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建設現場でトラックの荷が崩れて作業員が下敷きに

建設現場でトラックの荷が崩れて作業員が下敷きに

建設の工事現場でクレーン付きトラックの荷重オーバーにより、荷が崩れてしまい作業員が下敷きとなり、2億5000万円もの損害賠償請求を受けた事例になります。通常であれば自動車が起因しての所有・使用・管理中の事故であれば自動車保険が適用されますが、今回は自社の従業員だったので自動車保険の対人賠償保険は同僚災害免責により補償を受けることが出来ませんでした。当然、現場の労災で対応しましたが労災だけでは十分な補償を受けることができず、労災訴訟となり10回以上の弁論を重ねて解決までに5年近くの月日を要しました。

今回は、事故の概要と被害者対応のポイントなどに触れていきながら、万一重大災害が発生した場合に間違った対応をしないようにポイントを押さえていきましょう。

【目次】

1.クレーン付きトラックの荷が崩れて従業員が下敷きに

2.発生原因と未然防止策

3.今回のまとめ

 

クレーン付きトラックの荷が崩れて従業員が下敷きに

事故概要

工事現場でクレーン付きトラック(4t)に仮設ユニットハウスを解体して積み込む際、その積荷がずり落ちて、従業員A(45歳)が下敷きになってしまいました。脊髄損傷と判断され、約1年の治療・リハビリの結果、神経系統の機能に著しい障害が残りました。

事故内容

・工事現場にてクレーン付トラック(4t)に仮設ユニットハウスを解体して積み込む際、荷重でクレーン付トラックがバランスを崩し、積荷がずり落ちて従業員Aが下敷きになってしましました。

・従業員Aの受傷内容は、胸椎及び腰椎の破裂骨折、脊椎損傷、膀胱直腸障害でした。胸椎・腰椎に対しては複数の椎体を固定する手術をしました。

従業員Aは約1年の治療・リハビリを行いましたが、両下肢の知覚麻酔、強靭性麻痺により物を持たなければ起立できず、歩行不能となり、また自立して行うことができない排尿排便障害も合併し、後遺障害1級に認定されました。

解決までの経緯

①会社に対し保険会社の提携弁護士から早めの被害者対応をとるようアドバイス

②会社は自社顧問弁護士の助言を優先し、従業員Aへの対応をせず静観

※ポイント 消極的な被害者対応

③事故の約5カ月後、従業員Aが弁護士に一任していることが判明

④1年後に従業員A側から2億5000万円の損害賠償請求

⑤事故から2年後、会社に損害賠償責任ありとして訴訟に

訴訟は約10回の弁論を経て1年後に解決金1億8000万円で和解

※ポイント 多額の自己負担

解決までの対応ポイント

消極的な被害者対応

保険会社の提携弁護士から損害賠償責任を問われる可能性を指摘され、早め早めに対応するようにアドバイスを受けていたが、会社の顧問弁護士の助言を優先し従業員Aに対して積極的に補償の話はせず静観の姿勢をとりました。この消極的な対応により、従業員は会社への不信感を募らせました。

・事故原因はトラックの荷重オーバーもあり、初歩的な荷崩れの事故でした。この作業に慣れていない従業員Aには事故の予見は難しく、過失がないと考えられる事故でした。

・しかし、会社の顧問弁護士は十分な調査を行うことなく従業員Aの過失を相殺して加入する保険の1億2000万円(後遺障害補償保険金2000万+使用者賠償1億円)で解決できると考えていました。この主張により、交渉は紛糾し訴訟に発展していきました。

多額の自己負担

和解金(損害賠償金)は1億8000万円となりました。このうち加入していた保険で支払われた1億2000万円(使用者賠償保険金と後遺障害補償保険金)を差し引いた、6000万円と弁護士費用3000万円の合計9000万円は会社の自己負担となりました。

・自動車保険の対人賠償、同僚災害免責となってしまいましたが、自賠責保険は他人性が認められて有責となる可能性がありました。自賠責の加害者請求もしくは被害者請求を行っていれば自己負担額を減らせる可能性がありましたが、被害者との関係悪化や話し合いを積極的に行わなかった事もあり自賠責保険への請求は行っていません。

発生原因と未然防止策

発生原因①トラックの荷重オーバー

未然防止策

・作業半径とつり上げ荷重の関係、アウトリガーの張り出し幅とつり上げ能力の関係、地盤が緩い場合には、覆工板等を使用し転倒防止策をとる必要があります。

発生原因②作業の経験・知識不足、不慣れ

・不慣れな者が作業する場合は、作業手順書の確認及び、作業指揮者を必ず選任するなど事故防止に努める必要があります。

・作業開始前には各種特別講習を修了、または免許を保有しているかを確認する必要があります。小型移動式クレーン運転技能講習、玉掛け技能講習

今回のまとめ

今回の事故では、従業員が重大な労働災害に被災し国からの労災支給だけでは補償が十分ではなく会社が使用者責任を問われるとともに損害賠償金をお支払いしました。会社としては、労災の上乗せ保険にも加入しており弁護士にも相談したうえで、解決を目指しましたが、結果として9000万円の自己負担金が発生してしまいした。仮に、使用者賠償保険の保険金の限度額が1億円ではなく、2億~3億円の補償があれば自己負担は発生しなかったと思いますし、積極的に被害者対応を行う弁護士であればもう少し早く解決していたと考えられます。安全管理を徹底して事故が起きないことが一番望ましいことですが、万一の事故の際には保険加入の有無や補償の内容も重要です。さらに労災訴訟に詳しい弁護士に委任することや会社としても積極的に解決にむけた動きを行うことも重要となります。