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送検事例から学ぶ『事業者の責任とは』
日々起こりうる労働災害ですが、中には企業の認識の甘さ、悪質さが問われ、送検される事例もあるようです。労災事故が起こった時に労働基準監督署の監督指導で問題になることが多いのが「労働安全衛生法違反」です。労働安全衛生法違反で書類送検されると、多くの場合、会社と責任者の双方に刑罰が科されます。
【目次】
1.そもそもどんな場合に労災送検されるのでしょうか
2.実際の送検事例を見てみましょう
3.労働災害と4つの事業者責任とは
4.今回のまとめ
そもそもどんな場合に送検されるのでしょうか
労災が起きた時、どのような場合に企業や責任者が送検されるのでしょうか、厚生労働省労働基準局では、毎年地方労働行政運営方針を明らかにしており、その中で以下のケースについて司法処分されるべきとしています。
【送検事案例】
□賃金の不払いを繰り返す
□従業員に重大、悪質な賃金不払い残業を行わせたもの
□偽装請負が関係する死亡災害等の重篤な労働災害が発生した場合
□外国人労働者(技能実習生を含む)についての重大悪質な労働基準法関係法令違反があった場合
□いわゆる「労災かくし(労働者の死傷報告の不提出、虚偽報告)」があった場合
労働基準監督署は、人の生命や健康は一度失われてしまうと取り返しがつかないので、人の生命、健康を脅かすような法令や違反に関しては司法処分を下す傾向にあります。またあえて違反を隠しているようないわゆる「労災かくし」事案に対しては厳しい姿勢で臨んでいるようです。
実際の送検事例を見てみましょう
【送検事例1】
事故は建築工事、鉄鋼造物加工を行う会社の工場で労働者がドリルマシンを使ってH型鋼の加工と同時に出る切り粉を払う作業を行っていたところ、H型鋼とH型鋼を運搬するためのローラーの間に右足を挟まれ切断する災害が起こった。安衛法では、労働者の作業内容を変更した時は作業手順などに関する安全衛生教育を行わせなければならないとしているが、被疑者である代表取締役は作業内容の変更があったにも関わらず変更についての安全衛生教育を怠ったとして書類送検された。
【送検事例2】
土木工事業において、労働者が小型移動式クレーンを使ってパレットに載せていた建築資材の袋の束、1250キロの積卸作業を行っていたところ、クレーンが転倒。資材置き場のフェンスとクレーンの間に労働者が胴部分を挟まれてろっ骨などを骨折。全治4か月の重傷を負った。転倒は積載荷重を超えて荷を吊っていたこと、また労働者は小型移動式クレーンの資格を持っていなかったため荷重計の見方がわからなかったとのこと。労働基準監督署は無資格者に移動式クレーンを運転させたとして建設会社と同社労働者を安全衛生法違反の疑いで書類送検された
【送検事例3】
コンクリート型枠組立工事業を請け負う専門工事業者所属の建設作業員が、作業中に釘打機の連結ワイヤーの破片が右目に突き刺さったことにより、全治二週間のけがを負った。同社は、労働基準監督署に労働者死傷病報告書を遅滞なく提出しなければならないのがこれを行わなかったため、建設業者及び同社代表取締役を労働安全衛生違反の容疑で書類送検された。(参照 安全スタッフNo.2411号)
労働災害と4つの事業責任とは
労働災害が発生した場合、会社側が負う4つの責任
①刑事責任
刑事責任として、労働安全衛生法違反の罪と、刑法上の業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります
②民事責任
被災した労働者は労災給付を受けることができますが、それは全ての損害を補填するものではないため、会社側は労働者から民事上の損害賠償責任を追及される場合があります。※不法行為責任、安全配慮義務の債務不履行、自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任等・・
③行政上の責任
労働災害は発生した場合、労働基準監督署からの是正勧告や改善指導、機械設備の使用、作業停止等の行政処分を受ける場合があります。
④社会的責任
労働災害が報道などで社会に広く知られることにより社会的価値を下げたり風評被害を招いたりします。
ひとたび労働災害が起きれば、事業者的には上記4つの責任の他にも従業員、家族、取引先、株主その他関わる全ての人々に迷惑をかけ、信用を失うことにもつながりかねません。そのためにも企業全体で労働災害防止に取り組み、リスクアセスメントを行うことが重要なのです。
今回のまとめ
年々、従業員への安全配慮義務に対する会社の責任は大きくなっています。労働災害によって死傷事故が起きた際、場合によっては従業員や遺族から訴訟を提起され、億単位の賠償金を請求されることも珍しくありません。労働災害を「ゼロ」に近づける努力は必要ですが、それでも起こってしまうのが労災事故です。労災対策を講じつつ、高額な賠償請求などに備え、労災の上乗せ保険や使用者賠償責任補償などの補償に加入し、万全の体制を整えておきましょう。
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