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個別労働紛争解決制度のおさらい
企業の成長には優秀な人材の確保・定着が不可欠です。コロナ禍で加速したリモートワ-ク等の働き方改革や長時間労働是正に向けた動きをはじめ、世の中の環境は変化し続けています。労働者を守るための様々な法改正が行われていることもあり、従業員が企業を訴えるケ-スは年々増加しておりますが、労働者が企業を訴える手段が多様化していることも1つの要因となっています。今回はその手段の1つである「個別労働紛争解決制度」についておさらいしてみたいと思います。
【目次】
1. 個別労働紛争解決制度とは
2.個別労働紛争解決制度の施行状況
3. 今回のまとめ
個別労働紛争解決制度とは
「個別労働紛争解決制度」は、労働者間や労働者と事業主間の労働条件や職場環境といった職場のトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度です。都道府県労働局では、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく3つの紛争解決援助制度があり、労働者・事業主のどちらからでも無料で利用できます。
【3つの紛争解決制度】
1.労働相談
2.助言・指導
3.あっせん
◆総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
都道府県労働局では、総合労働相談コーナーにおいて労働問題に関する情報提供・個別相談のワンストップサービスを行っており、関連する法令・裁判例などの情報提供、助言・指導制度及びあっせん制度についての説明を行っています。
必要に応じて、
・都道府県(労政主管事務所、労働委員会)
・裁判所
・法テラス(日本司法支援センター)
・労使団体における相談窓口
などの他機関と連携も行っています。
対象となる範囲は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争で、
・解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
・いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
・退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争
・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止など労働契約に関する紛争
・募集・採用に関する紛争(※助言・指導のみ対象)
などは助言・指導、あっせんの対象となりますが、
・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争
・他の法律において紛争解決援助制度が設けられている紛争や、裁判で係争中である、または確定判決が出ているなど、他の制度において取り扱われている紛争
・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争
などは助言・指導、あっせんの対象となりません。
◆都道府県労働局長による助言・指導
紛争当事者に対し、紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示すことにより紛争当事者による自主的な解決を促進するために行う助言・指導ですが、まず都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナーに助言・指導の申出を行います。助言・指導の申出を行った場合、都道府県労働局長による助言・指導が実施され、解決した場合は終了となりますが、解決されなかった場合は希望に応じてあっせんへの移行又は他の紛争解決機関の説明・紹介を行う流れとなっています。
※あっせん申請するに当たって、前段階として助言・指導の手続きが必要となるわけではありません。
◆紛争調整委員会によるあっせん
紛争当事者の間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確かめ、調整を行い、話し合いを促進することにより紛争の解決を図るもので、裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便です。紛争調整委員は弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当し、手続きは非公開のため紛争当事者のプライバシ―は保護されるようになっています。あっせん手続きは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナーにあっせん申請書を提出し、都道府県労働局長が紛争調整委員会へあっせんを委任します。その後、あっせん開始通知、あっせん参加・不参加の意思確認が行われ、参加の場合はあっせん期日(あっせんが行われる日)の決定、あっせんが行われ、不参加の場合はあっせんを実施せず打ち切りとなり他の紛争解決機関の説明紹介を受けることになります。
※厚生労働省HP「個別労働紛争解決制度」「あっせんと他の紛争解決制度との比較」より
厚生労働省のホームペ-ジには、助言・指導及びあっせんを利用した解決事例のパンフレットが掲載されておりますので、ご参照ください。
個別労働紛争解決制度の施行状況
厚生労働省が公表している「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を見ると、総合労働相談件数は前年度より増加しているものの、助言・指導申出の件数、あっせん申請の件数は前年度より減少しています。しかしながら、総合労働相談件数は129万782件で、13年連続で100万件を超えている状況となっています。
※厚生労働省「令和2年個別労働紛争解決制度の施行状況」公表資料より
民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全項目のうち、「いじめ・嫌がらせ」の件数が引き続き最多であり、民事上の個別労働紛争の相談件数では、79,190件(前年度比9.6%減)で9年連続最多となっています。また助言・指導の申出では、1,831件(同29.4%減)で8年連続最多、あっせんの申請では、1,261件(同31.4%減)で7年連続最多となっており、今後も増加していくと予想されます。
今回のまとめ
今回ご紹介した「個別労働紛争解決制度」をはじめ、「労働審判」「社外ユニオン」といった利用しやすい制度や手段が整ってきたことに加えて、個々の権利意識の高まり、法改正といった要因が加わり、労働者間、労働者と事業主間のトラブルは今後も増え続けていくことが予想されます。トラブルを未然に防ぐことが最も重要ではありますが、トラブルが発生してしまった場合、初期対応が非常に重要となります。万が一の際に対応を誤ることがないよう、弁護士への事前相談にかかる費用まで補償している保険会社もございます。気になる方はお近くの保険代理店までお気軽にお問合せください。
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