名古屋市の損害保険・生命保険代理店なら保険ポイント「お知らせ・コラム」ページ

お知らせ・コラム

営業マンの残業時間月70時間で心不全に対する労災対応はどうなる?

営業マンの残業時間月70時間で心不全に対する労災対応はどうなる?

成果と時間とが必ずしも一致するわけではない営業のお仕事ですと、時間管理は経営者にとってとても悩ましい問題かもしれません。今回は営業マンが残業時間月70時間という過労死の認定基準を下回った状態での心不全による死亡のケースで、政府労災ではどのような結果となったのか、、事例をもとに取り上げていきます。

【目次】

1.過労死の認定基準を下回る状態での心不全による死亡は労災なのか

2.判決のポイントと対策

3.今回のまとめ

 

過労死の認定基準を下回る状態での心不全による死亡は労災なのか

魚の薬を販売する営業マンが心不全で死亡し、遺族が労災不支給処分の取り消しを求めました。残業は各月70時間など過労死の認定基準を下回っていました。福岡地裁は、長時間労働の継続に加え、死亡直前には多くの営業成績を上げている取引先の社長の要求にこたえて、海に転落する危険性がある作業をするなど肉体的疲労から精神的緊張が大きかったことを考慮して請求を認めました。※労働新聞社発行 精選労働判例集参考

◇【過労死ライン】について

「過労死ライン」とは、健康障害に発展する恐れのある時間外労働時間を表した言葉で、労災認定の基準として用いられています。例えば1か月に45時間を超える残業をすると脳や心疾患を発症しやすくなります。また発症1か月前に100時間を超える時間外労働をしたり、健康障害発祥の2~6か月間で月平均80時間を超える時間外労働をしたりしている場合、健康障害と長時間労働の関連性が強いと判断されます。

【事案の概要】

営業マンを甲とします。甲は、平成12年3月A社に中途入社。平成20年以降は養殖業者に対する魚薬等の営業販売に従事していました。平成26年2月7日午前7時頃、出勤後の営業車内において意識不明の状態で発見され救急搬送されましたが急性心不全により当時47歳で死亡しました。甲の妻は、甲の死亡の原因が、取引先との業務におけるストレスや長時間の過重労働に従事したことによるものであると主張して宇和島労基署長に対し、労災法にもとづく遺族補償給付等を請求しましたが同労基署長は不支給とする決定をしました。甲の妻はさらに本件不支給決定に対して審査請求をしましたが棄却され、その後の再審査請求についても採決がなされないまま3か月が経過したため本件不支給決定の取り消しを求めて、平成28年8月30日に本件の訴えを提起しました。本件の争点となるのが、甲の急性心不全が業務により生じたといえるか(業務起因性の有無)についてです。次の判決のポイントにて本件の不支給決定処分を取り消し甲の妻の請求を認容した流れを解説します。

判決のポイントと対策

【判決のポイント】

短期間の加重業務があったかどうか

甲の発症前の1週間の時間外労働時間は、、27時間52分であるところ、それ以前の複数の週にわたって同程度の時間外労働をし、他の時期と比較して特に過度の長時間労働をしていたものとはいえません。また発症5日前には休日が確保されていたことも併せて考慮すると継続した長時間労働があるとも認められません。平成26年2月5日、6日における取引先Bにおける消毒作業は、営業職の甲にとっては厳しい作業環境であったといえます。また甲は取引先Bの社長bから前記2日間のうちに作業を終えるよう指示を受けており、これを達成できなかった場合は自らの営業成績のみならず、営業所の売り上げにも影響をあたえかねないものとして、消毒作業はいつもより精神的緊張がとても大きかったと言えます。他方、甲が月に数回は消毒作業に立ち会っていたことからすると精神的緊張が著しいものとまでは認めがたい点もあります。よって甲が短期間の過重労働をしていたとは認められません。

長期間の加重業務の有無

甲の発症前6か月の時間外労働時間は1ヵ月あたり70時間前後であり、80時間には満たないもののかなりの長時間労働が継続し、死亡直前に厳しい作業環境での消毒作業を行ったことを併せ考慮すると、業務と発症とは相当程度の関連性があると言えます。

精神的緊張の程度等

甲の営業成績は大部分を取引先Bからの売上に依存しており社長bからの信頼を損なえば、自らの営業成績ばかりか営業所の売上にも大きな影響をあたえかねない状況にもありました。他方、社長bはむら気が多く、取引業者に対して理不尽とも思える叱責や出入り禁止を告げて取引量を大幅に減らすこともありました。平成25年7月初めに取引先Cの担当者が出入り禁止を言い渡され甲の取引先Bに対する魚薬販売量や投薬指導の負担が増加し、社長bから営業員の増員を求められていました。A社のD所長は、甲に対し、営業員増員が出来ないのでBの訪問回数を減らして良いなどと指示しているが、多くの営業成績を上げている甲が訪問回数を減らすことは考え難く、精神的緊張はますます増大していきました。

甲は肉体的、精神的負荷の大きい業務を長時間にわたり継続し、心臓疾患を発症するような過重性もありました。急性心不全は明らかに業務以外の原因により発症した等の特段の事情が無い限り業務起因性を認めるのが相当です。

業務災害とは、業務上の負傷、疾病、障害または死亡のことを言いますが、業務上というためには、当該労働者の業務と死亡の結果との間に当該業務に内在または随伴をする危険が現実化したと認められるような相当因果関係が認められなくてはなりません。そして「業務上の疾病」の場合には①異常な出来事②短期間の加重業務③長期間の加重業務の3つの過重負荷の認定条件を踏まえて、業務の過重負荷によって、血管病変等が自然経過を超えて著しく憎悪し、脳・心臓疾患が発症したことについて、業務が相対的に有力な原因であると認められなくてはなりません。業務の過重性の評価については、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握検討し総合的に判断する必要があります。今回のケースでの使用者としての対策を考えますと労務管理外の営業サービスまで過重労働の対象とみなされることについて把握し、働き方改革を検討する必要があると感じます。

今回のまとめ

心不全発症したことによる労災認定の事例を取り上げましたが、かならずしも直近の残業時間だけがボーダーラインになるのではなく、その他の精神的要因など様々が入り組んで業務上疾病が起こってしまう可能性がございます。企業経営者の皆様はいち早く労働環境を整えるのと同時に、労災の上乗せ保険などの完備も検討してみてください。

損害保険のことなら株式会社保険ポイントへぜひお任せください。

TEL>052-684-7638

メール>info@hokenpoint.co.jp

 

お電話、メールどちらでもお待ちしております。