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社外転身を促す研修は違法な退職勧奨であり損害賠償をうける可能性があります

社外転身を促す研修は違法な退職勧奨であり損害賠償をうける可能性があります

研修は違法な退職勧奨だとのことで、それを拒否した結果降格されたとして労働者が、損害賠償や地位確認を求めた案件があります。東京地裁は、研修の内容や受講を拒否した後の面談が、退職の自由な意思形成をさまたげるほどの執拗さや態様で行われたとは認めがたいとしました。管理職としての業績を果たせず、降格の業務上の必要性を認めました。今回は退職勧奨にともなう実際の事例をもとに取り上げていきます。※労働新聞参照

【目次】

1.ことの経緯と再度の退職勧奨違法性なしの判断

2.雇用リスクへの備えの必要性とは

3.今回のまとめ

 

ことの経緯と再度の退職勧奨違法性なしの判断

社外転身促す研修受講を命じられ損害賠償を求める実際の事例をご紹介します。労働者甲は、平成7年4月に会社と期間の定めのない労働契約を締結し、20年4月には主任技師(課長相当職)に昇格しました。その後、甲は26年5月から休職し、29年1月に復職しました。甲は復職後および平成29年度の初めごろにそれぞれ個人目標の売上を設定したが、いずれの期も全く売上を上げることが出来ず、賞与評価も最低ランクでした。そのような中で会社は甲に対し、平成29年11~12月にかけて実施された「キャリア・チャレンジ研修」の受講を指示しました。本件研修では、「社外転身」に活路を見出す方向で、これからのキャリア形成を考えてほしいとの会社の意向が示されたが、同研修において、転職を考えていない甲は、会社グループへの残留を前提としたキャリアプランを作成、発表しました。また、研修後の29年12月26日、甲は上長との面談において、上長から「社外転身サポートプログラムについて」と題した書面を手渡しされ、引続き「キャリア・チャレンジ研修:フォローアップ研修」への参加を命じられました。30年1月、甲に対する同研修が実施されましたが、甲は2回目の研修時に、違法な退職勧奨で、違法な研修であると抗議したため、その後同研修は中止されました。30年4月、上長は甲に対し、平成30年度上期(4~9月)に売上目標を達成することができなかった場合には主任技師(主任相当職)から技師への降格を予定している旨を告げました。甲は、同期間にも全く売り上げを上げることができなかったため、同年10月1日付けで、会社は甲を技師に降格させ、給与は月額107000円下げる形となりました。ただし、降格で管理職を外れたことにより、本給とは別に裁量労働勤務手当が支給されるようになりました。本件は、甲が会社に対して違法な退職勧奨を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料300万、退職勧奨に応じなかった制裁としてなされた降格および賃金の減額が人事権の濫用により無効であるとして、主任技師の地位にあることの確認、本件降格前後の給与差額等の支払いを求めて訴えを提起しました。本件の争点は、退職勧奨が行き過ぎてその限界を超えた違法なものであったかどうかという点ですが、本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求を斥けました。

■判決のポイントとは

①退職勧奨の有無

退職勧奨自体は、労働者に退職を勧める使用者の行為にすぎず、このような勧奨行為を行うこと自体は自由です。もっとも、退職勧奨が対象とされた労働者の自発的な退職意思の形成を促すという本来の目的を超えて、社会通念上相当とは認められないほどの執拗さで行われるなど、当該労働者に不当な心理的圧力を加える態様で行われたり、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりして行われた場合には、当該労働者の自由な退職意思の形成を妨げたり、不当にその名誉感情を侵害したりする違法なものとして不法行為を構成します。本件の研修で参加者に示されたスライドには、参加者らが会社から「月俸者」(管理職)に値しない成果しか挙げておらず、新たな業務ミッションに就くことは極めて難しく、転職に活路を見出してほしいとみられている旨が記載されており、その内容に照らし、会社の甲ら参加者に対する当時の評価を記載したものにすぎず、甲ら参加者の名誉感情を不当に害するような社会通念上許容されない表現も用いられてはいません。研修は退職勧奨をしたとみる余地はあるものの、会社やそのグループ会社に残ることを希望する参加者には、残留を前提とするキャリアプランの作成を求め、甲も会社に残留することを前提としたキャリアプラン等を作成していることにも照らすと、本件研修が甲ら参加者の自由な意思形成を妨げるほどの執拗さや態様で行われたとまではみとめることが出来ません。

②退職勧奨の違法性

退職を一旦は断ったものに対し再考を求め、再度退職を促すことも、対象とされた労働者の自発的な退職意思の形成を促すものである場合には違法ということはできず、それが社会通念上相当とは認められないほどの執拗さで行われるなど、当該労働者に不当な心理的圧力を加え、その自由な退職意思の形成を妨げた場合に初めて違法となり、不法行為を構成することがあるといえます。

③降格と減給の効力

甲は、降格は甲が会社の退職勧奨に応じなかったことに対する制裁、意識返し目的と主張するが認めがたいです。

雇用リスクへの備えの必要性とは

会社における不況時の人員削減策や、定年前の高齢者の削減策として、労働者に対して合意解約ないし一方的解約(辞職)としての退職勧奨を行う場合には、その任意の意思を尊重する態様で行うことを要するのは当然です。また、退職勧奨は解雇ではないから、人員削減目的であって、整理解雇の4要件ないし要素を満たす必要はありません。

整理解雇の4要件とは

・人員削減を行う必要性

・使用者による十分な解雇回避努力

・対象者の選定基準およびその適用の合理性

・対象者や労働組合との間の十分な協議

どちらにせよ、企業はリスクを背負っているわけですから雇用に関する損害保険を備えておくことも選択肢の一つだと考えます。

今回のまとめ

会社側と労働者側での認識の食い違いが、おもわぬ賠償問題となることがあります。そのような際でも不安をかかえることが無いよう、トラブルを想定した準備、備えが必要かもしれません。またその中に、費用面や万一の相談できる窓口としての損害保険についてもご検討いただくとより安心頂けそうです。

 

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