用助成金
高年齢者雇用助成金は、65歳以上の方が働くことを支援するための助成金です。この助成金は65歳以上への定年引上げや、高年齢者の雇用管理整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成されます。具体的には以下の3つのコースで構成されています。
(1)65歳超継続雇用促進コース
65歳以上の方が働くことを支援するためのコースの1つです。このコースでは、65歳以上の方を雇用し続ける事業主に対して、1人当たり年間最大50万円の助成金が支給されます。助成金の支給期間は、原則として、65歳以上の方が退職するまでとなっています。
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
55歳以上の方を雇用する事業主に対して、雇用管理制度の整備(賃金、人事処遇、労働時間、健康管理制度等)にかかる措置を実施した場合に、最大で30万円の助成金が支給される制度です。
(3)高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して最大で48万円の助成金が支給される制度です。このような助成金制度を上手く活用して、高齢者雇用に積極的に取り組んでいる企業も今後多くなってくるのではないかと思われます。
今回のまとめ
今、様々な企業がエイジフレンドリーな企業づくりへの取り組みを行っています。定期健康診断と適切なフィードバック、メンタルヘルスケア、熱中症予防、コロナウイルス対策等、どの年代においても健康的かつ安全に働ける職場へ、社会全体が移行しています。また労災の上乗せ保障として、就業中のケガや、従業員の病気入院等に素早くサポートのできる保険商品への加入を、福利厚生制度の一環として取り入れている企業も多くあります。エイジフレンドリーな職場づくりは、高年齢者だけでなく、持病を抱える人や力の弱い人、また年齢や性別にとらわれない全ての人に「フレンドリー」な環境づくりでもあります。何歳になっても、生き生きと働き続けられる職場環境がこれからの重要な経営課題だといえるでしょう。
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