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裁判事例から学ぶ!建築施工管理技士が激務によりうつ病を発症し訴訟となったケースとは

裁判事例から学ぶ!建築施工管理技士が激務によりうつ病を発症し訴訟となったケースとは

建設業界で働く方の中でも、施工管理技士や現場監督などの現場管理の業務は長時間労働になりやすい業務です。朝早くに出社し、一日の作業が終了するまで現場にいて、その後に事務作業を行い、帰宅するのは9時や10時という事もあるようです。

今回は実際に、激務によりうつ病を発症し会社側が企業責任を問われ裁判にまで発展した事例についてご紹介していきます。

※労働新聞社 安全スタッフ参照

【目次】

1.事件の概要

2.判決の要旨

3.賠償額は1378万5289円

4.今回のまとめ

 

事件の概要

原告Aさんは、平成23年4月に入社して1級建築施工管理技士の資格を持ちY社の施工管理部で働いていた。作業内容や納期の把握、現場監督との打ち合わせ、施工管理資料の作成、施工手順書の作成、部材の調達依頼、入荷部材の確認、施工の進捗状況の確認、建築調査への立ち合いなどの業務を行っていた。

・Aさんの日常

午前8時半に出勤し、午前中は事務作業を行い、午後は建築現場に出かけ現場監督と打ち合わせを行い、夕方帰社し、事務作業を行いおおむね午後の9時以降に退社していた。Y社の施工管理部の会議でも業務軽減の要求や人員の補強などの要求がされていたが実現できていなかった。

・うつ病が発症し訴訟へ

Aさんは平成28年8月1日に医師よりうつ病エピソードと診断された。

平成28年8月30日~10月19日 年次有給休暇を取得

平成28年10月20日以降 休業

平成29年10月30日 労働基準監督署長より業務上災害として休業補償給付を受けた

過重な長時間労働に従事させられてうつ病が発症したとして、Y社に対して安全配慮義務違反または、不法行為により休業損害と慰謝料を請求し、合わせて時間外労働、休日労働手当の支払いを求めた。

判決の要旨

・本件疾病と業務の因果関係

Aさんの本件疾病の発症6カ月前における時間外労働時間

①発症前1カ月が130時間

②発症前2カ月が143時間

③発症前3か月が138時間

④発症前4カ月が129時間

⑤発症前5カ月が135時間30分

⑥発症前6カ月が164時間

Aさんの従事していた業務はその実態に照らしてもこれらの時間外労働時間が示すとおり著しく過重なものであった。

厚生労働省の業務起因性の認定基準においても、心理的負荷の強度が「強」となる出来事として、「発症直前の連続した2カ月間に1カ月あたりおおむね120時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の業務時間を要する場合」が挙げられている。連続して6か月間であれば80時間程度の時間外労働でも業務との因果関係が認められる可能性がある中、6か月間にわたり120時間を超えて時間外労働を行っているのでY社における業務とAさんのうつ病の発症は相当因果関係があると認められた。

・Y社における安全配慮義務違反の有無

Y社は業務日報や打ち合わせの議事録、残業の際の届出を受けるなどをしていたので、Aさんの業務内容や労働時間については認識していたことは明らかである。

施工管理部の会議において課長に対する要求事項として施工管理部の人員増加や業務の軽減の点があがっていた。またAさんは雑談の中とはいえ、繁忙期に向けて人員を補充して欲しい胸を伝えていた事などを踏まえると、Y社は施工管理部において人員補強や業務軽減の要望があることについても認識していたといえる。

以上のことを踏まえると、Y社はAさんに対して長時間労働を解消すべく、適切な措置を講じるべき安全配慮義務を負っているものと認められる。

賠償額は1373万5298円

本件については、令和2年3月に大阪地裁で判決が出ているがその時点においてもAさんは通院を余儀なくされており、症状の改善もみられず就労が不能な状態のままである。

賠償額は<判決容認額>の通りとなった。

・逸失利益(休業補償分)

この病気が発症しなければ得ていたであろう利益を計算し加害者に請求できる。Aさんの場合は平成28年10月から休業しており、裁判の時点では1134日分の休業損害が請求された。

※給付基礎日額は前年(平成27年)年収732万÷365日で計算

給付基礎日額(20,062円)×1134日=2275万308円

労災保険から休業補償給付として1240万5010円(平成28年10月~令和2年11月までの補償金額)を受け取っているのでこの金額は控除される。

・逸失利益(休業補償分)の金額

2275万308円-1240万5010円=1034万5298円

・慰謝料

214万

3年4カ月間の通院、就労が不可能な状態であったこと。ただ、いまだに休業状態を脱していないことや後遺障害等級も決まっていないため今後さらに請求される可能性はある。

・弁護士費用

125万円

・判決容認額

1034万5298円+214万+125万=1378万5298円

今回のまとめ

経営者や管理職の人が24時間働けますか?の昭和の感覚で仕事を捉えているとすれば非常に危険です。国をあげて働き方改革を行っており、法整備が進んでいるなかでは、ひと昔前の感覚ではブラック企業のレッテル貼られてしまいます。事例のように過重労働などで病気を発症し安全配慮義務違反や不法行為などで訴えられてしまうと数千万の損害賠償に発展してしまうこともあります。

雇用リスクの保険に加入する事により、万一の訴訟等に備えることはできますが、お金だけの問題では無く時間を取られたり、世間の評判など事業活動に大きなダメージを残すことにもなります。さらに他の従業員の士気や満足感にも大きなマイナス影響を与えます。

時代の変化もありますので今後の企業経営においては、会社の人が生き生きと働ける職場づくりが何よりも大切かと思います。

 

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