お知らせ・コラム
「天災地変」により被災した場合は業務上の労働災害となるのか
業務中に台風や雷、地震や洪水など自然現象により被災した場合は労災保険の給付の対象となるのでしょうか?大地震の労災認定に関しては、阪神淡路大震災と東日本大震災の際に業務中に被災したケースでは労災給付を受けております。他の天災地変に関しても仕事中であれば当然に労災給付となりそうですが、実は自然災害は不可抗力であると考えると「業務起因性」が認められるか否かが、労災給付を行う上での問題となるようです。今回は業務中に自然災害を被り、業務上災害となるかどうかの判断と労災時の使用者責任などの注意点について触れていきたいと思います。
(安全スタッフ2022年12月号参照)
【目次】
1.現場監督が落雷を受けて死亡
2.保険契約の死亡保険金など
3.今回のまとめ
現場監督が落雷を受けて死亡
・災害のあらまし
S建設会社はA県にある高級リゾートホテルに併設されたゴルフ場の建設を行っている。工事を始めて間もなく悪天候が続くようになり作業に遅れが生じたため多少の雨が降っても作業がおこなわれるようになった。用地の造成が終わり、同社の従業員である現場監督Gが見回っていると突然雷を伴う激しい雨になったため急いでその場所から離れた作業小屋へ避難しようとしたがたどり着く前に落雷を受けて死亡した。被災した地域はいわゆる「雷の通り道」と呼ばれているから作業開始前に当日の天気予報を確認していた。作業場所は広範囲にわたって平らな土地が続き、作業小屋の他には適当な避難場所がなかった。
・判断
原則として、地滑り、落雷などの「天災地変」により被災した場合は業務上の災害とされないが、作業場所の立地条件や作業条件・作業環境などにより、落雷による災害を被りやすい事情にあったため業務上災害とされる。
・解説
1.天災地変とは
「天災」とは、台風や雷、地震や洪水など自然災害によってもたらされる災害のことをいい、「地変」とは地面に起こる異変のこという。自然界によってもたらされる変化、すべての災害をいう。
2.業務上災害の認定について
業務災害とは「労働者の業務上の事由による負傷、疾病、傷害又は死亡」とされているが、「業務上の事由」に該当するためにはいわゆる「業務起因性」がなければならない。その「業務起因性」が成立するための前提には「業務遂行性」がなければならない
3.天災地変についての労働局の考え方(昭和49.10.29)
労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいう。天災地変による災害の場合はたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的には「業務起因性」は認められない。天災地変は不可抗力的に発生するものであって、事業主の支配、管理下にあるか否かに関係なく等しくその危険性がある。しかしながら、その被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業所施設の状況などから見て災害を被りやすい事情(業務に伴う危険)にある場合がある。その災害が天災地変を契機として現実化したものと認められる場合に限り「業務起因性」が認められる。
・まとめ
被災の原因が単に「天災地変」という事象のみでは業務上災害とはされない。事業場の立地条件や作業条件・作業環境などにより、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情にある場合に限り業務上災害とされることに注意が必要です。
保険契約の死亡保険金など
・生命保険契約の死亡保険金など
生命保険の死亡保険金は原則として被保険者が死亡した時に支払われ、地震や津波、台風や洪水などの自然災害で死亡した場合も支払われます。ただし、事故や災害が原因で死亡した場合に補償が上乗せされる「災害割増特約」などは大きな自然災害の場合には保険金は削減されるか支払われないこともあります。なお阪神淡路大震災や東日本大震災の時は通常どおり支払われました。
・損害保険の傷害保険や任意労災保険
損害保険契約のうち日常生活のケガで死亡した場合に補償される「傷害保険」は地震・津波・噴火で死傷した時には保険金が支払われません。労災の上乗せ保険などの任意労災保険においても、地震・津波・噴火により被災し死傷した場合には保険金は支払われません。実際に東日本大震災の時に業務中に死傷した労働者に対して、国の政府労災が支給されたにも関わらず、任意労災保険が支払われず大きな問題となりました。傷害保険では、地震・噴火またはこれらによる津波などによる事由によって生じたケガに対しては、保険金を支払われないと約款で定めているからです。ただし天災に関する特約を付帯する事により、地震・噴火・津波で被災し死傷した場合にも保険金を受け取ることができるようになります。
今回のまとめ
自然災害であっても、仕事中に生じたケガであれば当然に労災になりそうですが、作業内容や作業環境によっては労災にならないこともあるようなので注意が必要です。また東日本大震災の時に、勤めていた企業に対して被災した方の遺族が、震災時の会社の対応が不適切であり亡くなってしまったとして使用者責任があるとして損害賠償を求めて訴訟を提起しました。会社としては、地震・噴火・津波での死傷でも補償される保険に加入すると同時に、いつ使用者責任を問われる事案が起こるのか分からないので労災訴訟に備える内容の保険も準備が必要となります。
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