お知らせ・コラム
AI活用で変わっていく安全衛生管理とは
中小企業のDX(デジタルトランスフォーメンション)は今後さらに進んでいく流れとなっていますが、DX化を支える技術の一つである人工知能(AI)の活用によって、人には不可能なデータの分析や客観的な評価を行うことで職場での安全確保、健康確保の両面から企業が支えられています。実際の活用例などをみていきましょう。
【目次】
1.AIの様々な活用例の紹介
2.AIを社員の健康管理に役立てる
3.今回のまとめ
AIの様々な活用例の紹介
■活用例① 朝礼時のKYK(危険予知活動)で注意喚起システム開発
大手建設会社において、自然言語AIシステムを使用した安全注意喚起システムを導入しています。タブレット上から職種、作業内容、使用機械などの基本項目を入力するとAIが同社で発生した労働災害データベースから類似した状況を判断、起こりうる災害事例を抽出してくれます。事例からは、本人や現場名が特定される情報は除外し、発生年月日、日時職種、経験年数、負傷程度、当時の写真なども表示されます。毎日繰り返されると形骸化しがちなKYK(危険予知活動)ですが、実際に発生した災害事例などを強く意識することで、より心に響く活動となるでしょう。
■活用例② 不安全行動をAIが発見
物流会社等において、荷役業務の安全運転をAIで判定するシステムが導入されています。主に荷役業務の中心となるフォークリフト作業の安全性向上を期待するものです。具体的には物流倉庫内を走るフォークリフトに周囲360度を撮影できるドライブレコーダーを搭載して年2回、ドラレコの映像を安全推進部員が確認し、評価したものを運転者にフィードバックすることで加速度やハンドル操作を可視化する狙いがあります。今までは映像を人が確認、評価していたため手間と時間がかかり、評価が曖昧になる点などが課題となっていました。しかし、人工知能技術をシステムに組み込むことで、数百人分の安全運転評価業務を、今までかかっていた時間の約50%に短縮できたと言います。また正確な運転データの解析により、安全運転の度合いを係数として算出することができるようになりました。安全係数は運転者が作業車を操縦している時間に対する安全な運転をしている時間の割合で算出され、安全運転の時間が長いほど係数は高くなります。これにより運転者はこれまで以上に適切かつ納得感の高いフィードバッグを受けることができるようになりました。
AIを社員の健康管理に役立てる
今までのような作業中の事故などを直接的に防ぐための活用だけではなく、従業員の心身の健康にもAIが活用されています。ある大手通信機器取扱会社では、日常的に社員の心身の変化を把握し、心身の不調につながる予兆を早期に察知・フォローするため、ストレス分析にAIを活用し全社員を対象に健康管理を行っています。
従来から年に1回のストレスチェックや年休取得の奨励などをおこなってきましたが、もっと社員の心身の健康管理に目をくばろうと、社内カウンセラーを設置し、全社員を対象に年2回の面談を始めました。心身の不調や悩み、勤務管理の状況などをヒアリングし、医療職や所属長と連携をはかってフォロー体制を作ってきましたが、リアルタイム性が低く、予兆を見逃してしまう可能性がありました。またコロナ禍でテレワークが長期化することで、コミュニケーションそのものが難しい状況になったことに頭を悩ませていました。
そこでAIによる健康管理アプリを導入し、社員の不調の発見をサポートする試みをはじめました。社員が業務用スマートフォンで「最近よく眠れていますか?」「食欲はありますか?」などの健康に関わる質問に1日1問回答、それらのデータを蓄積分析することで心身の変化を可視化し、AIが各設問と心身不調の予兆の相関性やストレスの度合いから不調予兆者を検知します。一昨年から実施したトライアルでは、心身不調の予兆を検知した人のうち、42パーセントが実際にサポートが必要と判断され、予兆不調者の発見時間は最大で6分の1に短縮できたといいます。このように、AIを利用することで人には難しい作業や判断を肩代わりさせたり、属人化していた基準を平準化することができ、それらが業務の効率化や時間の短縮などにつながり、働きやすい職場環境の整備の一端を担っていると言えます。
今回のまとめ
労働災害は起きる前に防止することが何より重要です。業務のDX化、AIなどの利用は、災害防止に大きな効果があると期待されています。それらでリスクを減らすとともに、起きてしまった事故に際しては、企業としてスピーディーに対応することも求められます。企業向けの保険商品の中には、雇用トラブルが起きた際の法律の専門家への法的相談、示談や和解などの解決金、訴訟費用や損害賠償金を補償できるものがあります。また、従業員に長く安心して働いてもらうために、大きな効果があるといえます。企業向けのこういった保険が気になる方はぜひお近くの代理店などでご相談ください。
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