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中途採用の使用期間中の解雇は可能なのか?『万一の雇用トラブルには損害保険で備える』
社員の中途採用やパート・アルバイトさんの採用の際にほとんどの企業様で試用期間を制度として設けていると思います。しかし会社が求める人材ではなかった時に、試用期間の終了をもって自動的に契約を終了することは可能なのでしょうか?
実は使用者による本採用拒否の意思表示は一般的に解雇の意思表示と解されることとなるようです。つまり試用期間の満了をもっての契約終了や試用期間の途中での試用契約の解除は社会通念上相当と思われる理由が必要であり、理由なしには本採用拒否が出来ないようです。今回は、試用期間中の解雇が認められた例と解雇が認められなかった例などのご紹介をしていきたいです。
【目次】
1.裁判例の多い中途採用者の解雇無効となった例
2.棒に振った年収1000万円
3.今回のまとめ
裁判の多い中途採用者の解雇無効となった例
使用者の試用契約の解約権行使は、法的な解釈では「雇い入れ後の解雇のときよりは解雇の自由が認められる」と解されているが目的に照らし客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認された場合のみ許されるとされています。
・N証券事件(東京高裁判決21年9月15日)
上記事件は裁判例の多い中途採用者の解雇無効が認められた一例です。
事件のあらまし
Y証券会社に期間の定めのない雇用契約によって採用されたAは6カ月間を試用期間として勤務することとなった。ウエルスマネージメント本部(富裕層向けの資産管理サービス)の課長を命じられたが、試用期間終了前に営業社員の資質に欠けるとして解雇された。
第一審東京地裁の判決
解雇は客観的合理性がなく社会通念上相当として是認することが出来ず無効であるとした。
ただしAが解雇後に他の証券会社に入社したことにより、AのY証券への復帰の意思を放棄したものと認定。未払い給与や賞与等の支払い要求を認めたが地位確認請求を棄却した。
AおよびY証券の双方が控訴した。
高裁の判決
高裁でも6カ月の試用期間の経過を待たずして、雇用契約の解約権を行使したことは認められず、より一層高度の合理性・相当性が求められるべきであるとしている。
解雇の真相は、AがY証券の役員と待遇面で面談した際にAの要望が拒否された場合は訴訟を提起すると述べたことだった。実は、Y証券は証券会社として禁止されている「地場だし」(インサイダー取引の一種)を会社ぐるみで行っておりそれを告発するとAが言い出したのでY証券の役員はこれ以上の雇用継続は困難と判断し解雇通告を行った。
当然ですがAが違法行為を内部告発することを理由にY証券がAを懲戒解雇することはありえないし、またYが試用期間の途中で留保解約権を行使する理由にも該当しない。
(労働新聞参照)
棒に振った年収1000万円
年収1000万円で採用されたという事実がありながらA氏が試用期間中に解雇させられた
社会福祉法人D会事件(東京地裁31年1月11日)の紹介
判決の趣旨
A氏は一流大学に研究者として在籍するほどの高い学歴や地位を有し、コンサルタントとしての実務経験もあり子ども教育にも精通していた。D会は幹部職員としての高いマネジメント能力を買い採用に至っている。
現実には重要会議にしばしば欠席したり、不用意に施設長の降格に言及するなど高圧・威圧的で協調性を欠き、発達支援事業部長としては適正が無かったと評価せざるを得ない。その経歴により高いマネジメント能力を買われて好待遇の即戦力として中途採用されたが、高圧的言動に係る事実が短期間で複数認められたことや不正行為や違法行為に係る指摘によりD会との信頼関係を大きく損なう事態を引き起こした。
A氏とD会の雇用契約の解消は解約権留保の趣旨・目的に照らし客観的に合理的な理由が存在しており、社会通念上相当と認められる。
(労働新聞参照)
今回のまとめ
試用期間中に解雇が認められた例と認められなかった例をご紹介いたしました。試用期間なのに使用者(会社側)の一方的な理由での雇用契約の終了は難しく、通常の解雇よりは広い範囲で解雇の事由が認められますが社会通念上相当の理由が求められます。
何の為の試用期間なのか少し疑問がわく部分でもありますが、安易に解雇が出来ないと言いう事で採用に関してはより一層の注意が必要かと思います。
また、各種保険商品にて解雇トラブルに備える保険や会社や役員個人が従業員や元従業員等に訴えられてしまった時にお守りできる内容の役員賠償保険などもございます。
ここ数年、雇用トラブルでの裁判や労働審判の件数は増加傾向にありますので気になる方は、一度保険代理店や保険会社などにお問い合わせをして頂き、内容等のご確認を行っておくことが重要かと思います。
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