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使用者賠償の事例”下請けの被災で元請けに安全配慮義務

使用者賠償の事例”下請けの被災で元請けに安全配慮義務

今回は元請責任が問われた実際の裁判例をもとに安全衛生事情を解説していき、またそれに備える任意労災保険の重要性について触れていきます。任意労災保険の中の使用者賠償についてはもはや1億ではなく2億がスタンダードになりつつあります。こちらも命の値段についての過去からの変化とともにおすすめの保険のかけ方についてまとめていきます。

【目次】

1.下請け労災が原因で元請けに安全配慮義務が問われた事例とは

2.使用者賠償保険は2億がスタンダード!?

3.今回のまとめ

 

下請け労災が原因で元請けに安全配慮義務が問われた事例とは

実際に起きた判決を紹介していきます。※東京地裁令和4年12月9日判決 安全スタッフ記事参照

事件の概要とは

被告Y社は、油圧機械の製作、販売、再生加工を目的とする会社です。Y社はスリランカ国籍のAを代表者とする訴外B社に対して、工場内に設置された金属製の棚をガスバーナーで溶断して解体する工事を依頼しました。B社には人手が足りないとして、Aの義理の弟でスリランカ人の原告Xの了解が取れれば、本件解体工事を請ける旨をY社に伝えたところ、Xがこれを了解したために、AとXとは一緒に本件解体工事を請けることにしました。Xはその解体工事でY社代表者から新品のガスバーナーを提供され、Xは、それを使用しました。Y社の代表者は、AおよびXに対して、本件棚の天板(天板の高さは1.97M)上に乗り、ガスバーナーを使用して天板を途中まで溶断し、天板に本件工場内に備え付けられた天井クレーンのワイヤをくくりつけて固定し、途中まで溶断していた天板を完全に溶断し、AおよびXは地上に降り、AまたはXにおいて溶断した天板に対応する縦柱の根本部分を溶断し、Y社代表者が天井クレーンを操作してワイヤにくくりつけられた溶断された本件棚の一部をトラックに積み込み、Y社代表者がトラックでこれを搬出することをくりかえすという本件解体工事の基本的な作業工程を説明し、1回ごとの切断に当たっては、ワイヤをくくりつけやすいように天板を切断すべき範囲を大まかに説明するなどしました。Y社代表者は、溶断した天板に対応する縦柱の根元部分を溶断する際に、ワイヤをくくりつけた溶断中の本件棚の一部がワイヤの伸長などの影響により激しくゆれてAに衝突しそうになったことから、先に縦柱の根元部分を半分程度溶断してはどうかと提案しました。Aはこれに応じ、天板を完全に溶断する前に縦柱の根元部分を半分程度溶断するよう作業工程を変更しました。その後、AとXは、本件倒壊部分の溶断に取り掛かりました。Aは本件倒壊部分を支える縦柱が1本のみであったものの、その根元部分を一部溶断し、XはそのAの様子を見ていました。その後、AおよびXが天板の上に乗って天板の溶接をしていたところ、Xが載っていた本件倒壊部分が倒壊してXは地上に転落しました。Xは急性硬膜下血腫の開頭除去手術を受けるなどして、後遺症により左側上下肢まひの障害が残りました。Xは被告Y社に対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起しました。

判決の要旨とは

1.Y社と原告Xの関係

XとY社との間で直接労働契約が締結されたとまでは認めがたいです。Xは少なくともAまたはB社の下請けの立場にあったものと認めるのが相当です。そしてY社がXに対して道具を提供したことや、Y社代表者がXに対して本件解体工事の作業工程を指示したことなどを踏まえるとXとY社との間には、信義則上、安全配慮義務を認めるべき特別な社会的接触の関係があったと認めるのが相当です。

2.墜落防止用の措置

労働安全衛生規則518条は、2mを超える高所作業を行う場合は墜落による危険を及ぼすおそれがあるときは作業床を設けなければならない旨、作業床を設けることが難しい場合は墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない旨を定めていますが本件解体工事が行われる本件棚の天板の高さは1.97mであり、Y社が直ちに労働安全衛生規則に違反したとまでは認められません。しかしながら、一定程度墜落の可能性がある本件解体工事に従事させる以上、Y社には少なくともヘルメットを着用させる、安全教育などの措置をとるなどの義務があったというべきです。何の措置もとっていないとなるとY社はXにたいする安全配慮義務に違反したと認めるのが相当です。

使用者賠償保険は2億がスタンダード!?

本件のXの後遺障害等級は5級と認定され、労災保険からも休業補償や障害補償も受給していますが、Xが労働者といえるかどうかの判断にも疑問が残ります。本判決の認定ではY社の労働者でもないし、B社の労働者でもないことになり、労働者性は見えてきませんでした。なお労働者賠償額は、過失相殺されて各種損益相殺があり約4185万円となっています。今回のケースでは過失相殺により4185万程となりますが、判決・和解とも労働災害や過労死などのケースは1億円超えの時代へと突入しております。2020年の民法改正によって賠償金は高額化しており、今後は使用者賠償保険の備えは2億がスタンダードともいえます。

今回のまとめ

今回のケースのように事故によって後遺障害が発生したり、死亡事故が起きてしまうと収入が得られなくなることによる損害(逸失利益)や長期にわたる介護費用が発生します。こうした将来にわたって発生する損害に対する全期間分の補償を一括して受取った場合、その金額を運用することにより毎年利息収入が得られます。この毎年発生する利息に相当する額を差し引いた金額を算出するための係数を「ライプニッツ係数」といいます。ライプニッツ係数は法定利率をもとに算出しているため、法定利率が変更となった2020年4月1日以降に発生した事故において適用するライプニッツ係数も合わせて変更となります。万一に備え労災の上乗せのなかの使用者賠償責任補償特約も2億以上ご準備しておくことをおすすめします。

 

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