お知らせ・コラム
「事故防止」認知バイアスとヒューマンエラー
皆さんは「認知バイアス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。認知とは目の前の事態を認識すること、バイアスとはかたよりのことで、認知バイアスとは思い込みや先入観により目の前の実態が正確に把握できない、認知にかたよりがあり本来の姿をとらえられないことを言います。仕事中の不安全行動の多くはこの認知バイアスから引き起こされ放置すれば重大事故にもつながりかねません。どうすれば防げるのでしょうか。
【目次】
1.認知バイアスにはどのようなものがあるのでしょうか
2.認知バイアス対策には現場責任者のリーダーシップが必要
3. 今回のまとめ
認知バイアスにはどのようなものがあるのでしょうか
認知バイアスは、人間であれば誰もが持つ特性です。そのうえで、その考えが不安全行動につながることを理解しましょう。
◇過信バイアス
自分の判断や行動は正しいと信じ、無理な行動をしてしまうことです。過信バイアスは熟練者に多いと言われています。長年の経験を積み重ねた熟練者の活躍は不可欠ですが、過信による熟練者ならではの労働災害も多いのです。現場の作業を熟知しているがゆえに、トラブルの際周りに相談せず「解決策がわかっているから自分がやる」「自分なら大丈夫」という過信が不安全行動につながってしまいます。
◇楽観バイアス
危険に対して「多分大丈夫だろう」「自身には関係ない」と楽観視することです。典型的な労働災害の発生原因には楽観バイアスが大きく関わっています。例えば「吊り荷の下には入らない」「稼働する機械には近寄らない」「高所作業では墜落防止用具を使用する」などの基本ルールを軽視し、「実際に事故なんて起こるはずがない」と思いこむことは、思わぬ災害を招くことになります。
◇正常性バイアス
正常性バイアスとは自身に重大な危機が迫っていても、まさか自分の身には降りかからないだろうと 思い込んでしまう心理です。災害や火事、事故、事件などといった自分に何らかの被害が差し迫った状況下にあっても、それを「正常」な日常の延長上の出来事として捉え、都合の悪い情報を無視したり、危機に対する回避行動をしない心理作用です。2014年の御嶽山噴火時のニュース映像を覚えていらっしゃるでしょうか。あの時大きく噴煙があがる様子や噴石が降ってくる様子を撮影している登山者の映像が流れていました。この噴火では登山者58人が亡くなりましたが、亡くなった方の多くが、噴火後も火口からしばらく動かず噴煙の様子等を撮影したりしていたようです。人間の心は予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできています。正常性バイアスとは脳の負担を軽減するため、危機に対して情報を軽視、あるいは無視する様に働く機能と考えられますが、場合によっては危機に対して思考停止してしまうこととなり、大きな被害を受けることがあります。
◇グループシンク
グループシンク(集団浅慮)とは、集団や組織などが過度な自信や楽観により客観的な視点をもつことができなくなることです。またグループの目標の達成のためには不安全行動もやむなしという雰囲気に陥ると、現場では誰も不安全行動の注意をしなくなり、労働災害がいつ発生してもおかしくない状態となります。建設現場では、厳しい工期などに間に合わせようとするあまり、このような状態に陥ることがあります。
認知バイアス対策には現場責任者のリーダーシップが必要
認知バイアスによる労働災害を防ぐにはどうすればよいでしょうか。対策としては
①バイアス(かたより)を正常な状態に戻すこと
②バイアスが生まれることを前提に対策を講じること
以上の2つがあげられます。このうち①の対策は不安全な状態に敏感になり、バイアスを生み出さないようにすることです。そのためには安全教育が必要です。KYT(危険予知)活動をしっかり行い、はしごなどの用具、工具、保護具などの使い方の正しい知識が必要になります。また熟練者=高年齢者の心身機能の低下にも対策が必要です。職場などで体力測定を実施し、心身機能の低下を自覚させることでバイアスを正常な状態に戻します。②の対策は、現場を安全な状態に保ち、認知バイアスにより不安全な行動が生まれたとしてもそれが労働災害につながらないようにすることです。高所作業で墜落制止用具を使用しない作業者がいたとしても、ネットや手すりを設けるなどして、設備的な対策をあらかじめ講じておくことで作業者を労災事故から守ります。また「現場でのルールは断固として守り抜く」という緊張感を保つためには、現場責任者のリーダーシップが強く求められます。
今回のまとめ
労働災害は、人間が仕事に携わることによって発生します。技術的システムの信頼性が高まるとともに、災害の人的要因という面に焦点が移ってきました。認知バイアスを正しく修正し、事故防止に努めるとともに、起きてしまった事故に対しては企業として素早い対応をすることも大切です。あらかじめ労災の上乗せ保険に加入しておくなどすれば、従業員の万が一の時ケガや病気に企業として迅速に対応することができます。また、労災事故で相手側や遺族から訴えられた場合、ハラスメントなどの雇用リスクにも保険で備えることができます。日頃の作業や活動からリスクを適切に洗い出して企業の全員が危険を適切に認識するようにし、労働災害防止に取り組みましょう
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