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「労災だけでは終わらない」建設業で実際に起きている使用者賠償の事例と会社を守るための備え

建設業の現場では、高所作業や重機の使用などの際に常に一定の危険が伴う作業が日常的に行われています。そのため、多くの会社様が労災保険に加入し、安全対策にも力を入れていることと思います。しかし実際の現場では「労災に入っているから大丈夫」と考えていたことで、思わぬ経営リスクをかかえてしまうケースもございます。その代表的なものが使用者賠償責任に関わる問題です。今回は事例を踏まえ備えとなる保険も含め取り上げていきます。
【目次】
1.使用者賠償責任に関する事故事例とは
2.使用者賠償責任リスクをカバーする損害保険とは
3.今回のまとめ
1.使用者賠償責任に関する事故事例とは
使用者賠償責任とは、業務中の事故によって従業員がケガや死亡をした際に、会社の安全配慮義務違反などが問われ、従業員やその遺族から損害賠償を請求されるリスクを指します。労災保険は従業員を救済する制度ではありますが、会社の民事上の責任までを補完するものではありません。例えば、ある建設現場で足場上の作業をしていた作業員が転落し、重い後遺障害が残った事例がございます。この事故では、労災保険から治療費や休業補償は支払われましたが、作業員側は「手すりの設置が不十分だった」「安全確認が形式的だった」として、会社に対して損害賠償請求を行いました。結果として、後遺障害による将来の収入減少分(逸失利益)や慰謝料が問題となり、会社が負担すべき賠償額は数千万円規模に及ぶ可能性が生じました。また、若手作業員が重機作業の補助中に事故に遭い、長期間の入院と休業を余儀なくされたケースもあります。十分な教育や指示が行われていなかったことが後から問題視され、「経験不足を理解したうえで適切な配置をすべきだった」として、会社の安全配慮義務違反が問われました。労災保険の補償だけでは生活費が足りず、本人や家族から会社に対して補償を求める声が上がり、賠償問題へと発展しました。さらに深刻なのが死亡事故です。元請けの現場で作業していた下請け会社の作業員が、現場全体の安全管理不足により死亡した事例では、労災保険は下請け会社で処理されたものの、現場を統括していた元請会社にも使用者としての責任があると判断されました。遺族からは高額な損害賠償請求がおこなわれ、裁判に発展した結果、賠償金だけでなく企業イメージにも大きな影響を与えることとなりました。そして、近年増加傾向にあるのが、熱中症に関する使用者賠償の事例です。夏場の屋外工事において、休憩時間や水分補給の管理が十分ではなかったとして、作業員が重度の熱中症を発症しました。このケースでは、「事前に予測できたリスクに対する対策が不十分だった」と判断され、会社の責任が認められました。重大な事故でなくとも、安全配慮義務違反が問われる点は、経営者として十分に理解しておく必要がございます。これらの事例からわかるのは、労災保険が支払われていても、会社の賠償責任が消えるわけではないという現実です。慰謝料や逸失利益といった部分は、労災保険ではカバーしきれず、その不足分を会社が直接負担することになります。
2.使用者賠償責任リスクをカバーする損害保険とは
会社で重大な事故が起きてしまい、万が一高額な賠償請求を受けた場合には、金額によっては会社の資金繰りや事業継続に深刻な影響を及ぼすことも考えられます。こうしたリスクに備えるために重要なのが、使用者賠償責任保険への加入です。この保険は、業務中の事故により従業員や遺族から損害賠償請求を受けた場合に、法律上の賠償責任を補償するものです。金銭的な補償だけではなく、事故発生時の対応や示談交渉のサポートも含まれるため、経営者や現場責任者の負担を大きく軽減する役割を果たしてくれます。具体的に使用者賠償責任保険を付けるなら労災の上乗せ保険に追加して加入するのが一般的です。入通院や休業補償で会社が困るケースは少ないと想定しますが、使用者賠償の事案で1億規模の金額の請求が来たとしたら経営を揺るがします。保険加入には費用対効果も考えることが大事ですが、ぜひこの使用者賠償の部分は補填出来るようにオススメします。建設業は人の力によって成り立つ産業ですから、その従業員をお守りすることは会社の社会的責任であると同時に、経営を守ることにも直結します。事故が起きてしまった後に後悔するのではなく、「起こり得るもの」として事前に備えておくことが、これからの建設業の皆様のご経営に求められています。
3.今回のまとめ
使用者賠償責任保険は、万が一のための保険であると同時に、従業員や取引先から信頼される会社であり続けるための重要な基盤です。近年では、損害賠償額の算定に用いられるライプニッツ係数の考え方も変化しており、死亡事故や重い後遺障害が残った場合の賠償額は、以前よりも高額になる傾向が見られます。命に関わる事故ほど、会社が負う責任の重さも年々増しているのが実情です。長く安定して事業を続けていくためにも、労災保険だけに頼らない備えを今一度見直してみるのはいかがでしょうか。
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