お知らせ・コラム
後遺障害が残る大ケガが発生!労災業務上認定後の経営への影響は?
ひとたび大きな労災事故が起きてしまうと、経営者としてはとても大きな不安を抱えてしまうことがあります。
「作業現場において、障害が残る程度の大きな労災事故がありました。重大事故においては労基署の調査があると聞いております。しっかり対応するためにどのような調査が行われるのか知りたいです。また労災認定後、業務や経営にどのような影響があるのかも教えてください。」(R社 社長)
このような疑問にお答えしている内容がございましたのでご紹介していきたいと思います。
【目次】
1.業務災害の会社に与える影響
2.事業主や責任者の刑事罰や行政処分
3.今回のまとめ
業務災害の会社に与える影響
企業経営において、「業務災害」特に死亡災害や後遺障害が残るような大きなケガが発生した場合それだけで大きな衝撃です。経営陣や同僚の従業員に与える心理的負荷も少なくありません。さらに経営にとって有形無形の影響を受ける事が考えられます。
1.被災労働者からの損害賠償請求
国からの労災補償は最低限の生活保障である観点から、被災者に家族がいる場合などは補償が十分でないケースが多いようです。被災労働者やその家族から安全な職場を提供するという安全配慮義務違反として使用者責任を問われて損害賠償請求を受ける可能性があります。
損害賠償金は慰謝料や逸失利益や介護費用などの項目があり、交通事故と同じように被害者(被災労働者)は加害者(会社など)に対して請求する権利を持ちます。当然、過失の有無や割合に応じて認められる賠償金は増減されますが、会社の責任が大きいと1憶円や2億円といった高額な賠償事故に発展することもあります。
2.労災保険料が上がる
メリット性などの恩恵を受けていた労災保険料が上がるケースも大きな負担となるでしょう
3.労基署の立入り調査
労災事故が発生した場合、労基署は事業所へ立ち入り「災害時監督」を行います。
一定以上の大きな労災事故(死亡、障害、長期の休業を伴う事故)が発生した際、その原因究明や再発防止策の提案を行うために行われる調査と位置づけられています。
調査後、事業主は速やかに是正勧告に従った対策を講じなければなりません。対策を講じている期間は実質的には営業停止に近い状態になります。
また、是正勧告を受けた後の調査として当該勧告内容が是正にむけ実行されているかを確認するために、いわゆる「再監督」が行われる事もあります。
調査のポイント
・墜落・転落その他事故防止措置の状況
・作業主任者等の適切な配置
・安全衛生管理体制
・機械の使用状況
・労働時間・休憩時間の状況
・定期・特殊健康診断の実施状況や実施後の対応など
上記の項目に不適切な状況が認められた場合、事業所は是正勧告を受けたり、一部または全部の営業停止を余儀なくされたりします。また建設の工事現場では工期の遅れなど他の会社にも迷惑をかけてしまいます。
4.機械等の使用禁止
労災事故に繋がった機械や点検で危険と判断された機械に対して機械の使用が禁止される事があります。
機械等の使用が禁止されると労基署が状況改善を確認するまで当該機械等の使用は出来なくなります。コア業務に関わっている機械であったり、メインの機械の場合は営業停止命令に近いダメージとなる事があります。また機械の買い替えが必要になるケースでは資金的に経営の存続が厳しくなることもあるようです。
また被災現場などの特定区域内などの指定現場になると労基署が安全を確認するまで業務の遂行が不可能となります。
事業主や責任者の刑事罰や行政処分
・事業主の送検
労災事故において事業主に重大な過失があると指摘された場合、事業主が送検され可能性も出てきます。事業主は業務による意思決定の要ですから長期に渡って事業継続が困難に陥ることがあります。またテレビや新聞等で事業主の氏名や法人名が報道されてしまう可能性もあります。
・重大労災における事業への制裁的処分
①入札参加における指名停止処分
建設業などでは、公共機関において入札に際し「指名停止措置要綱」を設け重大な労災事故があった場合、当該事業主を指名停止処分とすることが定められている。
②事業主や責任者の刑事罰
重大労災において事業主、その他責任者に刑事罰が科せられることがあります。特に多いのが安全衛生法違反により罰金が科せられるケースです。
安衛法に違反した場合には事業者に6カ月以上の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。さらに業務上過失致傷罪、業務上過失致死罪などの刑事罰に問われることもあります。
③業種による行政処分
国や都道府県の許可を受けて経営が成り立つ許認可業種(建設業や派遣業など)において労災事故の発生に伴い法令に違反があった場合、「指示処分」など行政処分の対象となり、業務継続に支障が出ることがあります。
今回のまとめ
重大労災が発生すると、被害者に対する損害賠償などの民事上の責任だけでなく、安全衛生法違反などの刑事罰、国や地方自治体から認可や許可を受けている場合は行政処分を受けてしまう可能性があります。さらに会社名や代表者や責任者の名前が公表され、社会的な責任を負う事になります。
労災上乗せ保険などの保険では、民事上の責任に対して支払い保険金などでお役に立つことはできますが、刑事罰や行政処分に対してはお役に立ちません。たった一つの重大な事故が経営の根幹を揺るがすような大変な事態に発展する危険性もあります。
重大な労働災害が起こらないように安全第一で業務を進めていく事が結果的に効率の良い経営に繋がっていくと思います。
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