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建設現場での事故事例から学ぶ!仮設足場工事業での後遺障害認定に至った労災とは

建設現場での事故事例から学ぶ!仮設足場工事業での後遺障害認定に至った労災とは

高所作業や足場での工事をおこなう建設業の皆様は、普段から労災防止に向けて安全意識も高めるため、元請け企業が主催する安全大会などに参加されているかもしれません。現場工事のなかで危険な労災が起きたことが無いという経営者にとっては、どこか他人事のように聞こえてしまう部分もあるかもしれません。私共、保険代理店は、いざ10年に1度の大事故が起きてしまった際にでも企業や従業員をお守りする為、その時をイメージしていただくことが重要と考えます。リスクを想定したうえで備える備えないの判断をすることは、建設業を営む経営者にとって必要不可欠であるからです。今回は仮設足場工事業で起きた後遺障害の事例にもとづき解説していきます。

【目次】

1.仮設足場工事業で起きた労災により後遺障害1級となった事故とは

2.労災の発生原因と未然に防ぐ防止策とは

3.今回のまとめ

 

仮設足場工事業で起きた労災により後遺障害1級となった事故とは

今回は後遺障害となってしまった労災事故について事例をご紹介します。

【事故概要】

作業現場の足場解体中に、従業員A(20歳)が高さ5メートルから墜落しました。その結果、頚椎骨折、頚髄損傷、両大腿骨骨折、右膝蓋骨骨折等を受傷しました。頚髄損傷により四肢麻痺が残り、後遺障害1級に認定されました。

【事故内容】

早朝の事故だったので、現場にいたのは足場作業主任者と従業員Aの2名だけでした。足場を上から解体していく作業で、一番上の横の鉄棒(養生シートをかける最上段の部分で作業員がのって作業する部分ではない)部分を解体するよう、足場作業主任者が指示し、従業員Aが上りました。下からハンマーでたたけばすぐに解体できるもので、特殊な作業ではありませんでした。従業員Aは足場の5段目に上って手すりを解体した際、片方の手で支えていなかったため、勢いあまってバランスを崩し、アスファルト舗装の地上に墜落してしまいました。

【解決までの経緯】

①治療期間は4年以上の長期に

②従業員Aは頚髄損傷により四肢麻痺が残り、後遺障害1級に認定

③従業員Aは弁護士に委任し、会社に対して書面で1億8000万円超を請求

④損害賠償請求金額2億5000万円で訴訟に

⑤和解案提示の直前に訴えの変更申立てがあり、請求額が2億8000万円に

⑥訴訟開始から約4年後、1億5000万円で和解が成立

【解決までの対応ポイント】

後遺障害1級の認定

後遺障害とは「治療の効果が医学上期待できない状態であって、補償対象者の身体に残された症状が将来においても回復できない機能の重大な障害に至ったものまたは身体の一部の欠損をいいます」と業務災害総合保険の約款でも定めており、これは政府労災も同じ考え方となります。従業員Aは、頚髄損傷により四肢麻痺が残存し「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として後遺障害1級に認定されました。損害賠償においては、後遺障害1級は労働能力喪失率が100%であり、医師の指示または症状の程度により必要があれば将来介護費も認定されるため、賠償額が高額になります。

賠償請求後の対応

会社が早期解決を目指すうえで先ずは、事故の原因を早期に正確に把握し、被災者に対する会社の責任を明確にすることで、誠実な被災者対応をすることが重要です。また保険加入の有無によって、保険金額の支払いが変動するようなことは避ける必要があります。(会社が使用者賠償責任保険に加入していることを被災者側に開示すると賠償金額が高くなった事例もあります)

保険金額1億ではたりないかも

使用者賠償など人身損害に対する損害賠償において認められる損害額は、近年高額化しています。本件の場合、従業員側からの請求額で高額だった項目は、逸失利益9100万円、将来介護費6800万円、後遺障害慰謝料2800万円、家屋・自動車等改造費2400万円、休業損害1300万円などです。逸失利益は基礎収入×労働能力喪失率(死亡・後遺障害1~3級は100%)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(例:症状固定時25歳の場合42年間で17.423)で計算されます。将来介護費は、日額×365日×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数(例:症状固定時25歳の場合52年間で18.418)で計算されます。(本事故発生当時の生命表による平均余命の場合)本件が改正民法が施工された2020年4月1日以降に発生した事故の場合、このライプニッツ係数が高くなります。上記例の42年間は23.701(1.36倍)に、52年間は26.166(1.42倍)になるため、逸失利益は9100万円→1億2376万円に、将来介護費は6800万円→9656万円に上がり、本件の場合、合計で6132万円も高くなります。※上記事例対応はAIG損害保険㈱事故事例集参照

このようなことから、使用者賠償の保険金額は1億では足りなくなってきていますので3億など余裕をもった設定にしておくべきです。

労災の発生原因と未然に防ぐ防止策とは

今回の労災の発生原因と未然に防ぐ防止策をご案内します。

【発生原因】

①安全帯のフックを固定していなかった(墜落・転落防止措置不足)

【防止策】

高所からの万一の墜落・転落や、落下物に備えて、安全ネット(落下防止ネット)や、防護柵(防網)を設置し、墜落・落下防止措置を講じる必要があります。労働安全衛生規則第564条には、足場の組立て、解体又は変更の作業時における墜落制止用器具(安全帯)取付設備(手すり、手すりわく、親綱等)の設置が義務付けられています。

【発生原因】

②従業員Aは高所作業をしないという条件で会社に雇用されており、高所作業のための十分な指導も受けていなかった(雇用条件無視)

【防止策】

労働安全衛生規則第36条には、足場の組立て、解体又は変更の作業のための業務に労働者を就かせるときは、特別教育を実施しなければならないと義務づけられています。労働基準法第62条には、年少者(満18歳に満たない者)の危険有害業務の就業制限が規定されており、高さ5メートル以上で墜落のおそれのある場所における業務は禁止されています。

今回のまとめ

建設業を営む経営者にとって安全意識の向上は必要不可欠だと感じます。労働安全衛生規則や労働基準法にのっとり適正な対策を講じるとともに、万が一の高額労災訴訟にも耐えうる使用者賠償の保険金額を設定しておくことも重要です。

 

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